新規会員は2カ月無料!「年末とくとくキャンペーン」実施中です!

週刊エコノミスト Online 2024年の経営者

持ち株会社化で総合ソリューションを提供――土井伸宏・京都フィナンシャルグループ社長

Photo 武市公孝:東京都千代田区の東京営業部で
Photo 武市公孝:東京都千代田区の東京営業部で

京都フィナンシャルグループ社長 土井伸宏

どい・のぶひろ
 1956年京都府出身。京都教育大学付属高校卒業、80年滋賀大学経済学部卒業、京都銀行入行。2007年取締役人事部長などを経て、15年取締役頭取に就任。23年6月会長に就任、23年10月京都フィナンシャルグループ設立に伴い、社長に就任し、現在に至る。67歳。

 Interviewer 岩崎誠(本誌編集長)

>>連載「2024年の経営者」はこちら

── 2023年10月に京都銀行を中核とした持ち株会社に移行しました。その経緯と狙いは。

土井 我々は2000年ごろから「広域型地方銀行」を掲げて、新しい店舗を出して営業エリアを広げてきました。私が頭取に就任した15年6月はまだ金利のある世界で、広域型地方銀行の路線を進めていました。しかし16年1月にマイナス金利が導入されると、目の前の景色が全く変わりました。それまで銀行はお金を預かって貸し出してその利ざやで稼いだり、国債を買ったりして、収益が安定していましたが、その構造が崩れてしまいました。広域に量的な拡大を進めていたので、他行よりダメージは大きかった。そこでサービスの拡大にシフトしました。

 具体的には証券子会社の設立や信託業務への本格参入、人材派遣やM&A、投資ファンドなどに積極的に取り組んできました。その延長線上が今回の持ち株会社化です。銀行が中心ですが、銀行の今までのビジネスだけでは、お客様のニーズに応えきれません。総合ソリューションを提供する企業グループとなることが、持ち株会社化の狙いです。

── 京都銀行の強みは。

土井 ネット銀行と異なり、地方銀行にはお客様とのフェース・ツー・フェースの接点があり、我々はそれを大事にしたいと思っています。多くの銀行が店舗を統廃合しており、我々も多少は店舗を減らしていますが、広域に店舗を持っていることが我々の強みだと思います。

 また、京都は京セラや村田製作所、ニデックなどいろいろな企業が育ってきました。京都大学もあり、新しい企業が育つ風土があります。今回の持ち株会社化で投資を増やして、新しいベンチャー企業を育てたいと思います。

従来の倍の投資を計画

── 低金利下の銀行経営をどう考えていますか。

土井 地方銀行にとっては厳しい環境なので、コスト削減は当然考えていきます。しかし店舗はお客様との接点として維持しなければいけないので、バックオフィスを機械化したり、運営人員を減らしたり、いかに効率的な店舗を作るかだと思います。今は店舗が1階にある必要はなくなっているので、店舗建屋の一部のフロアをテナントやホテルなどに貸して店舗コストを抑えています。また、貸金業務以外の部分を広げる取り組みはこれまでもやってきましたし、これからもやっていきます。

── PBR(株価純資産倍率)については1倍を割り込む企業に、東証が是正の施策の開示を求めています。

土井 ROE(株主資本利益率)は株主資本コストを下回り、上場地銀の平均に満たない状況ですが、これは向上させていきます。PBRは1倍を下回って0.6倍台ですが、地銀では上位に位置付けられ、一定の評価は得られています。自己資本比率は地銀トップクラスの水準で健全性は非常に高い。盤石な財務体力を生かして、いろいろな形で投資を行い、収益向上を図っていきます。

 今回の中期経営計画でもアセット投資が1兆2000億円プラスアルファで、デジタル・IT投資も100億円、人的資本投資も20億円と、これまでの実績のほぼ倍の規模の投資を計画しています。これにより成長戦略を推進し、ROEを改善し、PBRをできるだけ早く1倍にしなければいけないと思っています。

── 中計の具体的な内容は。

土井 昨年10月から持ち株会社になることを前提で銀行は昨年4月からスタートしています。主要戦略は四つあり、まずはグループ全社戦略として、グループ各社が相互に連携して、既存事業および新規事業領域などの拡大による成長を目指します。次がコンサルティング戦略で、お客様に付加価値を生む総合ソリューションを提供していきます。三つ目はDX戦略で、お客様とのやり取りのデジタル化や、データ分析のレベルを上げていきます。そして最後が人財戦略です。グループ各社との戦略的な人財配置により事業領域の深掘りを行っていきます。

── 人財については初任給の引き上げが話題になりました。

土井 昨年9月に、今年の新卒(大卒)の初任給を22万5000円から26万円に引き上げることを発表しました。初任給だけ上げると新卒だけが上がってしまうので、全社員の給料を上げていく必要があります。グループ会社をそれぞれ大きくしていく上で人財確保は必要です。特に新規事業では外部から専門性を有する人財を中途採用することになります。人的投資としては、賃上げは無理してもやる必要があると思います。

── 今後の展望は。

土井 株式の時価総額は地銀で今4位ですが、京都にはすごく良い地盤があるので、上位の銀行グループに早く追い付くことを目指しています。

(構成=村田晋一郎・編集部)

横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスパーソンでしたか

A 30代前半は支店の営業で、中小企業を支援する仕事をしていました。後半は人事部で採用の仕事をして、いろいろな人を見る経験ができました。30代は非常に有意義な時代だったと思います。

Q 「好きな本」は

A D.カーネギーの『人を動かす』です。人を使うことの心構えが書いてあり、30代前半で係長になった時に支店長から薦められました。

Q 休日の過ごし方は

A 主にスポーツ観戦です。サッカーJ1の京都サンガを設立当初から応援していて、スケジュールが合えば、スタジアムへ観戦に行っています。


事業内容:銀行業務、金融商品取引業務、信用保証業務、クレジットカード業務、投資業務など

本社所在地:京都市

設立:2023年10月

資本金:400億円(23年10月現在)

従業員数:3561人(23年9月末現在、京都銀行)

業績(23年3月期、京都銀行)

 経常収益:1243億円

 経常利益:381億円


週刊エコノミスト2024年2月6日号掲載

編集長インタビュー 土井伸宏 京都フィナンシャルグループ社長

インタビュー

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

11月26日号

データセンター、半導体、脱炭素 電力インフラ大投資18 ルポ “データセンター銀座”千葉・印西 「発熱し続ける巨大な箱」林立■中西拓司21 インタビュー 江崎浩 東京大学大学院情報理工学系研究科教授、日本データセンター協会副理事長 データセンターの電源確保「北海道、九州への分散のため地産地消の再エネ [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事