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山本太郎のケンカ国会宣言 災害、貧困、悪政から国民を守り抜く。核心は大幅財政出動だ!

5年以内に野党の核になる 裏金議員はとっとと逮捕せい

 能登半島地震の被害者支援にさまざまな遅滞が発生している。自民党裏金問題への処罰は依然として明確化しない。悪政に呻吟する国民に寄り添ってきた山本太郎が激論、強者に食い物にされるこの国をどう変えるかを明らかにする――。

 岸田文雄首相に物申す。

 この裏金政局の後始末をどうするか。我が提言だ。

 まずは、今回の派閥パーティー券売り上げの還流で、政治資金規正法に反し政治資金報告書への記載義務を怠った者については、地検特捜部の捜査結果を基に自主申告を求め、最低限次期国政選挙(衆参ともに)では自民党として公認しない。自発的な連座制適用、公民権停止である。法的制裁ができないのであれば、ノブレス・オブリージュ(高い社会的地位に伴う義務)としての道義的自粛を求めるのが相当であろう。総裁権限で十分できることだ。

 次に、地検が立件できなかった部分、つまり、裏金化したものについては政治資金とは言えず、雑所得として課税されるべきではないか、という論点については、検察捜査がすべてだとの論法で黙殺するのではなく、税務当局からの意見も踏まえ、課税の可否について明確な政府見解を出すべきだ。今回は不記載額が3500万円以上しか立件されなかったが、これに課税もされないとなれば貰(もら)い得との不公平感が募り、確定申告時期を迎え、納税者たちの反乱が起きかねない。

 派閥解消論については、政権政党として総裁(事実上の首相)選をする限り、総裁候補選出母体(=派閥)ができるのは不可避で、苦し紛れの偽装解散にすぎないと前号で申し上げた。その見立てに変わりはないが、岸田氏の投げた一石(宏池会解散宣言)が連鎖反応を呼び、自民党を7割が無派閥という未到の領域に誘っているのも事実である。今や茂木派も分裂の危機にさらされ、最後に残された麻生派もまた離脱者が出る始末である。この際、次回総裁選は、自民党の生き残りをかけて派閥完全排除で行うと宣言、その証しとして自らは立候補しない、とぐらい言ったらどうか。

 もう一つ言いたい。日本の政治も政治家も、それをチェックするメディアも劣化が否めないが、政治の必要性がなくなったわけではない。それどころか、ますます重要性を増している。トランプが出てくるやもしれぬ米国との関係をどうするか。中国の台頭、脅威を対話の習慣化でどう抑止するのか。迎えつつあるアベノミクス(異次元金融緩和)の出口にどう備えるか。能登地震への対応、いずれ来る首都直下、南海トラフ地震への準備は本当にできているのか。その意味では裏金どころではない、というのが、日本の政治に突きつけられた真実である。

物資の搬入が全く追いついていない

 そんな思いを込め、れいわ新選組代表の山本太郎氏に取材した。氏は通常国会初戦の論戦(1月29日参院予算委員会集中審議)で、持ち時間8分を全部能登地震に使い矢継ぎ早に政府に対応を求めた。自ら2度現地入りした。その問題意識、行動力や良し。裏金泥沼政局にズッポリ漬かるだけでは政治の役割を果たせない。

 いつ現地入りした?

「1月5日と10日。いずれも車中1泊2日。災害対応は自分のテーマの一つで、大災害の度に各種NGO、災害ボランティアと連絡をとって現地入りしてきた。すぐ行きたい、と言っても今は混乱しておりもう少し待て、などと助言してくれる。だけど今回は反応が違った。現着しすでに活動している人たちが、とにかく被害も対策もひどい、だから来て自分の目で見た方がいい、と言ってくれた」

 なぜ5日?

「昨年末に転んで足を怪我(けが)し、病院が開く4日に抜糸してもらってからの活動だった。新潟でレンタカーを借り、赤ちゃんから高齢者用までのオムツ、毛布、簡単な食材を積めるだけ積んで仲間と2人で5日午前9時に出発、能登町到着が夕方5時だった。穴水町を越えたあたりから渋滞、後から聞くと、被災された方々の親戚縁者が近隣から物資補給する渋滞だった」

 何を見てきた?

「物資の搬入が全く追いついていない。一つは食材の不足だ。5日能登町で聞いたのは、NPOが避難所におにぎりを持参したら1人1個であっても拍手が起きた。味噌(みそ)汁を作ったら、山越えしてきたおばあさんが涙流して拝み始めた、と。6日は珠洲(すず)まで足を延ばした。土砂崩れやトンネル崩落もあったが、回り回って着くことができた。そこでは、自衛隊に炊き出しをお願いしたが、地元で食材の準備ができず、断られた、と聞いた。10日に輪島に入った時は、前日に提供された一食が、薄焼き塩せんべい2枚だったと聞いた。発災後10日目で供給がその程度なのかと愕然(がくぜん)とした」

 マンパワー(人力)はどうだった? 自衛隊が逐次投入だったとの指摘もある。

「現場のNGOとも意見交換したが、政府の対応が本格的に動き出したのは正月三が日が終わってからという印象だ。気象庁に問い合わせ、発災からの天候を調べたが、1月7日と13日以外は船や空からの物資補給は十分に可能な状況だった。最高指揮官たる首相の判断でもっと大規模な部隊投入や上陸用舟艇、ヘリなどの活用ができたかもしれない。検証が必要だ」

 むしろ民間人が活躍?

「災害対応の民間NGOの人たちだ。日本全国から集まる。阪神大震災以降この30年で、組織やネットワークが広がった。地震はいきなりの話だが、線状降水帯や台風による大雨であれば、彼らはいつも天気図を見ていて、可能性があると言えば、もう現地入りの準備を始める。それくらいの人たちだ。元日の家族団欒(だんらん)時に地震の一報が入り、乾杯の酒も飲まずに現地入りした人もいた。民間の善意と行動力はすごいものがある」

脱税と同じ罰則で違反議員を制裁せよ

 地元の行政体は?

「かなり疲弊している。被災者でもあるからだ。輪島市役所で、福祉担当の職員と話す機会があった。ご自宅どうなってますか、と聞くと、全壊です。どこで過ごされているのですか、には、避難所です。発災からずっとですか、には、そうです。避難所が寒すぎて眠れない、と。今は市役所にいるが、それまでは避難所の運営の手伝いで、何のノウハウもないのに走り回っていた、と言う。地元自治体をどうサポートするか。外から回していける仕組みが理想だが、そうなっていない。他自治体の応援を受けているが、会議室の雑魚寝で、ポテンシャルが発揮できるかわからない」

 その他気付いたことは?

「トイレ問題が深刻だ。能登町でお邪魔した避難所の外トイレはたまたま山の水を使って流せるようになっていたが、それでも高齢者には、避難所から歩くのに無理があり、お手洗いに行きたくない、となってしまう。我慢を重ね体調を悪化させている。簡易トイレこそヘリで大量空輸できる」

「車中泊問題もある。自宅は全壊はしていないが、余震で家の中は危ない。家族で2台の車に分かれて車中泊している、と。食事や体調管理の仕組みがない。キャンピングカー時代で、20万台登録がある。日本RV協会が数十台の貸与を決定したが、登録者から国が借り上げれば、脚を伸ばせるミニ避難所として使える」

「災害弱者の立場から福祉避難所がどうなっているかにも関心があった。れいわ新選組国会議員のうち2人が障害者だということもある。一般の避難所と異なるニーズがあった。何が欲しいか聞くと、歯磨き、ウエットティッシュや病院衣だと言われた。水不足で洗濯ができず、高齢者や障害者を抱え、替えが欲しいと」

 現場入りの意味は?

「現場に行かないとわからないことがいっぱいある。政治家が発信することで物事が進むこともある。2018年の西日本豪雨では、愛媛、広島、岡山県で特に大きな被害が発生した。国会はちょうどカジノ法案を通そうという時だった。カジノではなく、災害対策に集中すべきだと主張、愛媛に現地入りしてその目撃談を基に質問、路地や狭い家の敷地内での泥かき作業に必須な小型重機の不足を力説し、結果的に100台が入ったことがあった」

 今回は何を求める?

「すでに発災1カ月、国が被災者のニーズに寄り添い、大きな方向性を示す時だ。衣食住ある中、最大は『住』の補償だ。家の全壊でも、被災者生活再建支援法ではケチな上限金額(住宅再建は最大300万円)があり、建て直せるはずがない。瓦がずれ、そこから雨が漏り、家中カビだらけで、壁も塗り替え、柱も腐る。補修費1000万円以上もざらだが、一部損壊扱いで途方に暮れるしかない。過疎化の半島に人が住めなくなる。昨年5月の能登地震で国が耐震性の高い住宅を提供していれば被害がここまで拡大しなかった可能性はある。ここをどうするか。国が8割、残りは地方と義援金で賄い、個人負担は極力なしにする。これも検討してほしい」

 官民の役割分担は?

「防災省の創設が必要だ。民間の善意だけに頼っているわけにはいかない。民間団体の間では、災害ごとに対応ノウハウが更新されていくが、それが国として蓄積されていない。それに対処するのは内閣府の防災担当になるが、職員は2、3年で異動、体系立った災害対処になっていない。防災省という専任官庁を作り、腕に覚えのある民間人を雇用、応援要員を大量に送れる基礎を今から作っておくことだ。先進国の中では日本は公務員数が少ない」

 中長期的には?

「地震列島と共生していくには、人口の分散が大切だ。首都直下、南海トラフ地震の発生確率が30年で8割だと政府が認めている。首都圏への人口集中が最大のリスクで、このままでは日本崩壊まっしぐらだ。首都圏で働くより、地方で子育て、働いた方が所得的にも環境的にもリッチだと思ってもらうためにも、全国最低賃金を一律2000円にすることだ。事業者の負担ではなく、国がその部分を補填する。人口分散と地方創生を同時にやっていく」

 裏金問題はどう見る?

「正直な気持ち、(政治資金規正法違反議員は)とっとと逮捕せいと。派閥解消して政策集団にします、というのは、私たち、昨日まで泥棒でしたが明日から詐欺師になりますというのに似ている。制裁は一般社会での脱税に対する罰則と同じにしないと割に合わない。不正額3500万円超の人たちだけが立件された現状からすれば、それ未満は税控除しますとすべきだ」

「政治になぜ金がかかるのか。根本原因に向き合わない限り解決はない。法を変えても彼らは金の流し方を変えるだけだ。我々にとっては、供託金(売名や泡沫(ほうまつ)候補乱立を阻止、法定得票数に達しない得票率の場合は全額没収される)という制度もその一つだ。国政では衆参ともに選挙区で300万円、比例区で600万円かかり、それが候補者数の掛け算分必要になる」

議席を増やし、野党動向をリードする

 れいわもお金かかる?

「私たちのように力の弱いところは滅茶苦茶(めちゃくちゃ)かかる。政党助成金は絶対必要だ。象と蟻(あり)が闘う差を埋めるとすればお金しかない。それによってシンクタンクを立ち上げたり、何とか五分の闘いにしないと、世の中変わらないし、彼らがやりたい放題やることになる。少数政党や野党に傾斜配分することも検討してほしい」

 今後どう闘う?

「二つです。一番必要なのは経済政策だ。この30年、自民党政治と財界が世の中を食い物にした。労働環境を破壊し、納税の在り方を歪(ゆが)め、さまざまなルールを壊していきながら、一部の者だけが肥えるような社会を作った。一種の経済災害が起きた、と受け止めている。この局面を変え、国を立て直すには大胆な財政出動しかないと思っている」

「もう一つは、国会の中で喧嘩(けんか)する。この国を壊した連中と徹底的に闘いたい。私たちが一人二人でやるからおかしな奴(やつ)らが現れたということになるが、昔の野党はもっと盛大に喧嘩した。牛歩や委員長を部屋に閉じ込めるなど、ノーと言うべき悪法には徹底的に抗(あらが)った。今は、そろそろ時間だからと採決に応じてしまう。体を張ってでも徹底的に抵抗し、国会を不正常化して、マスコミに実情を伝えてもらい、国民に危機感を持ってもらうくらい闘わないと、物事は変わらない」

「今の野党はやっている仕事はいいのがあるが、闘い方が貴族的だ。その頼りない野党と手を組んで政権交代だと言ってもその先はない。民主党政権の時のように公約で否定していた消費税増税をしたり、TPPに道を開いたり、ある意味自民党穏健派になってしまう。私たちが議席を増やし5年以内には中規模政党になり、8分の質問時間を30分にし、次の野党の塊の政策、国会の喧嘩の仕方をグリップできるようにしたい」

    ◇   ◇

 永田町の異色の人材も今年11月には50歳。その財政出動万能主義には賛同できない部分もあるが、通行人を立ち止まらせる街頭演説の熱、現場主義、弱者に徹底的に寄り添う姿勢には得がたいパワーを感じる。ミニ政党の壁を突き破れるか。この5年が正念場だ。


やまもと・たろう

 1974年生まれ。俳優を経て政治家。参院議員。れいわ新選組代表。消費税廃止や大幅財政出動などによる生活支援、脱原発、災害対策などを訴え、国会や路上で強力に発信してきた

くらしげ・あつろう

 1953年、東京都生まれ。78年東京大教育学部卒、毎日新聞入社、水戸、青森支局、整理、政治、経済部を経て、2004年政治部長、11年論説委員長、13年専門編集委員

「サンデー毎日2月18・25日合併号」表紙
「サンデー毎日2月18・25日合併号」表紙

 2月6日発売の「サンデー毎日2月18・25日合併号」には、「今からでも出願できる247私立大」を表で掲載しています。ほかにも「山本太郎のケンカ国会宣言『核心は大幅財政出動だ!』「映画『ハイキュー!!』大特集 二度とない瞬間を描く」「『家計』で『学び』は諦めない!『奨学金』の徹底活用術」などの記事も掲載しています。

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