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2024年大学入試:東大「推薦」京大「特色入試」合格者出身高校一覧 東大は女子占有率が過去最多の一方で「地方」減
大学合格者高校別ランキング・速報第1弾
一般選抜に先駆けて、2024年度(24年4月入学)の東大学校推薦型選抜と京大特色入試の合格者が発表された。合格実績の高い学校を取材すると、生徒の能力とともに、学校のバックアップ体制の重要性が見えてきた。
東大が学校推薦型選抜(推薦型)を導入したのは2016年度入試から。9回目となる24年度は、志願者256人中、合格者は91人で倍率は2・8倍だった。推薦型の定員の目安である100人には届かなかったが、21年度の92人に次いで2番目に多い合格者数だ。
東大が推薦型を実施する目的は、学生の多様性の確保だ。その一つが女子学生数の増加。合格者の男女比を見ると、成果が上がっているようだ。全合格者中の女子は42人で、21年度と並んで最多タイ。合格者に占める占有率は46・2%で最高となったのだ。学部別の合格者数を見ると、法、文、教育、薬で男子を上回っている。法は男子4人に対し女子が9人と倍以上の合格者数だ。
多様化のもう一つの側面は、入学者の関東一極集中の是正だが、こちらは後退感が否めない。東京の高校出身者は34人で過去最多となり、東京を含めた関東全体では50人。占有率は前年を8・3ポイント上回る54・9%になった。東大によると、関東以外の出願者数に大きな変化はないという。つまり、関東の高校出身者に地方の高校出身者が押し出されてしまったようなのだ。駿台予備学校入試情報室部長の石原賢一氏は言う。
「今年の現役生は、1、2年次をコロナ禍で過ごした世代であり、高校時代の活動が制限されていた。そうなると、中学時代に多様な経験を積めていた中高一貫校が有利。首都圏を中心に関東に一貫校が多いことが合格者数の差になったのでしょう」
24年度は関東集中が進んだが、これまでの推薦型による入学者を見ると、東大が望む効果が得られていることは間違いないようだ。副学長(推薦入試担当)の秋山聰教授は、2月13日の合格発表の記者会見で、次のように話した。
「メンターや指導教員へのアンケートからは、学習意欲が高く多様なバックグラウンドを持った元気な学生が数多く入学していることがうかがえる。学部教育を活性化させるという推薦型の成果を実感している」
24年度入試で東大の教育・研究活動を「活性化する人材」を輩出した高校について見ていこう。
東大の推薦型に出願できるのは、共学校は4人で男女3人が上限。男子校と女子校はそれぞれ3人ずつだ。出願に制限がある中、今年の1校あたりの合格者数は3人が最多で、開成、渋谷教育学園渋谷、灘が該当する。合格者が2人の高校には、秋田、福島・県立、渋谷教育学園幕張、筑波大付、桜修館中教、日比谷、藤島、長田、西大和学園、久留米大付設がある。
日比谷と「渋渋」は初回から9年連続合格
複数の合格者を出した高校の中で注目したいのは開成。42年連続で一般選抜を含む合格者数ランキングトップを走る同校だが、意外に推薦型の合格者は少なく、23年までの8年間で5人だった。それが、24年度は男子校の上限いっぱいの3人が合格。開成と東大合格者数ランキングトップを争う男子校の灘も上限の合格者を出した。
前出の高校のうち、日比谷と渋谷教育学園渋谷は、初回から途切れることなく、9年連続で合格者を出している。渋谷教育学園渋谷の進路部長教諭に要因を聞いてみた。
「学年が変わっても、担任間で東大入試に関する情報を引き継ぎ共有しています。出願学部に関連する教員が出願書類をチェックし、面接対策は学年を問わず教科教員が協力するなど、生徒に必要な支援について、教員間の共通理解ができています」
生徒と教員が一丸となって歴史を刻む中で、在校生にとって東大の推薦が特別なものではなく、自分も頑張れば合格できると感じられる環境も大きな後押しになるという。もちろん、途絶えることなく合格者を輩出しているのは、東大に認められる生徒の力があればこそ。高橋教諭が続ける。
「科学オリンピックなど、輝かしい成果を上げているに越したことはないが、肝心なのは自らの成長を伝えられるか。研修や探究活動などのさまざまな経験から得たものを振り返り、それを次にどう生かし、その結果何ができるようになったのかという、自身の成長を語れる生徒が合格しています」
東大の推薦型というと、科学オリンピックの世界大会入賞者など、スーパー高校生のイメージがあるが、そればかりではないようだ。前出の秋山教授は、個人的な見解と前置いた上でこう話す。
「突出した表彰歴だけではなく、探究学習などを通した、高校の学修成果を評価している。推薦合格した学生の説明などを通し、特別なことでなくても合格できるという理解が進んでいると感じる」
東大と同時期に総合型と推薦型などからなる特色入試を導入した京大についても見ておこう。
定員は東大より多い152人のところ合格者は119人で、東大同様に定員に満たなかった。志願者は500人で倍率は4・2倍だった(いずれも後期日程で募集する法学部を除いて集計)。
京大は出願制限がないため、1校あたりの合格者が多い。最多は8人の西京と開明で、桃山学院7人、大阪桐蔭5人、姫路西4人、洛南3人が続く。特色入試の導入以来、9年間途切れず合格者を出している高校は、西京、洛北、洛南、大阪桐蔭、開明の5校。
24年度に京大特色入試において、合格者の伸びが顕著だったのは桃山学院。特色入試開始時から23年度までの累計は6人だったが、単年度で7人が合格している。大幅に増えた要因について、同高校教頭が説明する。
「熱心に系統だって探究活動に取り組んでいました。担任と担任団が生徒の情報を共有しながらチームとして指導にあたり、生徒と教員がともに頑張った成果です。京大見学会やロールモデルである先輩京大生の講演会などを通して京大を身近に感じ、京大に行けるというクラスの雰囲気が醸成できたことも大きいですね」
東大と京大の推薦型や総合型で結果を出す高校を取材すると、生徒はもちろん、教員の力量が問われていることが分かる。
「東大や京大など、難関大が推薦型や総合型を導入したことで、教員はこれまで見えづらかった、生徒の学力以外で優れた面を積極的に見るようになった。そうした流れの中で、東大や京大の入試に向いた生徒を見つけられる高校は強いですね」(駿台の石原氏)
東大と京大の推薦型や総合型で成果を出すには、生徒の意欲を見抜いて育てる、教員の力量が不可欠となっている。