経済・企業 2024年の経営者

リラクゼーションの「ラフィネ」530店超を展開――清水秀文・ボディワークホールディングス社長

Photo 武市公孝:東京都中野区の本社で
Photo 武市公孝:東京都中野区の本社で

ボディワークホールディングス社長 清水秀文

しみず・ひでふみ
 1957年東京都出身。都立武蔵丘高校卒業。仙台大学体育学科を卒業後、金融機関勤務を経て専門学校2校で学ぶ。82年、埼玉県にエステティックサロンを開店。87年、前身会社のリバースを設立。2008年、現社名に改称。66歳。

 Interviewer 岩崎誠(本誌編集長)

>>連載「2024年の経営者」はこちら

── リラクゼーション業とはどんなビジネスですか。

清水 治療を目的としないボディーケアやリフレクソロジーなどです。ボディーケアは筋肉やツボ、リフレクソロジーは足裏や手の末梢(まっしょう)神経が集まる「反射区」をセラピスト(施術者)がほぐす健康法です。

── マッサージとは違うものですか。

清水 マッサージをする「指圧治療院」といった名称の施術所は治療を目的としており、施術する人は専門学校などに3年以上通ってあん摩マッサージ指圧師の国家資格を取得しなければなりません。当社はこれとは異なり、治療を目的としません。セラピストが手技で体をほぐすことで「気持ちいい」と感じられ、終わった後に「すっきりした」「リラックスできた」と思えたりすることを目指すサービスです。セラピストは国家資格を取得する必要はありません。セラピストになりたい人向けに当社のグループ会社で教育し、民間資格試験を受けてもらっています。

── どんな経緯で創業したのですか。

清水 大学を出ていったん就職した後、専門学校で学んであん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の国家資格を取りました。24歳の時、専門学校の同級生とエステティックサロンを埼玉県大宮市(現さいたま市)に開き、夜は柔道整復師の専門学校に通う日々が続きました。1987年に設立した運営会社が当社の前身です。90年に知人から誘いを受け、福島県会津若松市にある温浴施設内のリラクゼーション業務を請け負うことになりました。軌道に乗った後、茨城県や千葉県などにも広げ、今は東京・後楽園の「ラクーア」や豊島園の「庭の湯」など全国170カ所に上ります。名称は施設によってさまざまです。

約4300人が働く

── ショッピングモールなどで見かける「ラフィネ」は今年、25周年を迎えたそうですね。

清水 99年にリラクゼーションの店を他社から3店買い取ったのが始まりです。当時、リラクゼーションはまだポピュラーではなく、なかなか利用してもらえませんでした。30歳以上の女性をターゲットにしたかったので、集客するには商業施設内がいいと考え、神奈川県横須賀市の西友に4号店を構えました。そこそこうまくいったので、ダイエー、マイカル(現イオン)、サティ(同)、イオンなどの店内に次々と店を開き、首都圏の次は福岡市のゆめタウンに進出しました。2000年に大規模小売店舗立地法が施行されてから、毎月のようにオープンする商業施設から「出店しないか」と声がかかる状況でした。

── ラフィネの出店数はどのぐらいですか。

清水 今は537店。これでもピークの590店超から、新型コロナウイルス禍を経て減りました。20年に高知市に店を開いたことで念願の全都道府県出店を果たしました。当社の連結売上高のうち、ラフィネが半分をやや上回る程度となっており、主力事業です。

── セラピストは何人ぐらいですか。

清水 ラフィネで働く人は約3200人で、ほとんどが女性です。温浴施設内の請負事業で働くセラピストを含めると約4300人です。その大半は当社と業務委託契約を結んで働いています。

── 健康機器のレンタル事業も営んでいるそうですね。

清水 各地の商業施設、空港、駅にあるマッサージチェアの大半はグループ会社が手がけています。運営者にマッサージチェアを貸すか、コイン式の有料マッサージチェアを当社が設置する事業です。台数は約3000台で日本一です。

── オーストラリアでもラフィネの店を運営しているのですね。

清水 17年にシドニーに出店し、19年に2店目を開きました。今年2月には1号店を閉め、夏に新たな店をオープンします。日本でラフィネのセラピストだった人がワーキングホリデーや留学のビザ(査証)を得てオーストラリアに転居して働いています。進出先にオーストラリアを選んだ理由は、一つ目は英語圏だということ、二つ目は物価水準が日本より高いこと、三つ目は国家資格がない人がリラクゼーションのセラピストとして働けることです。オーストラリア政府はリラクゼーションに関する日本の民間資格を取得した人に就労ビザを発給しています。

── 日本人客が多いのですか。

清水 日本人が多いだろうと予測していたのですが、意外と少ないんですね。想像もしなかったのですが、アジア人が半分ぐらいです。

── ほかの国に進出する考えはありますか。

清水 今は国内でもセラピストが足りていませんから、海外店に移ってもらうと国内店が困ってしまいます。海外で研修できる態勢を整えられれば、店を出せるかなと思っています。

(構成=谷道健太・編集部)

横顔

Q 30代はどんなビジネスパーソンでしたか

A 温浴施設の受託業務が成長期でした。バブル崩壊後でしたが、温浴施設が次々と開業する波に乗るため一生懸命でした。

Q これまで仕事でピンチだったことは

A なんといってもコロナです。商業施設が閉まった20年4月には590店以上のラフィネのうち、開けたのは路面店とスーパーの8店だけでした。

Q 休日の過ごし方は

A スポーツクラブで筋トレや水泳をしています。


事業内容:リラクゼーション業

本社所在地:東京都中野区

創業:1987年2月

資本金:5000万円

従業員数:304人(2024年4月、連結)

業績(24年3月期、連結)

 売上高:272億円

 営業利益:15億円


週刊エコノミスト2024年6月25日号掲載

編集長インタビュー 清水秀文 ボディワークホールディングス社長

インタビュー

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

7月2日号

とことんわかる 物価、金利、円安17 「賃金と物価上昇」だけでは低次元に…… 国民にとって望ましいのは「実質賃金と生産性の好循環」■門間一夫19 インタビュー 山崎俊輔 ファイナンシャルプランナー「老後に4000万円必要」の真意は?20 インフレ期の運用術 資産構成や住宅ローンの見直しを■長内智22 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事