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教養・歴史 鎌田浩毅の役に立つ地学

神奈川西部で震度5弱 震源は首都直下型の震源域近く/196

 8月9日午後7時57分、神奈川県西部を震源とする地震が発生し、最大震度5弱の揺れが観測された。震源の深さは13キロメートル、地震の規模を示すマグニチュード(M)5.3と推定された。また、8月15日午後8時20分にも付近を震源とするM4.3の地震が発生し、最大震度4を観測した。

 地震は陸の北米プレートの下に沈み込む、海のフィリピン海プレートとの境界付近の地殻内で起きた。今回の震源に近い神奈川県の丹沢山地の深さ10~30キロメートルでは、フィリピン海プレート上にある伊豆半島が北側にある北米プレートに衝突するために地震活動が活発で、M5~6の地震が数年に1度の割合で発生している。

 また、1782年には神奈川県西部でM7.0の地震(天明小田原地震)が、1853年にもM6.7の地震(嘉永小田原地震)が起きている。そして、1923年9月1日にはやはり付近を震源とするM7.9の地震が起き、「関東大震災」として関東一円に大きな被害をもたらした(本連載の第109回を参照)。

 8月9日の地震では、伊勢原市と横須賀市で転倒によるけが人が3人出たほか、交通機関にも影響が出た。東海道新幹線は品川─静岡間で一時運転を見合わせた結果、上下計97本が最大約2時間13分遅れ、約10万人に影響が出た。また、東名高速道路では厚木インター─伊勢原ジャンクション間で通行止めとなった。

前日には日向灘地震

 その前日の8日には、日向灘を震源とするM7.1の地震が起き、宮崎県で最大震度6弱を観測した。南海トラフ巨大地震の想定震源域で発生したため、気象庁は南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)を初めて発表する事態となった。

 2日連続で起きた地震はいずれもフィリピン海プレートが沈み込む点では共通しているが、原因としては以下の二つの現象が重なったものと考えられる。一つは、11年の東日本大震災以降に日本列島の地盤が不安定になり、直下型地震の発生頻度が現在も高止まっていることである。

 もう一つは、2035年±5年に予測される南海トラフ巨大地震の発生に向けて、内陸地震が増加して地盤が不安定化するという100年ぶりの変動である(本連載の第12回を参照)。1995年の阪神・淡路大震災以降に各地で直下型地震が増えており、南海トラフ巨大地震でピークを迎えると考えられる。

 8月9日の地震の震源は、政府の地震調査委員会によって19カ所想定されている首都直下地震の震源域と近い場所にある。現在の地震学では、直下型地震が何月何日に起きると予知することは不可能とされる。いつどこで地震が起きても不思議ではなく、日々の備えを怠らないようにしたい。


 ■人物略歴

かまた・ひろき

 京都大学名誉教授・京都大学経営管理大学院客員教授。1955年生まれ。東京大学理学部卒業。専門は火山学、地質学、地球変動学。「科学の伝道師」を自任。理学博士。


週刊エコノミスト2024年9月24日・10月1日合併号掲載

鎌田浩毅の役に立つ地学/196 神奈川県西部で震度5弱 地盤不安定化の複合要因で発生

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