米長期金利が示す大暴落のシグナル=市岡繁男
10月10日はS&P500が3.29%、ナスダックが4.08%も下落した。米国株が1日で3.3%以上、下落したのは今年3回目である。これだけ下がるのは滅多にないことで、筆者の調べでは1927年以降、1日で3.3%以上も下げたのは総立会日数(総取引日数)2万3611日中、221回しかなかった。つまり、確率的には4年に1度くらいしかないことが、今年は3回も起きたのである。
地震と同じで、株価の急落も単発ならあまり気にすることはない。だが、それが複数回、起きると嫌な感じがするものだ。ましてや今の株価は明らかに割高なのである。
たとえば、いわゆるバフェット指数(株式時価総額÷名目GDP)は、2000年のITバブルを上回り、戦後最高の水準にある(図1)。
10年移動平均という危険ライン
こうしたなか、10年国債利回り(長期金利)が3.2%まで上昇してきた。1981年以降、長期金利が10年移動平均(現在は2.5%)に接近、ないしは超えた場合には、必ずと言ってよいほど株価は下落している。
87年のブラックマンデー、00年のITバブル、08年のリーマン・ショックがその事例である。
機関投資家は長期金利の上昇で債券の含み益がなくなれば、株式などリスク資産への投資を縮小せざるを得ない。しかも今回は、長期金利の10年移動平均に対する乖離度合いが突出している。つまり、それだけ債券の含み損が大きいのである。
住宅と自動車株も急落
もう一点、住宅や自動車産業の株価が急落していることも要注意である。たとえば昨年秋以降、10年国債先物価格が約8%下落(長期金利は上昇)するなかで、住宅株や自動車株はピーク比25%も下落している(図2)。これは住宅ローンや自動車ローンの金利が上昇すると、こうした高額商品の消費は落ち込むからである。
この上さらに金利が上がるようなら、他の消費も落ち込んでいくだろう。すでに先週は小売業界の株価が前週比4.8%も下落している。
今回の株価急落は、そんな金利上昇の怖さが皆に知れ渡ったからではないか。
(市岡繁男・相場研究家)