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週刊エコノミスト Online 挑戦者2020

西浦明子 軒先社長 軒先も小スペースも貸します

撮影 武市公孝
撮影 武市公孝

 自称、スキマハンター。どんな小さなスペースでも有効活用するシェアリングビジネスの先駆者だ。

(聞き手=下桐実雅子・編集部)

 スペースの貸手と借り手をつなぐ空間シェアリングの事業をやっています。2010年から、スペースを1日から借りられるサイト「軒先ビジネス」を運営しています。不動産業者が扱わないビルの軒下や屋上、テナントが入るまでの空き店舗、いずれ取り壊すので短期でしか貸せない物件などがあります。常時、約2500カ所を扱っています。マツモトキヨシ、イエローハットといったチェーン店も登録しており、道路沿い店舗の入り口スペースなどを貸してくれます。店頭に花や野菜を売る出店があると、にぎわいが生まれて集客効果を見込めるようです。

個人の挑戦の場を増やす

 ビルの軒下はキッチンカーの需要が多く、店舗はアパレル販売、小スペースには占い師の利用もあります。当社は賃料の一部を手数料としてもらいます。19年11月東京・渋谷にオープンした複合施設「渋谷フクラス」では、地権者から電話ボックスほどの狭小スペースの運営を任されました。都心の一等地ですが、1時間1000円ぐらいで出店できます。場所と時間を小さく区切ることで、個人が借りやすくなります。

 この事業を始めたのは、短期で店舗を借りられなかった自分の経験からです。07年、出産を契機に仕事を辞めたのですが、子育てしながら続けられる仕事として、輸入雑貨のネット販売を考えました。20代でソニーの駐在員として過ごしたチリの商品を紹介したいと思ったのです。どういう商品が売れるのか、試しに店舗を借りようとしたら、長期契約が前提でした。短期で貸してくれる商店街の店舗は、約3坪で1週間20万円と高額。みんながもっと気軽に出店できる場所を提供したいと思い立ちました。最初は貸し物件を集めるのが大変で、商店街で飛び込み営業したこともありました。

予約型のパーキングも

 収益の約6割を占めるのが、12年に始めたサイト「軒先パーキング」です。法人や個人の空き駐車場を貸してもらうシェアサービスで、イベント会場やスタジアムの近くが多いです。事前に予約できて利用者には便利ですし、貸す側にも収入になります。人気歌手のコンサートなどの日程が分かると、周辺地域に営業して駐車スペースを確保しています。

 自治体とも提携しています。福島県喜多方市はしだれ桜の名所で、毎春に約30万人以上が訪れますが、駐車場が少なくて路上駐車に悩まされていました。事前に市の広報誌で駐車スペースを募集し、臨時駐車場を確保しています。

昼の時間帯に店舗を間借りし、担々麺n店を営業する店主の松久保篤さん(軒先提供)
昼の時間帯に店舗を間借りし、担々麺n店を営業する店主の松久保篤さん(軒先提供)

 18年からは、吉野家ホールディングスと共同で、「軒先レストラン」の運営も始めました。バーや居酒屋など夜のみ営業している飲食店の店舗を、昼間は別の人に有効利用してもらうという事業です。間借りの店舗は、カレーや担々麺などさまざま。軒先レストランを利用すると月10万〜15万円ぐらいで開店できますが、都内で店舗を借りたら、小さい店でも敷金や礼金、内装工事などを含めて1000万円ぐらいはかかります。個人が気軽にチャレンジできる場を増やすのが当社の目標です。それが、街全体の魅力を高めていくと思っています。(挑戦者2020)


法人概要

事業内容:空きスペースの検索・予約サイト「軒先ビジネス」、シェア型パーキングサービス「軒先パーキング」の運営など

本社所在地:東京都千代田区

設立:2009年4月

資本金:2億2829万円

従業員数:約10人

昼の時間帯に店舗を間借りし、担々麺の店を営業する店主の松久保篤さん軒先提供


 ■人物略歴

にしうら・あきこ

 1969年神奈川県生まれ。91年上智大学外国語学部卒後、ソニー入社。海外営業部を経てチリに駐在し、オーディオ製品のマーケティングを担当。退社後、生活情報総合サイト「オールアバウト」の創業に関わる。2001年ソニーの関連会社でゲーム機の商品企画を担当。その後、政府開発援助(ODA)関連の仕事に携わる。08年4月軒先を創業し、09年会社設立。51歳

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