コロナに負けない19銘柄 「医薬・衛生」&「テレワーク・遠隔診療」=和島英樹
新型コロナウイルス対策として待望されるのが特効薬やワクチンだ。検査を受けられていない患者も多いとされ、迅速な検査体制の構築も重要だ。 特集:コロナ相場に勝つ日本株
3月17日に開催された中国科学技術省の記者会見ではインフルエンザ治療薬「アビガン」について、新型コロナウイルスの臨床研究で有効性を確認したと発表された。患者200人に投与し、肺炎などの症状が改善したという。
「アビガン」は富士フイルムホールディングス(HD)傘下の富士フイルム富山化学が開発した。2014年にインフルエンザ治療薬として製造販売の承認を取得。同社は3月末に、国内臨床試験の開始を発表した。原料はデンカが供給することを明らかにしている。
また、東京大学医科学研究所は3月18日、新型コロナウイルスの治療薬候補として、膵炎(すいえん)などの治療に用いられる「ナファモスタット」が有望との見方を示した。ナファモスタットはジェネリック(後発医薬品)大手の日医工が「フサン」という商品名で販売する。
創薬ベンチャーで東証マザーズに上場しているアンジェスは3月上旬、新型コロナウイルスを予防するワクチンを開発すると明らかにした。同社の独自技術を用いた「DNAワクチン」を使う。DNAワクチンはウイルスのDNA(デオキシリボ核酸)情報を使用するため、安全で短期間での製造が可能とされる。製造はタカラバイオが行う。
一般的な新型コロナ検査であるPCR法(遺伝子検査)のネックは検査に3時間以上かかってしまうことだが、臨床試験薬大手の栄研化学は1時間程度の所要時間で済むLAMP法を開発した。使用する装置がベッド脇に持ち込めるほど小型なこともメリットだ。キョーリン製薬HDは15分で検出できる検査試薬を発売すると発表した。
ほかにも、クラボウや東ソーなども検査時間短縮の手法を開発している。
「24時間抗菌」実現
株式市場ではマスク不足を背景に、原料の紙を作っている製紙メーカーの株が上昇する場面もあったが、増産体制が整えば収束するとして人気は落ちついた。一方、コロナショックを契機に習慣として手洗いや消毒が定着するとの見方から、関連商品を扱う企業に注目する向きがある。
花王が19年11月に発売した「クイックル Joan(ジョアン)」はノンアルコールで99・9%除菌ができる。抗菌成分に発酵乳酸を配合し、24時間抗菌を実現。天然由来成分である発酵乳酸の抗菌機能に着目し、肌に優しい。スプレー式とシートタイプがあり、手指や口元、食卓から家電など幅広く使える。大手調査機関によると、「製販一貫体制が強みで、販売チャンスを逃さず売れ行きを伸ばしている」という。
同社の手洗い関連製品「ビオレガード薬用ジェルハンドソープ」「ビオレu泡ハンドソープ」なども堅調な売り上げが続く。日本の上場企業で最長となる30期連続の増配を続ける花王は20年12月期も増配するとの予想を2月に発表。前期比10円増の1株当たり140円とし、記録更新となる見込みだ。
ライオンでは手洗い関連製品「キレイキレイ」シリーズが大ヒットになっている模様。同社は今年2月に開いた19年12月期の決算説明会で「20年1〜3月期の売上高が好調」(同社)と説明したという。同シリーズには「泡ハンドソープ」「うがい薬」などがある。
AWSの導入支援
新型コロナの感染拡大が長期化し、テレワーク(在宅勤務)やオンライン(遠隔)診療が注目を集めている。テレワークは東京オリンピック・パラリンピックの混雑緩和のために政府や東京都が推進を図ってきた。総務省の調査(社員100人以上の企業)によると、テレワークの導入企業は11年の9・7%から18年には19・1%に上昇。今回の新型コロナ対策で一気に進んだとみられる。
テレワークを行うには情報インフラを整備する必要があるため、情報インフラ関連の企業に注目が集まる。サーバーワークスは、アマゾン傘下のクラウドサービス「AWS(アマゾンウェブサービス)」の導入支援から運用、保守代行まで一貫して提供している。クラウドはインターネット上のソフトサービスであるため、パソコンなどの端末に負荷がかからず、コストも削減できる。
AWSはそのクラウドサービスで世界トップで、シェアは2位のマイクロソフトの2倍以上と推定される。また、AWSは今秋から政府の共通プラットフォームとして採用されることが決まっており、サーバーワークスにとっては追い風となりそうだ。
ブイキューブはウェブ会議などのコミュニケーションサービスを提供する。高品質のウェブ会議サービス「V−CUBEミーティング」は業界調べで、13年連続でシェアトップを獲得。2月には新型コロナの感染症懸念から開催・参加が危ぶまれる株主総会を支援する特別配信サービスの提供を開始した。
診療アプリの登録急増
厚生労働省は2月下旬、新型コロナの感染リスクを下げるために一定の条件で対面診療なしでの医薬品処方を認め、医療機関から薬局へファクスなどで処方箋を送付することを可能とする方針を示した。公的保険の適用についても、これまでオンライン診療では6カ月以上の対面診療継続など高いハードルがあったが4月に改正。3カ月以上に期間が短縮されるなど条件が緩和された。
オンライン診療システムなどを手がけるメドレーは、2月に入って同社のオンライン診療アプリに登録した新規患者数が急増したという。同社が提供する、「CLINICS(クリニクス)」は、自宅や職場から医師の診療を受けられるオンライン診療システムで、予約時間にすぐに受診可能で便利だ。
遠隔サービスなどのオプティムと医師の人材紹介サービスなどのMRTは両社で展開する「オンライン診療ポケットドクター」を医療機関に期間限定で無償提供すると発表。アプリを通じて取得した患者のバイタルデータを確認しながら診療ができる。
経済産業省は3月、チャットを使ってオンラインで医師とやり取りができる健康相談事業を始めた。医療ポータルサイトを運営するエムスリーとLINEが出資するLINEヘルスケア、医師向け情報サイト運営のメドピア子会社のMediplat(メディプラット)の2社が業務委託先となる。
(和島英樹・経済ジャーナリスト)