投資・運用コロナ相場に勝つ日本株

業種別 強い銘柄・弱い銘柄 (10)化学・素材 中長期で成長事業多数 東レ、日産化学など注目=須田良一

(注)年初来株価騰落率、PBRは4月6日現在 (出所)編集部作成
(注)年初来株価騰落率、PBRは4月6日現在 (出所)編集部作成

 化学企業の多くは、「エネルギー」「環境」「食糧」「健康」といった世界のメガトレンドを成長の柱に据えようとしてきた。足元の新型コロナウイルスの感染拡大や油価の下落は短期的に業績の下押し要因になっているが、中長期的視点でみれば、浮上してくる事業、需要が伸びる事業を多く抱えている、とみていいだろう。 特集:コロナ相場に勝つ日本株

 例えば、繊維でなじみの深い東レは、樹脂やフィルム、電子情報材料、医薬・医療、水処理など幅広く素材分野に根を張っているのが特徴だ。車や航空機の軽量化に貢献する炭素繊維、人工透析では国内トップクラスのシェアを持つ。空気清浄器向けのフィルターなど環境対応事業に加え、水素社会の到来に向けては高圧水素タンク用高強度炭素繊維や電極基材、電解質膜なども手掛けている。

 化学中堅の日産化学。ライフサイエンス(生命科学)と電子材料などファインケミカル事業をバランスよく育て、今後の事業拡大が期待できる。主力の一つの農薬も、グローバル規模の人口増加の中、食糧問題の解決に寄与する農薬の需要は拡大する。電子材料では中国、台湾の研究開発拠点を軸にフラットパネルディスプレー(FPD)や半導体材料事業で存在感が高まる。

 石油化学から出発したJSRはいま、日韓の貿易摩擦で注目された極端紫外線(EUV)レジストなど、半導体材料で世界トップのシェアを誇る。バイオ医薬事業でもM&A(合併・買収)を繰り返し、次代の経営の柱に育成しようと努めている。JSRは、バイオ医薬品の受託ビジネスという成長分野で手堅いビジネスを展開しており、同様の事業では、AGC(旧・旭硝子)も注目される。

住友化学は巨額M&A

 三井化学、三菱ケミカルホールディングス(HD)、住友化学などの総合化学企業は、一般的に成長が期待される幅広い分野に先行投資するため、成功確率が低くなる傾向があるが、高配当で注目される住友化学は焦点を絞った大胆なM&Aで市場からも注目を集めている。

 住友化学は子会社の大日本住友製薬を通じて2019年9月には、3200億円を投じ、製薬スタートアップの英ロイバント・サイエンシズと資本提携し、同社への10%以上の出資と同社製薬子会社5社の買収を決めた。オーストラリアの農薬大手ニューファームから南米事業を約700億円で買収することも決めており、巨額投資戦略の今後は注目される。

 総合化学のなかでも旭化成は、ライフサイエンスなど投資分野を厳選し、成功確率を高める経営をしているため、市場の評価は高い。足元では、内需型の住宅事業の比率が高く、この点でも有利に働く。

 原油価格の低迷も日本の石油化学産業に影響を与えるだろう。原油が1バレル=40ドル以下の低価格が続けば、米国のシェールガス・オイルの開発に急ブレーキがかかり、アジアの石油化学コンビナートの競争力が高まり、北米のシェール由来のプラントと戦える可能性も出てくる。プラスチックのリサイクルなどもコストの問題から熱が冷める可能性があり、そうなると衰退する一方と言われていた石油化学が日本を含むアジアでもうかる時代が再び訪れるかもしれない。

(須田良一・化学ジャーナリスト)

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