業種別 強い銘柄・弱い銘柄 (9)商社 丸紅、三井物産、住商が減損 三菱商事と伊藤忠は明暗=編集部
丸紅は3月25日、2020年3月期連結の純利益予想を1900億円の赤字に下方修正し、18年ぶりの赤字に転落する見通しとなった。新型コロナウイルスの感染拡大などに伴う資源価格下落の影響を中心に、石油・ガス事業や米穀物メジャーのガビロン、電力やインフラ、銅事業の減損にまで踏み切った。三井物産も3月27日、原油など資源価格の下落により、500億~700億円の減損損失の可能性を公表。これに続き4月8日には、住友商事が原油価格の下落により、米国の鋼管事業を中心に減損損失と在庫評価損を行う可能性があると発表。今期の連結利益予想3000億円が1000億円程度下落する可能性があるという。
この1000億円のうち500億円が米鋼管事業で、残る500億円は輸送機・建機部門や資源・化学品部門で一過性の損失が発生する可能性がある。大手3社が減損とその可能性を発表したことで市場は次の減損を懸念しはじめているが、その筆頭候補は丸紅だ。
丸紅は昨年11月、みずほフィナンシャルグループ(FG)とともに1900億円で米航空機リースのエアキャッスルを株式公開買い付け(TOB)で買収すると発表。丸紅の投資は1200億円で、3月末に契約が完了している。しかもエアキャッスルは中古機リースが主体のため、「リース先は大手航空会社よりLCC(格安航空会社)が多く、旅客需要減でも政府の救済措置が期待できない」(アナリスト)と見られている。
販売低迷の三菱自
もう一つの焦点は三菱商事。資源ではなく三菱自動車の減損で、20年3月期は連結純利益でも株価でも時価総額でも伊藤忠商事に首位を明け渡す可能性が高い。三菱商事は、三菱自に約2000億円を出資している。18年3月には1株749円で三菱自のTOBを実施し、9%から20%に出資比率を引き上げたが、三菱自の株価は300円台と6割下がっている。減損は株価ではなく将来の収益力で判断されるが、三菱自の販売は新型コロナ危機前から低迷しており、減損必至の情勢となっている。
一方の伊藤忠は15年、中国中信集団(CITIC)の株式10%を6000億円で取得している。当時の取得価格は13・8香港ドルだったが、今年4月7日時点では7・87香港ドルに急落している。ただし伊藤忠は、18年11月に1433億円の減損処理を実施。CITICの収益力はその時より増しているため、想定される中国リスクが減損に結び付く可能性は低い。
しかも伊藤忠の利益は8割が非資源で占められ、292社の連結対象のうち、20億円以下が70%という中小事業だ。年初来高値からの株価下落率は17%にとどまっており、他商社より強さが際立っている。
ただ、商社業界は、自動車や鉄鋼など固定費の大きいセクターと比べ、下落率は大きくはなく、「コロナ終息後の爆上げという切り口では投資しにくい」(アナリスト)との声も。市場が期待するのは、この危機時に、資源の底値買いや大型買収に踏み切れるか否かだ。また、取引先の救済合併や買収などで未来の事業基盤をどれだけ強固にできるかといった視点でも、商社の経営者は胆力を試されることになる。
(編集部)