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「金正恩死亡説」が流れた北朝鮮独裁体制が陥る「本当の病状」とは
4月下旬、にわかに盛り上がった北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長の健康異常説。
結局、5月1日の工場の竣工式に出席したことで健在ぶりを示した。
20日ぶりに公の場に姿を見せた形だが、元々、韓国と米国のメディアが金委員長の健康不安を指摘する報道を行い、重病説に増幅され、死亡説まで飛び交った。
しかし、北朝鮮は閉鎖的な独裁国家であり、情報は簡単に管理できる。
外国メディアによる健康異常説や死亡説は、これまで事実であったためしはない。
北朝鮮は金日成、金正日と2人の指導者の死を経験している。
ともに公式に死亡が発表される直前まで、知るすべはなかった。
他国同様、指導者の健康状態は最高機密なのだ。
とはいえ、今回の健康異常説で世界が改めて認識したことがある。
一つは、健康的とは言えないその体形から、健康異常説に誰もが簡単に飛びつくということだ。
2014年に1カ月余り、動静が消えたことがあった。その後に足首の手術を受けるためだったことを、北朝鮮メディアが事実上認めたことがある。
さらに重要なことは、仮に金委員長がいなくなった場合に、核やミサイル開発を進めてきた北朝鮮がどうなるかを誰も考えていなかったことのほうが恐ろしい。
だからこそ、今回の一連の報道では、金委員長の妹である金与正同党第1副部長が、後継者との報道も同時に拡散されている。
実は、建国以来、権力が世襲されてきたものの、これからの北朝鮮がどう指導者を選ぶのか、現在はっきりしないのだ。
王朝での皇太子といった制度もないがゆえに、後継者がわからない。
外国政府としてももし突発事態が発生すれば誰を相手にしたらいいのか、誰もわからないのが現状だ。
今回、米韓政府の態度は健在で一貫していたが、これには誰も準備をしていない「ポスト金正恩」にあえて触れないようにしていたのでは、とも思えてくる。
(浅川新介)