バランス型投信 債券組み入れでリスク低減 「分散」が効かないケースも=前山裕亮
失敗しにくい資産運用の方法の一つとして、「分散投資」が広く知られている。一つの金融資産に偏って投資をするよりも、さまざまな金融資産に分散するほうが、安定した収益が得られるという考えである。
既に分散投資を行っている人でも、複数の投信などを組み合わせて分散投資を自力で実践するには手間ひまがかかる。また、ある程度の知識も必要となるため、これまで資産運用になじみが薄かった投資初心者にとっては、かなりハードルが高いのではないだろうか。そこでバランス型投信を紹介したい。これはさまざまな金融資産が組み入れられており、一つの投信で「分散投資」が簡単に実現できる。分散投資をしたいが難しいと感じてしまう人にとって、バランス型投信は最初に購入を検討するべき投信といえる。(プロに学ぶ投資術)
バランス型でも急落
そんなバランス型投信であるが、足元は株式などと同様に厳しい状況が続いている。つみたてNISA(ニーサ、少額投資非課税制度)の対象、つまり金融庁がお墨付きを出したバランス型投信(計73本)をみると、2020年1〜3月の収益率(図)はすべての投信がマイナスで、基準価額が下落した。
実は、分散投資の効果が効かない場合がある。それは、投資先となる株式やREIT(不動産投資信託)などの価格変動が大きい金融資産(リスク性資産)が一斉に下落した時である。そのような時は分散投資をしていても、その効果が限定的であるため、バランス型投信でも予想外に大きく下落することがある。足元の「コロナショック」が、まさにこれに当たる。主要8資産のうち国内債券と外国債券以外のリスク性資産6資産すべてが年初から10%以上下落し、うち4資産の下落幅は20%超えている。そのため、バランス型投資のほとんどが下落を免れなかった。
例えば、つみたてNISA対象のバランス型投信の中で人気を集めているものとして、主要8資産に均等配分しているものがある(表中黒地の4本)。投資している地域や資産を十分に分散しているバランス型投信といえるが、年初からの下落幅は16〜17%と国内株式と同程度であり、大きく下落した。
また、このような時のバランス型投信の下落幅は、どれだけリスク性資産を組み入れているのかに左右されやすくなる。つまり、リスク性資産の組み入れ割合が大きいものほど下落が大きくなり、小さいものほど下落も小さくなる傾向がある。
8資産均等以外にも国内株式、外国株式、国内債券、外国債券の4資産均等のバランス型投信がある(表中「参考」の4本)。それらの年初からの下落幅は9〜10%程度と、8資産均等と比べて3分の2以下であった。やはりリスク性資産を組み入れている割合が、4資産均等は50%と8資産均等の75%と比べて3分の2と小さく、その分、下落幅も小さかった。
長期保有が基本
ここまでの話では、バランス型投信でも投資は怖いと思われるかもしれない。実際に一部のバランス型投信では、3月に売却される動きがあった。
しかし、このように分散投資が効かずバランス型投信が厳しい状況はリーマン・ショック時などにもみられたが、いずれも一時的な下落であった。今回も状況が落ち着くとともに、バランス型投信も再び上昇に転じる時が必ずくるはずと考えている。長期的には現預金などのまま放置するよりも、バランス型投信を保有した方が高い収益が期待できることには変わりないと思われる。
特に、足元の下落が大きかったバランス型投信ほど、リスク性資産の組み入れが大きい分、好転した時にはより高い収益が期待できる。実際にリスク性資産が総じて上昇した19年の収益率をみると、足元の下落が大きい投信ほど19年の上昇が大きかったことからもそのことが示唆される。
ただ、バランス型投信は長期保有してこそ本来の力が発揮される。つまり、どんなに高い収益が期待できても、大きく下落したことに動揺して短期で手放してしまうと、高い収益は絵にかいた餅になってしまう。そのため、分散投資の効果は常に効くとは限らないこと、足元のような相場では一時的ではあるがバランス型投信でも予想外に大きく下落してしまうことを理解した上で投資することが重要だと考えている。
そこでバランス型投信を選ぶ際には、ぜひ足元の下落を参考に「例え大きく下落しても保有し続けることができるか」と自問自答していただきたい。その上で、覚悟して本当に継続的に投資することをお薦めしたい。つまり自分が十分納得した上でバランス型投信を選ぶことを心がけていただきたい。加えて、実際に投資する際は毎月積み立てなど時間分散も行うと、より失敗しにくくなるだろう。
(前山裕亮・ニッセイ基礎研究所准主任研究員)