「ひふみ投信」はコロナ相場にどう対応するのか=藤野英人(レオス・キャピタルワークス社長)
<達人に聞く「コロナ相場の乗り越え方」>
コロナショックによる相場急落の直前に当社は現金比率を30%まで大幅に高めた。私が危ないと思ったのは、2月13日に千葉県在住で渡航歴のない20代男性の感染が発表されたこと。これから感染が世界各国で拡大し、世界経済はリーマン・ショック級の甚大な被害を受けると判断した。そこで、米国の市場が崩れないうちに現金比率を高めて危機に備えようと思った。そして2月14日から売り始めて、20日までに2000億円を売り切り、2月後半の下げ相場に間に合った。
下落相場への対応はいわば「撤退戦」だ。退却で重要なことは、逆行高しそうな「しんがり銘柄」を置くこと。そこで2月にドミノ・ピザとズーム・ビデオ・コミュニケーションズを買った。外出制限により巣ごもり消費の需要が高まると見て、この2銘柄を入れた。
3月の運用成績はマイナス2・4%で、東証株価指数(TOPIX)のマイナス6・0%を大きく上回った。これには現金比率を高めたことと銘柄選択が寄与した。銘柄選択では、市場が暴落した際に現金2000億円のうち、1000億円を使って買いに行った。その中にはNTTやKDDIなどの通信会社、テルモやシスメックスなどの医療系の会社が含まれる。これらの銘柄は現在の情勢でプラスの影響が期待できるが、コロナウイルスの影響がしばらく続くことに備えたものでもある。
現在、日本でも在宅ワークが進められているが、社員に職場と同じ環境での仕事を実現させているのはわずかで、実態は自宅待機の企業が多い。各企業が危機管理や社員のことをどう考えているかが明らかになる。現在の企業の対応を見ておくことは、今後10年の投資先の判断材料になる。
SBI傘下で事業拡大
このたび当社はSBIホールディングスの連結子会社となることが決まった。もともと当社の出資比率はISホールディングスが75%、当社経営陣が25%となっていたが、ISが株式を売却することになったという親会社の事情が大きい。そこで売却先を探した時に、SBIが最適と判断した。
SBIの傘下に入っても、当社の経営体制は変わらず、一方でSBIのインフラや販売チャンネルが使えるようになるため、いろいろなチャンスが広がる。
(構成=村田晋一郎・編集部)
■人物略歴
ふじの・ひでと
1966年富山県出身。90年野村投資顧問に入社。ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントなどを経て、2003年レオス・キャピタルワークスを創業。15年10月より現職。