ビットコインをはじめとする暗号通貨は「新たな金融商品」だ=北尾吉孝(SBIホールディングス社長)

ビットコインは決済通貨としては使われていないがグローバルに通用する。少なくともクリプトアセット(暗号資産)として世界中で保有されている。アフリカでは現地通貨よりビットコインの方が信頼できると思われる国が多く、これでトレードしたいと言う人が多くいる。この世界は必ず伸びていく。
2019年10月1日にSTO(デジタル証券による資金調達)の自主規制団体として証券6社で日本STO協会を設立し、私が協会長に就任した。デジタルアセットであれ、デジタル証券であれ、今後新たな金融商品として非常に大事な位置づけになると考えているからだ。
今まで法定通貨の世界で運用してきた投資家も新しい商品を取り入れたいと考えている。法定通貨をベースとした既存の金融商品とは違った値動きをする新たな資産にヘッジやマネーメーキングの手段を求めるようになるだろう。
資金調達面でも今までのような機動性のない形ではなく、生まれたばかりのベンチャー企業にも資金を供給できるような場が必要になる。創業初期の段階から、アクセラレーター、ベンチャーキャピタル、証券会社が一気通貫の形で企業を育てていくことが必要だ。このような支援体制を、低コストなSTOなどを活用することで構築していきたい。
SWIFTに負けない早くて安全な国際送金
SBIグループが出資している米リップル社が開発を主導する暗号資産XRPがある。これを活用することで国際送金のコストを大幅に削減し、SWIFT(国際銀行間通信協会)のネットワークを使わなくても安全に、スピーディーに国際送金ができる。利用者にとってもプラスだし金融機関にとってもフレンドリーだ。安全に、スケーラブルに、短時間でコストが安い送金が国内外でできたらこれ以上よいものはない。
ブロックチェーンの秘密兵器を開発する
当社が出資している米R3社と合弁会社を設立し、Corda(コルダ)という企業間取引を想定したブロックチェーン・プラットフォームの開発も進めている。
ビットコインの取引データはパブリックに公開されるが、コルダは取引当事者間のみでデータを共有することが可能だ。つまり取引関係者以外の秘匿性が要求される金融サービスや法人間取引に向いている特長を備えている。
サプライチェーンの構築でもコルダを使うことで、多様化した原材料の供給先を全部フォローできる。どこか一つの原料供給先に問題があったときに、すぐにブロックチェーンを使ってサプライチェーンを変えることができる。
貿易金融も数分で決済できる
貿易金融は今まで何日もかかっていたが、コルダを使えば数分で決済ができる。商社も保険会社もすべて巻き込むことになる。業務提携した三井住友フィナンシャルグループの三井住友銀行にも主力メンバーとして入ってもらう
デジタルアセットは新しい金融マーケットを生み出す。デジタル金融商品の流通も、資金調達もできる市場が形成されていく。今までの法定通貨、証券取引法、金融商品取引法の世界からぐっと広がる。金融取引はどんどん変わっていくと感じている。(構成=金山隆一・編集部)