国際・政治

「安倍さんとトランプさんがきちっとやってくれるんや」 信じ続けた横田滋さんの思い【サンデー毎日】

拉致被害者救出を求める同志社大学フォーラムで北朝鮮に拉致された横田めぐみさんが行方不明になってからの苦悩を語るめぐみさんの父滋さん=京都市上京区の同志社大学で2002年11月28日午後1時50分、大西達也撮影
拉致被害者救出を求める同志社大学フォーラムで北朝鮮に拉致された横田めぐみさんが行方不明になってからの苦悩を語るめぐみさんの父滋さん=京都市上京区の同志社大学で2002年11月28日午後1時50分、大西達也撮影

 「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」初代代表の横田滋さん( 享年87)が亡くなった。

「主人は全身全霊で(救出活動に)打ち込みました。棺ひつぎにはめぐみ(55)の写真を入れました」 

6月9日夕刻、東京都内の記者会見で妻の早紀江さん(84)はそう気丈に話した。

その前日に川崎市の教会で葬儀を済ませたばかりだった。 

神戸市長田区の自宅でテレビ中継を見守った有本明弘さん(91)は、「早紀江さん、ちょっと涙を流しとるんちゃうかな」としんみり。

有本さんの三女恵子さん(60)は英国留学を終えた1983年、日本人女性に「いい仕事がある」と騙だまされて北朝鮮に入国したまま帰国できないでいる。

「今度、早紀江さんに会うたら『もう孫と遊んでゆっくりして暮らしたらええんや』と言いたい。北海道から沖縄まで1400回も講演や署名活動した2人は、ほんまにようやってくれました。横田夫婦がいなかったら家族会もできんかったんとちゃうか」 

応接間にはいくつかの写真が飾ってあった。恵子さん、今年2月に亡くなった妻の嘉代子さん(享年94)、それに昨年5月に来日した米国のトランプ大統領と面談する有本さん。

「あなたは勝利するでしょう」とある大統領直筆のメッセージもあった。

話が恵子さんに及ぶと、有本さんはこう話した。

「(北朝鮮の工作員に)船に押し込められためぐみちゃんと違って、うちの恵子は『(英国から)帰ってこい』と説得しても聞かず、騙された。会えたら『何しとったんや。このアホ』とどやしつけてやりますよ」 

有本さんは日米の首脳が連携することで、拉致問題が解決すると信じている。

「拉致問題は安倍(晋三首相)さんとトランプさんがきちっとやってくれるんや」 

横田滋さんと有本嘉代子さんはそれぞれ日本人男性、同女性の平均年齢を超える長寿にもかかわらず愛娘を待ち続けたが、ついに再会は果たせなかった。

歳月の流れは残酷だ。 (粟野仁雄)

インタビュー

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事