国際・政治

コロナから回復した米国人男性が1億円請求された実話【サンデー毎日】

医療崩壊の危機が伝えられたクイーンズ地区のエルムハースト病院で、検査用のテントの前に立つ医療関係者=米ニューヨークで2020年4月15日、隅俊之撮影
医療崩壊の危機が伝えられたクイーンズ地区のエルムハースト病院で、検査用のテントの前に立つ医療関係者=米ニューヨークで2020年4月15日、隅俊之撮影

新型コロナウイルスに感染した米国の男性が闘病生活を終え退院したところ、約110万ドル(約1億2000万円)の請求書が届いたという。

生還したマイケル・フローさん(70)は3月4日、米ワシントン州シアトル市の郊外にある病院に入院し、62日間を過ごした。

5月5日の退院時、看護師らが見送る様子をテレビニュースは「奇跡の回復」と呼んで大きく報じた。

6月12日付の地元紙『シアトル・タイムズ』(電子版)によると、フローさんが同日に受け取ったのは181ページにも及ぶ請求書の束だった。

110万ドルの内訳は、42日間を過ごした集中治療室(ICU)の使用料が約41万ドル(1日当たり9736ドル)、29日間使った人工呼吸器は薬剤費を含め、約8万ドル(同2835ドル)など。

多臓器不全に陥り、多くの医師がかかりきりになった2日間の分は10万ドル近くだった。 

ただし、フローさんは請求額を支払わずに済むかもしれない。

米国には67歳以上の高齢者が対象の公的医療保険制度「メディケア」がある。

さらに新型コロナに関連して米政府は1000億ドルの予算を計上している。

〈結果として、フローさんは6000ドルに上る可能性もあったメディケアの自己負担分を支払わずに済むだろう〉(前出の記事) 

フローさんは入院したばかりの時、一時的に意識が戻り、妻にこう言ったという。

「退院させてくれ。わしらに払えないじゃないか」 

メディケアに加入していても、自己負担分が高くなるのを恐れたのだ。

米国では、治療を受けた人は病院から郵送される請求書を見て、保険会社に再請求する仕組み。

そのため自己負担分が最終的にいくらになるのかは、保険会社の判断を待たないと分からない。 

米国では「国民皆保険なんて社会主義的」と毛嫌いする人が少なくない。だが、新型コロナの蔓延は人々が考えを変えるきっかけとなるかもしれない。

(土方細秩子)

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