週刊エコノミスト Online2020年の経営者

企業間の取引を電子化し効率化支援 長尾收 インフォマート社長

    企業間の取引を電子化し効率化支援

     Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

    Interviewer 藤枝克治(本誌編集長) Photo 蘆田 剛 東京都港区の本社で
    Interviewer 藤枝克治(本誌編集長) Photo 蘆田 剛 東京都港区の本社で

    ── 主力製品は、企業が受発注を電子システムで行う「BtoBプラットフォーム」です。どんな仕組みですか。

    長尾 例えば、飲食業界では食材の受発注は今でもほとんどが電話かファクスです。しかし電話では説明が伝わりづらかったり、「頼んだ」「いや聞いていない」など行き違いもおきます。また、閉店後だと注文は留守番電話へのメッセージで済まされ、内容がはっきり分からないことがよくあります。さらに数十店舗を展開するチェーン店では、注文が多くて電話では対応しきれず、ファクスを送ることになりますが、用紙が切れて届かないことも起こります。煩雑な商品の受発注を電子化してインターネットで行う仕組みを提供しています。

    ── やり取りの流れは。

    長尾 当社のユーザーとその取引先の双方が、当社のプラットフォームにアクセスし、同じ画面を使ってやり取りします。食材の受発注では、売り手の卸業者が商品リストを掲載します。買い手の飲食店はそのリストから、例えば大根3本、じゃがいも10個といった具合に商品の数量を選択し、最後に発注ボタンを押せば完了です。その情報は売り手にもすぐに伝わります。

     紙でのやり取りが不要で、簡単に受発注ができるので、業務が効率化します。また、複数の店舗を持つチェーン店などでは各店舗の在庫状況や受発注の状況がすぐに把握でき、それらの情報から業務の改善点なども見えるので、経営に役立ちます。

    ── 仕組みは単純に見えます。何が優れているのですか。

    長尾 実は、機能自体は複雑ではなく、すごい技術を使っているわけでもありません。

     一方で、この仕組みを顧客とその取引先の両方に導入してもらうのが大変で、最初は使ってもらうために、営業活動に注力しました。1社が「便利そうだから使いたい」と考えても、その取引先が使ってくれなければ機能が十分に発揮できませんし、利用が広がりません。ですから、取引先を対象にした説明会を開いたり、サポート窓口を充実させました。使い始めると便利さが分かって広がっていきました。

    ── 開発した経緯は。

    長尾 最初は地方の特産品などの食材を売りたい人と、買いたい人をインターネットでマッチングする事業を始めました。その中に受発注の機能を付けたところ、飲食業界に需要があることが分かり事業を拡大。今では収益の柱になりました。現在、電子請求書なども手掛け、ユーザー数は40万社を超えています。

    コロナ禍が追い風に

    ── 電子請求書での強みは。

    長尾 請求書の発行と受け取りの両方を電子化しています。発行の仕組みを電子化していても、最後は印刷して郵送し、受け取りは紙のままという場合が多い。それでは、現在のコロナ禍でテレワークが進む中でも経理担当は出社しなければなりません。請求書については、コロナ禍が追い風となっていて、問い合わせが激増しています。

     さらに電子契約書も始めました。受発注から、請求書、契約書まで、すべて電子化できることが強みになっていると思います。

    ── 契約書はこれまでハンコの扱いが難しく、最近、ようやく電子化の流れが出てきました。

    長尾 ハンコの代わりとなる電子署名に当社も対応しています。電子署名そのものは他社と大差ありませんが、当社は「ワークフロー」というオプション機能で、会社の中の稟議(りんぎ)や決済を電子化するシステムを提供しています。社内で誰が承認したのかを確認して、電子的に署名する流れができます。

    ── 企業の売掛金を債権として買い取り、資金繰りを支援するファクタリングのサービスを始めました。

    長尾 GMOペイメントゲートウェイと組んで、「電子請求書早払い」を始めました。当社のプラットフォームで発行した請求書の売掛金を最短2営業日で現金化します。2月から運用を開始しています。

    ── 従来のファクタリングとどこが違うのですか。

    長尾 請求者の手元に、電子化された請求書があることで、入金までのスピードが従来の紙のやり取りより圧倒的に早くなります。また手数料も業界最安水準の1〜6%に抑えています。銀行から融資を受けようとすると、さまざまな審査や書類提出など手続きが面倒ですが、この早払いなら簡単です。

    ── 今、コロナで資金繰りが苦しくなっていて、利用したいユーザーはたくさんいるのでは。

    長尾 問い合わせはありますが、今はコロナ対応に追われ、システムを入れる時間的な余裕がないようです。ただ、急場をしのぎたいユーザーの支援になるので、需要はあると思います。

    (構成=村田晋一郎・編集部)(2020年の経営者)

    横顔

    Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

    A 30代はほぼニューヨークで過ごし、三井物産で法務の仕事をしていました。AOLジャパンの設立にも関わりました。

    Q 「好きな本」は

    A 子供の頃から漫画を好きでよく読みます。日本人の思考は漫画に影響されている部分が大きいと思います。他に夏目漱石やニーチェも好きです。

    Q 休日の過ごし方

    A ウオーキングを兼ねて、有名なラーメン店を巡っています。


     ■人物略歴

    ながお・おさむ

     1960年生まれ、徳島県立城南高校卒業。82年東京大学法学部卒業後、三井物産入社。法務/投資事業・M&A業務を担当。ニューヨーク駐在10年。三井物産退社後、2015年ホープ顧問、17年インフォマート入社。18年3月に代表取締役社長に就任、現在に至る。徳島県出身。60歳。


    事業内容:B to B(企業間電子商取引)プラットフォームの運営

    本社所在地:東京都港区

    設立:1998年2月

    資本金:32億1251万円

    従業員数:536人(2020年3月現在、連結)

    業績(19年12月期、連結)

     売上高:85億4000万円

     営業利益:24億6900万円

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