日銀のETF購入は「下手なナンピン素寒貧」の格言どおりとなるのか=市岡繁男
日銀のETF(上場投資信託)買いが始まったのは2010年12月からだ。黒田東彦総裁が就任した13年4月からは購入限度額が年間1兆円となり、その後も14年10月に3兆円、16年9月に6兆円、今年3月に12兆円と拡大していった。今年3月末時点のETF保有残は約31兆円にもなる。日銀はこの間、一度もETFを売却していないので、東証1部時価総額の6%弱に相当する巨大な自社株買いが行われた格好だ。
問題点を三つ指摘したい。1点目は、日銀は前場の値下がり率をみて、今日のような実体経済と乖離(かいり)した株価でも機械的に買うことだ。これだと常に簿価が上がってしまう。日銀が購入するETFはTOPIXや日経平均などに連動するが、日経平均連動型しかないとして筆者が試算すると、現在の購入簿価(13年4月以降分)は1万9400円で、この4年間で2000円も上昇した計算だ(図1)。
2点目は、簿価を割り込む度に購入限度額を引き上げてきたことだ。これは簿価を下回ったら買い増すナンピン取引に他ならず、「下手なナンピン素寒貧(すかんぴん)」という相場の格言を思い出してしまう。3点目は、売買代金に占める日銀のシェアはいま4%超もあって、その影響力が大きくなり過ぎたことだ(図2)。後場からの日銀ETF買いを当てにして指数先物相場が乱高下する状況はいかがなものか。
(市岡繁男・相場研究家)
(本誌初出 日銀の「ナンピン」取引=市岡繁男 20200714)