経済・企業非接触ビジネス

伸びる銘柄 ソフトウエア編〈42銘柄〉 テレワーク、EC、医療・教育に注目=小林大純

原則在宅勤務への移行を機に縮小される予定の「アクティベート」のフロア。100人ほどが座れる広さがあった=東京都渋谷区で2020年6月4日午後5時14分、野呂賢治撮影
原則在宅勤務への移行を機に縮小される予定の「アクティベート」のフロア。100人ほどが座れる広さがあった=東京都渋谷区で2020年6月4日午後5時14分、野呂賢治撮影

 新型コロナウイルスは「人が集まり、接触する」ことがリスクになる。そのため、人々が離れた場所から共同作業ができるデジタル技術は発展の余地が大きい。

 デジタル技術をソフトとハードに分けると、ソフト分野の非接触関連銘柄では、(1)企業活動・ビジネス系、(2)消費系、(3)医療・教育系──の3カテゴリーが注目される。

 (1)では、「新常態」として定着しつつある「テレワーク」が大きなテーマとなる。

 近年、企業の管理・会計システムは、インターネット経由の「クラウドサービス」に置き換わっているが、テレワークの普及がこうした動きを加速させている。統合業務ソフト(ERP)のオービックなど、従来のソフトウエア大手でもクラウドサービスが好調だ。

 一方で、会計ソフトのフリーやマネーフォワード、経費精算システムのラクスなどの新興勢は、初期投資が抑えられるメリットを訴求し、中小・個人事業者を中心にシェアを広げている。

 これらの新興勢は複数の機能から必要なものだけを選択して利用できるクラウドサービス、いわゆるSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)を展開し、継続課金型モデルを取っているため、収益の安定性が高い、解約率が低い、売上総利益率(粗利率)が高い、などといった理由で良い評価を受けやすい。今後も新興株市場の主力銘柄として活躍が期待される。

 また、堅いイメージの法務分野でも、最近は電子契約サービスが急速に普及している。同サービスを展開する弁護士ドットコムも注目銘柄の一つだ。

巣ごもり需要

 経済産業省の調査によれば、日本は諸外国に比べ小売りにおけるEC(電子商取引)化率が6%と低い。市場開拓余地の大きさから、コロナ禍は(2)消費系銘柄には追い風になる。

 国内EC市場は楽天と米アマゾンの2強だったが、Zホールディングス(旧ヤフー)がファッション通販のZOZO買収などで猛追。さらに対話アプリのLINEも取り込み、国内ネットサービスのプラットフォーマーとしての地位を盤石にしつつある点に注目したい。

 競争の激しいEC市場だが、出前仲介サイトの出前館、食材・ミールキット通販のオイシックス・ラ・大地などが巣ごもり消費需要を取り込み、株式市場の関心を集めた。

 オイシックスは供給が追い付かないほどに受注が急増、供給能力の増強を急ピッチで推進。2021年9月に予定される神奈川県海老名市の新出荷施設の稼働が待たれる。これらのサービスは共働きなどの昨今のライフスタイルにもマッチし、利用者がその利便性を実感したことで一時的な需要にとどまることはないと考えられる。

 さらに、ECへの取り組みは中小・個人事業者にも広がり、ネットショップ開設支援のBASEなど関連企業が恩恵を受けている。恋活や婚活の場でもオンライン化が進んでおり、ネットマーケティングのパートナーマッチングアプリ「Omiai」が人気が出そうだ。また、漫画を中心とした電子書籍の利用も増加。今後も紙媒体からの移行が進むだろう。

 (3)については、医療分野でコロナ禍をきっかけにオンライン診療に関する規制緩和が進展し、教育分野でも政府は全国の小中学生全員にIT端末を供与する「GIGAスクール構想」を前倒しで推進する。こうした政策の恩恵を受けるエムスリーやチエルなどの企業も株式市場の関心は高い。

(小林大純・フィスコ株式チーフアナリスト)

(本誌初出 伸びる銘柄 ソフトウエア編〈42銘柄〉 テレワーク、EC、医療・教育に注目=小林大純 20200714)

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