経済・企業注目の特集

ソフトバンク孫正義氏も騙された?! 独ワイヤーカードはこんなにヤバい企業だった=福田直子

破産申告したワイヤーカード社 (Bloomberg)
破産申告したワイヤーカード社 (Bloomberg)

 キャッシュレス決済サービスの独大手、ワイヤーカード社(本社:独アッシュハイム)が6月25日、ミュンヘンの裁判所に破産申請した。債務超過と不正会計監査の疑いが主な理由だという。ドイツの優良株式銘柄であるDAX(ドイツ株価指数)に選定された企業の破綻は初めて。

 倒産の最大の理由は、同社の会計から19億ユーロ(約2200億円)が「行方不明」という衝撃の事実のためで、不明額は資産の約4分の1に相当するという。破綻の直前には、同社の最高経営責任者(CEO)マルクス・ブラウン氏が検察庁に逮捕された(保釈金500万ユーロ=約6億円を支払い、保釈済み)。

 2005年から年20~36%という極めて高い成長率を誇った同社だが、以前より一部の経済専門誌が会計に不自然な点があると指摘。「実態が不透明な会社だ」と疑問を呈する報道をたびたび行っていた。英紙『フィナンシャル・タイムズ』は匿名告発者からの資料をもとに、不透明な会計監査について1年半にわたって報道。報道によりワイヤーカードの株価も影響を受けていた。

 ワイヤーカードは1999年に設立された。当初、カジノやポルノサイトの決済サービスのためのIT技術の提供が主な事業だったが、02年にブラウン氏がCEOに就任して以降、中東やアジア諸国にも進出するなど事業を精力的に拡大。企業提携や企業買収によって、表向きには世界で活躍する「グローバルプレーヤー」の仲間入りを果たしていたかのように見えていた。

監査体制も信用失墜

 ワイヤーカードの破綻は、一企業だけの問題にとどまらない。長年、監査を担ってきた会計事務所EYとドイツ連邦金融監督庁(BaFin)の信用度を失墜させ、さらには「会計警察」の役割を期待され、非金融業の審査機関として存在するDPR(ドイツ会計監査局)もその責任を問われている。欧州委員会も事態を深刻にとらえている。

 欧州証券市場監督局(ESMA)はBaFinなど、ドイツの金融監督機関の調査を始め、7月15日までに暫定的な報告書が発表される予定だ。

 ワイヤーカードの株価は最高時に比べ、破綻申請時には9割近く下落し、格付け会社のムーディーズは、「もはやワイヤーカードはレーティング(格付け)不可能」としている。

 しかし、DAXの上場企業の加盟と脱退の見直しは年1回しかしていないため、通常であれば同社の株は9月まで市場での取引が続くはずだが、異例の事態のために、例外が設けられる可能性もある。

(福田直子・独在住ジャーナリスト)

(本誌初出 独ワイヤーカード破産 ずさんな会計実態が露呈 約2200億円が行方不明=福田直子 20200714)

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