週刊エコノミスト Online2020年の経営者

クラウド資金調達で新商品開発支援 中山亮太郎 マクアケ社長

Interviewer 藤枝克治(本誌編集長) Photo 武市 公孝 東京都渋谷区の本社で
Interviewer 藤枝克治(本誌編集長) Photo 武市 公孝 東京都渋谷区の本社で

クラウド資金調達で新商品開発支援

 Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

── マクアケとはどんな会社ですか。

中山 新商品や新しいサービスの登場をインターネットで支援する事業を手掛けています。商品が完成する前に購入希望者から製造に必要な資金などをネットで募るクラウドファンディングによって、新商品をデビューさせるのです。

 従来、新商品を消費者に届けるには、先に商品を作ってから小売店の店頭など実店舗に並べるのが普通でした。ところが、新型コロナウイルスの感染拡大によって多くの実店舗が閉鎖され、オンラインへの注目が高まりました。新商品を世の中に送り出すときに、最初に選択されるプラットフォームを目指しています。

── この数カ月間で印象に残った商品やイベントは?

中山 例えば、(飲食店の口コミサイト)「食べログ」で「4・67」の高評価を得ている東京・広尾のレストランのシェフ、長谷川稔さんが作ったチーズケーキです。8078人に購入してもらい、資金調達の目標500万円に対して16倍の8048万円が集まりました。

 また、刃物の名産地の岐阜県関市産の包丁は、購入金額が目標の35倍に達しました。コロナ禍により自宅で調理する人が増えたことも影響したと思います。マクアケでの購入のことを当社では、商品が生まれた背景にある物語に共感してもらうという意味を込めて「応援購入」と呼んでいます。

── クラウドファンディングの会社はほかにも多くあります。マクアケの特徴は?

中山 クラウドファンディングには、困りごとを抱えた人がネットで募金するイメージがありました。当社は、それとは別の視点で、新商品など世の中にない新しい物がデビューする場という概念を加えて、マーケティングの要素を取り入れたことで独自のビジネスモデルを確立したと思います。

── オンライン販売なら、他のネット通販を利用するとか、自社で販売することもできます。マクアケを使うメリットとは?

中山 人々の趣味・嗜好(しこう)は多様化していて、特徴のない商品に対して消費者の財布は開きません。それでも、量販店などの店頭に置いてもらうには、ある程度の量産が必要になり、在庫を抱えるリスクが生じます。一定の在庫が必要なのはネット通販も同じです。

 マクアケでは、新商品を作る前に買いたい人から資金を募ることで、在庫と顧客獲得の二つのリスクを低減させながら、どんな商品が売れるかを事前に探ることができます。こうしたマーケティングの機能を活用して、消費者に“刺さる”商品を世の中に送り出す力になっています。

地銀・信金と提携強化

── 全国の金融機関との提携を進めています。

中山 ものづくりに強い企業は全国に散らばっています。これらの企業に効果的にアプローチできる方法を考えているうちに、「銀行だ」とひらめきました。地方銀行や信用金庫には、新商品に関する情報が集まるからです。

 同時に銀行側の課題にも気付きました。金融庁からは「事業性を判断して融資を」と求められますが、商品が売れるかどうかを判断して融資するのは極めて難しい。マクアケはそこが得意な領域なので、新商品を出そうとしている事業者を銀行から紹介してもらっています。新商品が好調という実績ができると、融資の与信枠を増やす根拠となり、銀行にもメリットがあります。提携した金融機関の数は100社を超えました。

── 事業拡大のきっかけは?

中山 ソニーが14年、電子ペーパーを使った時計をマクアケを使ってデビューさせたことがニュースになり、マクアケの事業が産業界に知られるようになりました。それだけでなく、作り手と購入者の距離が近く感じられるような工夫もしています。マクアケで開発資金を募る事業者に、事業の進捗(しんちょく)を随時サイトで報告してもらうこともその一つ。マクアケである事業者の商品を購入した人が、その事業者の別の商品を1年以内に購入するリピート率は、当初は1〜2割くらいだったのが、いまでは7割を超えています。

── 企業が研究開発した技術を利用して商品化する事業にも取り組んでいます。

中山 シャープが持つ液晶技術を日本酒造りに生かしたプロジェクトに当社が協力しました。シャープにはマイナス2度に保つ保冷バッグを作ってもらい、マクアケで過去、開発資金を募ったことがあるいくつかの酒蔵に「マイナス2度で一番おいしくなる日本酒を造ってもらえないか」と呼びかけたところ、石井酒造(埼玉県幸手市)が手を挙げてくれました。

 当社には、これから売れそうな商品を開発するうえで、ひらめきがわくデータが蓄積されています。日の目を見ないままになっている開発成果を大企業と協業して、商品開発に結びつけています。

(構成=浜田健太郎・編集部)(2020年の経営者)

横顔

Q 20代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 起業志望の学生に評判だったサイバーエージェントに入社しました。どのような事業を起こしたいのかが分からず「ビジョンなき修行僧」でした。

Q 「好きな本」は

A 『1兆ドルコーチ シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え』(エリック・シュミット著)。ジェフ・ベゾス氏(アマゾン創業者)などのコーチをしていた人物に関する本です。

Q 休日の過ごし方

A アニメ鑑賞です。SFや学園モノが好きです。


 ■人物略歴

なかやま・りょうたろう

 1982年生まれ。芝浦工業大学附属高校卒業、慶応義塾大学法学部卒業。2006年4月サイバーエージェント入社、13年5月、サイバーエージェントの出資を受けてマクアケを設立し社長に就任。埼玉県出身、38歳。


事業内容:クラウド資金調達による新商品サービス登場の支援事業など

本社所在地:東京都渋谷区

設立:2013年5月

資本金:11億1900万円

従業員数:60人(19年9月末、単独)

業績(19年9月期、単独)

 売上高:13億4400万円

 営業利益:1億2400万円

インタビュー

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

10月4日号

新制度スタート! マンション管理必勝法14 動き出した二つの評価制度 住人の意識改革が始まった ■荒木 涼子/白鳥 達哉18 よく分かる「評価制度」 高得点獲得のポイント ■荒木 涼子20 国の制度もスタート 自治体が優良管理を「認定」 ■白鳥 達哉23 迫る「第三の老い」 ここまで深刻な管理員不足 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事