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嵐・櫻井翔のパパが副社長を務める電通 「疑惑」でも株が爆上がりする理由=荻原博子【サンデー毎日】

講演する前総務事務次官の桜井俊さん=福岡市中央区で2017年6月20日、森園道子撮影
講演する前総務事務次官の桜井俊さん=福岡市中央区で2017年6月20日、森園道子撮影

経済産業省は新型コロナウイルスで収入が減った中小企業などが対象の最大200万円の「持続化給付金」に関する業務を、「サービスデザイン推進協議会」に委託しました。

広告最大手の電通や竹中平蔵元経済財政政策担当相が会長を務める人材派遣大手のパソナなどが設立した一般社団法人です。 

協議会は経産省から得た委託料769億円の97%に当たる金額で、業務を電通に再委託したことが判明しています。

電通はさらにその業務を子会社5社に再々委託しました。

協議会は業務の多くを電通に委託していることから、「丸投げだ」と指摘されています。 

一方、電通の親会社、電通グループの株価は4月6日の年初来安値(1806円、終値ベース=以下同じ)を底に上昇し、6月には一時、3100円を超えています。 

もっと顕著なのはパソナの株価。厚生労働省の集計では、新型コロナに起因する解雇や雇い止め(見込みを含む)に遭った労働者は3万1710人(7月1日現在)。

「パソナの株価もさぞ低迷しているだろう」と思いきや、3月19日の712円を底に、6月には一時2倍近い1300円台に回復しているのです。 

両社の株価はなぜ上がっているのでしょうか。

市場参加者が「政府の仕事を受託して大儲もうけできそう」と、株を買ったからでしょう。 

そんな中、電通を巡る別の疑惑が浮上しました。

経産省は6月上旬、「家賃支援給付金」に関する業務を委託する業者を決める入札をしました。その直前、電通のある社員が、持続化給付金事業で下請け関係にある大手イベント会社に「入札に参加する予定にしている(電通のライバル会社)博報堂に協力しないように」といった趣旨の発言をしたというのです。

結果として博報堂は落札しませんでした。 

政府は電通やパソナに給付金事業を委託しなくても、日本商工会議所(日商)などの地域に密着し、商業を把握した組織に頼む手があります。

新型コロナで疲弊する地域経済を活性化させるのには、打って付けのはずです。 

日商は中小企業の活力強化や地域経済の活性化などを目的とし、全国515の商工会議所を会員としています。地域のことをよくわかっている組織といえます。 

政府が給付金事業を委託する相手として日商だけでは大変というなら、日本青年会議所を窓口とする手もあります。20〜40歳の熱意ある若手の団体で、国内692地域で活動しています。 

一方、電通などの企業は政府の事業を受託しても、自社で作業をせず、子会社や孫会社に再委託して、そこがパート労働者を雇ってマニュアルどおりに作業をしているのです。

だとしたら、官庁がきちんとしたマニュアルさえ作れば、どんな組織が請け負っても作業は同じ。企業より商工会議所のほうが透明性が高い上、地域でパート労働者を雇えばお金が地域で使われて活性化につながります。 

なぜそうしないのか。霞が関の官僚は商工会議所のような組織に天下りしにくく、事業を委託するうまみが少ないのかもしれません。

そういえば、アイドルグループ「嵐」のメンバーを長男にもつことが知られる櫻井俊元総務事務次官は、退官後に電通に天下って、今は同社代表取締役副社長です。 

オリンピックがダメでも新型コロナで儲ける。国難の時にこのしたたかさに腹が立つ!

おぎわら・ひろこ 1954年、長野県生まれ。経済ジャーナリスト。難しい経済と

複雑なお金の仕組みを、テレビ、雑誌、新聞で分かりやすく解説することに定評がある

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