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岩田健太郎氏はなぜ「コロナ後にいじめが減る」と予想するのか 【サンデー毎日】

クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に乗船した感染症対策に詳しい神戸大医学部の岩田健太郎教授にテレビ電話で質問する野党の国対幹部たち=国会内で2020年2月19日午後0時33分、川田雅浩撮影
クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に乗船した感染症対策に詳しい神戸大医学部の岩田健太郎教授にテレビ電話で質問する野党の国対幹部たち=国会内で2020年2月19日午後0時33分、川田雅浩撮影

『ぼくが見つけたいじめを克服する方法』 岩田健太郎著(光文社新書/880円)

今年3月、新型コロナウイルスの感染が広がっているクルーズ船ダイヤモンドプリンセス号に一時乗船し、その現状を動画サイトで報告した岩田健太郎さんが、本書ではいじめをテーマに取り上げた。

副題に「日本の空気、体質を変える」とうたい、いじめは子どもだけの問題ではないと語る。

日本自体がかなりの〝いじめ社会〞であり、根底には同調圧力があるという。

それは構造的なもので、改善は難しいのだろうか。

「そんなことはないと思います。同調圧力は軍国主義、いや明治維新かもしれませんが、その時代から戦後の高度成長期に至るまで、みんなで一致団結しないと社会が成り立たなかった状況の中で咲いた、あだ花みたいなものです。でも今は、そんな必要はない。ポストコロナの社会は、みんなで一緒に行動すること自体が感染リスクを増すことになるわけで、同調圧力はむしろ弊害なんです」 

その例として、オンライン授業を挙げる。

「オンライン授業が取りざたされた時に、とっとと導入すべきだったんです。でも『ネットにつながらない家庭はどうするんだ』という話が出てきて、停滞してしまった。そういう家庭の子は学校に行けばいい。休校中も共働きの家の子などは学校が預かってましたし、うちの子どもたちも学校に行ってましたよ。だからオンライン授業が受けられる子は家で、繫がらない子は学校に行けば、みんなが勉強できて、ソーシャルディスタンスも確保できたんです。ところが『みんなが一緒じゃないとダメ』という同調圧力のせいで、誰も授業が受けられない期間ができてしまった。同調圧力は『誰かが得するくらいなら、みんなで損した方がマシ』っていう、非常に非生産的な考え方をしてしまうんです」 

2016年の熊本地震の際、感染症対策で現地の避難所に入った時も同様の経験をした。

避難民の一部をホテルに移すよう提案したところ、不公平が生まれると却下された。

避難所にもゆとりができて少なからず快適になり、ソーシャルディスタンスも改善されるというのに。

ここでも「みんなで損する」方向に舵かじが取られた。なぜ同調圧力を捨てられないのか。

「何も考えてないからですよ。捨てられないと決めつけて、そこで思考停止してしまった。それは、大多数の人が、同調圧力に甘んじていた方が楽だから。常に損するのは少数派です。同調圧力は少数切り捨ての論理ですから」 

しかし、将来については、やや楽観的でいられるという。

そしてコロナ禍による、テレワークやオンライン授業の普及にも期待する。

「本にも書きましたが、同調圧力に屈しない若い人たちも出てきています。ネットを利用した働き方や授業には、同調圧力の軽減効果が期待できる。選択肢は多い方がいい。引きこもりなどで学校に行けない子がオンライン授業で勉強できるって素晴らしいことなんですよ。勉強と学校に行くことは別。違いを受け入れることさえできれば、みんなが得するということを知ってほしいですね」

(構成・小出和明 )

いわた・けんたろう 1971年、島根県生まれ。神戸大学病院感染症内科教授・診療科長。著書に『1秒もムダに生きない』『「感染症パニック」を防げ!』『ワクチンは怖くない』『「患者様」が医療を壊す』など

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