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経済・企業 2020年後半 日本・世界経済大展望

米国 挽回消費で足元は急回復 コロナ前超えは22年以降=丸山義正

現金給付などの支援策で米小売売上高は回復している(Bloomberg)
現金給付などの支援策で米小売売上高は回復している(Bloomberg)

 コロナ禍に伴い未曽有の落ち込みを示した米国経済だが、5月から正常化が進む。企業景況感を示すISM製造業指数は4月に41・5まで低下したが、5月に43・1、6月に52・6へ上昇、中立の50を超えた。急回復だ。(2020年後半 経済大展望)

 急回復の要因は二つ、政策支援と挽回需要である。3月27日にコロナウイルス支援・救済・経済安全保障法(CARES法)が成立し、給与保護プログラム(PPP)による雇用保全や成人に対する最大1200ドルの現金給付が講じられた。失業率は4月に14・7%に跳ね上がったが、経済再開とPPPが相まって、6月に11・1%へ急速に低下した。現金給付が一時的とはいえ家計の懐を潤し、挽回消費の下地を作った。小売売上高はコロナ禍前の2019年10~12月期対比で4月に21・4%減も、挽回消費で6月に0・2%減まで回復している。

 コロナ禍に伴い米国経済は4~6月期に深刻な落ち込みを余儀なくされた後、7~9月期に急回復を呈しそうだ。筆者は成長率を4~6月期に前期比年率マイナス38・9%、7~9月期にプラス18・2%と見込む。暦年ベースの成長率想定は、20年が前年比マイナス5・9%、21年はプラス4・6%、22年は同2・1%である。21年は高成長を見込むが、発射台が切り下がったが故だ。挽回消費に支えられる20年後半こそ短期のV字回復を示すも、GDP(国内総生産)水準がコロナ禍前に復する時期は早くとも22年終盤だろう。

追加の財政出動は不可避

 7~9月期にV字回復の様相を呈する米国経済だが、コロナ禍で受けた傷は深い。追加の財政拡張が不可避だ。政府はCARES法を軸に既に総額3兆ドルの対策を講じたが、7月末から8月にかけて新たに1兆ドル超の対策を取りまとめる可能性がある。財政拡張のみならず、金融緩和も続く。中央銀行の連邦準備制度(Fed)は3月に政策金利をゼロまで引き下げたのみならず、国債などの資産買い入れと金融機関や企業、地方自治体に対する資金供給を実施中だ。利上げ検討は、早くとも経済がコロナ禍前に復帰後の23年だろう。市場向けの資金供給が一巡し、金融緩和のメルクマールであるFedの総資産規模は7兆ドル程度で膠着(こうちゃく)している。しかし、資産買い入れの継続により20年末に8・5兆ドル、21年末に10兆ドルへ膨らもう。

 成長に対する最大のリスクは感染拡大の第2波だ。南部や西部を中心に感染が再拡大し、経済再開を止める州が相次ぐ。再度ロックダウン(都市封鎖)に至れば、10~12月期での回復頓挫やW字軌道への転換も視野に入れざるを得ない。21年の成長率が大きく切り下がろう。加えて、11月の大統領選挙が政治的な不確実性をもたらす。人種問題を契機にメインシナリオはトランプ再選からバイデン勝利へ転じた。20年後半は感染拡大第2波と共に大統領選挙を巡る思惑が米国経済を圧迫しうる。

(丸山義正・SMBC日興証券チーフマーケットエコノミスト)

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