ソフトバンク傘下のWeworkにも大打撃? 「渋谷で3割が空室」シェアオフィスのニーズがコロナで激減している……
「景気が落ち込むと、最初にシェアオフィスの需要が減る」。ニッセイ基礎研究所の吉田資主任研究員はこう分析する。都心を中心に需要が広がっていたシェアオフィスの空室率が上昇しているのだ(図1)。
スタートアップ企業が多い渋谷区の空室率は、3割を超える。新型コロナウイルスの感染拡大に加えて、オフィス回帰の働き方が一部でみられることが足元で打撃となっている。楽天カードは3月に本社を千代田区麹町のシェアオフィスから楽天クリムゾンハウス青山に移転した。
不動産テックのestieが4月から開始したシェアオフィスの稼働調査動向では、渋谷区と千代田区で空室率が大幅に上昇した。
同社の平井瑛社長は「新興企業のオフィス需要減少の影響に加えて、大手企業でも必然性のない固定費を減らすため、本社以外の事務所経費の圧縮に取り組む動きが出ている」と、指摘する。
渋谷区は、米グーグルやサイバーエージェントなど大手IT企業の事業拠点の集積地だ。しかし、シェアオフィス大手の米ウィーカンパニーの経営悪化や、スマートフォン決済のオリガミの身売りなど、業界の先行き不安が出ていた矢先、「今回のコロナショックで不特定多数の人間が集まるオフィスから一時的に距離を置きたいという見方が出るのは納得できる」(不動産調査関係者)という。
後戻りしない在宅勤務
ザイマックス不動産総合研究所が6月に全国1795社に行ったアンケートからは、在宅勤務が難しい部分も浮かび上がった。9割以上が在宅勤務を導入したと回答した一方、在宅勤務の課題について、1位が「在宅勤務ではできない業務がある」(77・3%)、2位が「ペーパーレス対応が不十分」(45・9%)だった。(図2)
日本生産性本部が20歳以上の就業者を対象に実施したテレワーク調査では、7月上旬時点で実施率は20・2%と、緊急事態宣言下の5月調査時(31・5%)から低下し、活動自粛の解除によるオフィス回帰が示されている。
だが、テレワーク導入の動きが後戻りし、完全になくなる可能性はない。ニッセイ基礎研究所の吉田氏は「都心のシェアオフィスは需要は後退するが、住宅に近い郊外は企業のリスク分散の観点や値段の安さで需要の伸びが予想される」と、みている。
(桑子かつ代・編集部)
(本誌初出 シェアオフィス 渋谷区で空室率3割 新興企業の需要急減=桑子かつ代)