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経済・企業 コロナ激変 不動産

アパグループの元谷外志雄代表も危惧する、ホテル業界を襲うコロナ危機の深刻さ

「今期(2020年11月期)は下手したら、赤字の可能性も……」(コロナ激変 不動産)

 この10年間で東京都内を中心に68のホテルをオープンさせたアパグループの元谷外志雄代表が、長期化するコロナ禍に危機感を強める。

 世界を覆う未曽有の危機で、昨年まで好調だったインバウンド(訪日客)は“蒸発”、国内でも移動が制限され、ホテル業界は大きなダメージを受けている。期待された東京五輪も1年延期され、開業時期を見通せないホテルも出てきた。

訪日客は99・9%減

「開業時期は、現段階では全く未定となっています」

 当初、今夏に開業を予定していた都心部のホテル関係者は困惑気味に答える。

 いま都内では、コロナの感染拡大にともない、ホテルなどの宿泊施設の開業延期が相次いでいる。今年は、東京五輪の開催に合わせて、インバウンドや地方からの旅行者を見込んだホテルの開業が多く予定されていた。そんな“ホテル開業ラッシュ”を、コロナが直撃した格好だ。

 三井不動産が開発を手掛けた高級ホテル「フォーシーズンズホテル東京大手町」(当初開業予定は7月)や、森トラストが誘致し、日本初上陸となるラグジュアリーホテル「東京エディション虎ノ門」(同6月)などの外資系の高級ホテルは、それぞれ開業を9月に延期した。

 前述のアパグループも、当初4月24日に予定していた「アパホテル&リゾート〈両国駅タワー〉」の開業を延期し、新型コロナの感染軽症者の受け入れ施設とした(同施設は8月7日に開業)。

アロフト東京銀座は開業を4月から10月に延期した
アロフト東京銀座は開業を4月から10月に延期した

 本誌の独自調査によると、今年開業の主なホテル40施設のうち、開業予定日を延期したホテルは実に30施設に上った。うち4施設は、8月17日時点で開業日が未定となっている(表1)。

 これまで東京は、各国と比較して高級ホテルの数が少ないとされてきた。そこで政府は19年に、インバウンドの受け入れ拡大に向け、財政投融資などを活用した高級ホテルの建設を後押しする方針を打ち出した。

 ところが、コロナの感染拡大により、インバウンドは激減。日本政府観光局によると、6月の訪日旅行者は前年同月比で99・9%まで減少した。このため、五輪およびその後のインバウンド需要を織り込んで開業を決めていたホテルの多くが現在、難しいかじ取りを強いられている。

6月倒産件数は前年比8倍

 三菱UFJ信託銀行不動産コンサルティング部の大溝日出夫フェローリサーチヘッドは、「ラグジュアリーホテルは、インバウンドがいなくなると、影響が大きい。高級ホテルの撤退など現段階で具体的な話は、まだ聞こえてこないが、ホテル建物をオーナーから借りて実際に運営するオペレーター側は、開店休業状態が長引き賃料が払えなくなった場合、撤退ということも可能性としてある」と話す。

 足元では、中小規模のホテルのオペレーターの交代や、合併などの話が出始めている。東京商工リサーチの調べによると、新型コロナの最初の感染拡大期となった3〜6月は、宿泊業の倒産件数がいずれも前年同月を上回った。今年6月の倒産件数は、前年同月比8倍増の16件で、うち「新型コロナ関連の倒産」は6件だった(表2)。

 全国で14ホテルを展開する「the bホテルズ」は、新型コロナの影響で浅草店など4ホテルを閉館。もともと浅草店は、インバウンド利用の比率が9割弱と高かったため、コロナ禍で経営が厳しくなり、4月30日に閉館した。現在、営業しているホテルの稼働率は、30~70%とさまざまだが、インバウンド需要が多かったホテルは依然として低い数字が続く。

 the bホテルズオペレーション本部の八木貴博マネージングディレクターは、「4~5月に底を打ったという感覚。緊急事態宣言解除後はビジネス客を中心に回復基調にあるが、今後も波がある状態は続くだろう」と語る。同社は、従業員の雇用を守るため、これまで外部委託していた朝食の供給を、一部ホテルでは自社で提供することに決めたという。

 現時点では、政府が支給する雇用調整助成金の特例措置は9月末までで、家賃支援給付金は来年1月15日までが申請期限となっている。その後の生き残りは、ホテル各社の体力に左右されるだろう。資金繰りに行き詰まったホテルの倒産が、今後も増加していく公算は小さくない。

淘汰は必至

 岡三証券の高田創エグゼクティブエコノミストは、ホテル業界で淘汰(とうた)が進む可能性を指摘する。

「ホテル・旅館業界には、零細企業も多いので、そういった企業は淘汰される動きはあるかもしれない。(今後)普段なら売りに出てこない物件が出てくる可能性もある」と話す。

 また、東京商工リサーチ情報本部の原田三寛部長は「もともとインバウンドや東京五輪に向けたホテル建設ラッシュで、五輪後の供給過剰が警戒されていた。仮にコロナが発生していなくても、五輪後は淘汰を余儀なくされた。コロナによって、より厳しい局面を迎えることになるだろう」と指摘する。

(斎藤信世・編集部)

(本誌初出 コロナ直撃 ホテル開業ラッシュが一変 「開業は未定」の悲鳴=斎藤信世 

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