経済・企業コロナ時代 ものづくり成長企業

擦り合わせで一日の長 ニッチ市場で世界を取る=村田晋一郎

自動車産業は擦り合わせの代表例 (Bloomberg)
自動車産業は擦り合わせの代表例 (Bloomberg)

 <コロナ時代のものづくり成長企業>

 世界経済を直撃した新型コロナウイルス。その影響を直接反映する2020年4~6月期の企業業績。大多数の企業が業績を大幅に悪化させた陰で、好決算を打ち出した日本のものづくり企業がある。(コロナ時代の成長企業)

 半導体製造装置を手掛けるレーザーテックは売上高が前年同期比132・8%増、東京エレクトロンは同45・5%増と好調。電子部品向けの自動製造装置が主力のFUJIも同23%増など、過去最悪の決算も多かった製造業にあって際立つ強さを見せた(表)。

詳しくはこちら

 株価も上がっている。化学企業では半導体用材料を手掛ける東洋合成工業、工作機械ではダイフクやSMCなど、年初来からの株価を見ると、コロナ禍が深刻化した3月に一時下落したものの、その後は上昇基調に乗り、日経平均株価を大きく上回る水準で推移している(図)。

 コロナ時代でも高成長を維持しているものづくり企業の特徴として、テレワークや“巣ごもり”による通信需要の拡大を受けて活況を呈す半導体や電子デバイスに関連するケースが多い。それに加えて技術の「擦り合わせ」に強みを持っている点が挙げられるだろう。既製部材を組み合わせるデジタル家電では韓国や中国にシェアを奪われた日本企業だが、素材や装置を細かく調整して製品にする擦り合わせの領域は、いまも一日の長がある。工作機械や精密機器、半導体製造装置、高機能電子材料などでは、世界的に競争力のある日本企業が多い。

 期待できるのが大企業が進出していない隙間(すきま)(ニッチ)市場で圧倒的なシェアを持つ「グローバルニッチ企業」。レーザーテックは半導体の微細かつ複雑な回路パターンをウエハーに転写する際の原版となる材料「マスクブランクス」のEUV(極端紫外線)向け検査装置で世界シェア100%だ。

 国内の製造業を見ると、各分野で、レーザーテックのようになる潜在力を秘めた企業は多い。日本のものづくり企業が世界で勝ち残る可能性は十分にある。

(村田晋一郎・編集部)

インタビュー

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事