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注目企業1 半導体製造装置 東エレク、スクリン、ディスコ 設備投資増強の追い風=武野泰彦

米アプライドマテリアルズの開発拠点(Bloomberg)
米アプライドマテリアルズの開発拠点(Bloomberg)

 半導体市場に合わせて半導体製造装置市場も成長してきた。世界半導体製造装置市場の1988年からの推移(グローバルネット〈GNC〉推定)をたどると、2000年までは右肩上がりで成長。00年の市場は4兆9788億円となり、ここが一つのピークとなった。08年にリーマン・ショックが起こり、09年の同市場は00年比70%減の1兆4553億円となったが、その後、インターネットやスマートフォンが半導体市場をけん引し、製造装置市場も順調に拡大してきた。17年には00年のピークを上回る6兆3059億円、続く18年は前年比9・5%増の6兆9053億円と、新たな成長ラインに乗り始めた。(コロナ時代の成長企業)

 19年は米トランプ政権が、米国製の半導体製造装置を使った米国外での半導体チップの生産に米商務省の許可を必要とするなど取引を制限した影響で、前年比13・5%減の5兆9785億円となった。しかし、20年はコロナ禍でも半導体工場の設備投資は進んでおり、前年比5%増の6兆2775億円、21年は同14%増の7兆1563億円をGNCでは予測している。

各工程で日本の存在感

 半導体の製造工程はウエハー基板上に回路を形成する「前工程」と、回路をチップにパッケージする「後工程」があり、各工程でさまざまな製造装置が用いられる。前工程は大別すると、成膜、パターン転写、エッチングの三つの工程を繰り返す。

 まずウエハー上にさまざまな膜を成膜する際には、イオン注入装置、成膜装置、縦型炉、ALD装置、スパッタ装置、Cuめっき装置などが用いられる。次にウエハー上に回路パターンを転写する際には、フォトレジストを塗布するコーター&デベロッパーや、パターンを転写する露光装置が用いられる。そして、描かれた回路パターンに沿って加工して回路にしていくが、ここでは膜を削るエッチング装置や平坦(へいたん)に整えるCMP装置が用いられる。また、工程の合間には洗浄や検査を行うため、洗浄装置や検査装置が用いられる。

 19年の半導体製造装置企業のトップランキング(GNC推定)では、最先端のEUV(極端紫外線)露光装置を唯一販売している蘭ASMLがトップとなった。2位は成膜やイオン注入、CMPなどの前工程装置に強い米アプライドマテリアルズ(AMAT)、3位はCuめっきやドライエッチング装置に強い米ラムリサーチで、上位は欧米メーカーに占められている。

 日本メーカーは4位の東京エレクトロン(東エレク)がコーター&デベロッパー、縦型炉、絶縁膜エッチング装置でトップシェアを維持している。5位は洗浄装置分野において世界トップのSCREENホールディングス(スクリン)となった。

 また、最先端の露光装置ではないがi線露光装置分野でトップシェアのキヤノンが8位に入っている。ただしカーエレクトロニクスやコンシューマーで用いられる分野では苦戦している。

 10位のKOKUSAI ELECTRIC(旧日立国際電気)は、元は日立製作所の子会社で、縦型炉やALD装置に強い。AMATに買収される方向だが、中国の承認が下りていないため現状は米ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツが大株主のままである。

 CMP装置市場をAMATと寡占している荏原は総合研究所を廃止し、大学や研究機関と共同研究を行い外部で研究者を育て、ビジネスにつなげるユニークな開発体制を構築している。16年度から20年度の営業利益合計を10~14年度の研究開発費合計で割った研究開発投資効率は、荏原は6・3で、AMATの2・39、東エレクの2・93を上回っており、効率の良い開発を行っている。

 後工程では、ウエハーからチップに切り落とすダイシングソーではトップのディスコが12位、半導体工場の工程間搬送システムのトップのダイフクが14位、ゲートエッチングに強い日立ハイテクが15位となっている。

今後のカギは「後工程」

 新技術の登場は製造装置メーカーにとっても成長のチャンスとなる。半導体チップ内で微細化して性能を上げていく「ムーアの法則」のモデルは10ナノメートル以下のプロセスになると、EUV露光装置以降の限界が見え始めている。EUV露光による歩留まり向上も難しいため、小さいチップに機能を分けてチップを集積するSiP(システムインパッケージ)技術開発が進んでいる。

 SiPの中で、異種のチップを積層する3D方式はさらに集積度を高めることができ、需要が高まっている。この分野では新しい設備が必要になり、有機基板用のi線ステッパー装置、スパッタ装置、深掘りのエッチング装置、樹脂封止装置、樹脂塗布装置、接合装置、めっき装置、大型基板用CMP装置などの新しい市場が登場している。

 また、米アップルの「iPhone」からも新市場が生まれる。アップルは軽薄短小の制約の中で機能向上を達成するため、「iPhone7」 のアプリケーションプロセッサー「A10」に新実装技術「InFO」を採用した。これにより、前工程のような露光装置、再配線技術が必要になり、樹脂封止装置のアピックヤマダ、TOWAが売り上げを伸ばしている。また、銅配線用スパッタ装置では米SPTSやアルバック、露光装置ではキヤノンやスクリン、オーク製作所などが参入し、成長が期待できる。

 デジタルトランスフォーメーション時代に入り、半導体はあらゆる分野で必要になる。今後は半導体製造装置市場も新しい成長軌道に乗り、中国も巻き込んでシェア争いが激化していくと予想される。

(武野泰彦・グローバルネット代表取締役)

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