経済・企業コロナ時代 ものづくり成長企業

「コロナでもトヨタはセーフだが日産は……」系列の強さを調べた結果見えてきた、大手自動車の「ほんとうの実力」

    日立オートモティブシステムズとホンダ系部品3社の統合は業界再編のさきがけ
    日立オートモティブシステムズとホンダ系部品3社の統合は業界再編のさきがけ

     今年7月、車載エアコン用コンプレッサー大手のサンデンホールディングス(HD)が、新型コロナウイルス禍による欧州での需要激減により業績が悪化し、事業再生ADRを申請した。現在パートナー探しをしながら、リストラを始めたばかりである。

     この4〜6月期の決算では多くの自動車関連企業が赤字に転落、今通期でも大幅な業績悪化が避けられない。今上期の業績があまりに弱いために、キャッシュフローも大幅に悪化、多くが減配・合理化・リストラに追い込まれている。それでも系列に属する部品会社では、親会社の金融支援を仰げる企業が多いのだが、ことサンデンHDのような独立系に関してはその限りではない。

     コロナで激減した世界の新車需要がコロナ前の水準に戻るには少なくとも2〜3年は必要。つまり、今後数年間は、回復局面にある中国など一部を除いて、業績の回復度は非常に緩慢であろう。自動車メーカーは、収益の回復を目指そうとすれば、一層の合理化は避けられない。

    合理化の実態は値引き

     合理化の実態は部品会社への「値引き要求」である。毎半年ごとに、0・5〜2%、場合によっては緊急避難的に5%などという値引き要求が自動車会社から部品会社に課せられる。

     自動車会社が調達先を選ぶ際の必須項目は、品質・性能・コスト・供給能力などとともに「提案力」があるかどうかが決め手になる。提案力とは、軽量化やコスト低減、新技術を開発し性能・付加価値で従来部品を上回る策をひねり出し、実行する力である。この提案力により10%の生産性向上を達成できれば、その半分を自動車会社が「値引き協力」という形で取り、残り半分を部品会社が社内に蓄積できるというわけである。

     面白いことに、この4〜6月で黒字だったトヨタ自動車と韓国の現代自動車は、共に強い系列部品メーカーを傘下に持つ企業、反対に、赤字転落した多くの企業は、その系列が弱体化している自動車会社である(表1)。

     日産自動車、ホンダ、マツダなどは、大幅な赤字に転落、今通期だけでなく来期も、自動車部門のみで黒字が達成できるか心もとない状況だが、これら収益性が悪化している自動車会社の共通点は、部品の系列破壊を試み値引きや大量発注に傾注し過ぎたことで、お互いの長期的な信頼関係までも破壊し、部品会社からの提案力を受けることができなくなったか、あるいは元々損益分岐点が高い小規模な地元企業を多く抱え、技術力・提案力・資金力が不十分なサプライヤーを多く抱えているかであろう。

     仮にこのような部品会社群で囲まれ、長らく収益が低迷している自動車会社があれば、それは自動車会社にとっても、部品会社にとっても、今後激烈な競争を生き延びることが難しくなる。

     生き残る道があるとすれば、さらなる業界再編が一つのオプションであることは間違いあるまい。自動車部品業界では、新型コロナの感染以前から既に業界再編が始まっている。この足元3年内でも表2に挙げたように再編が加速している。

     現状を打開する再編の一つが、日立製作所の子会社によるホンダ系部品3社の買収のような、将来、自動車分野をメインの「キャッシュ・カウ」(安定した利益が上がる事業)にしたい企業、例えばエレクトロニクス・機械・化学・再生ファンドなど、非自動車企業による自動車部品企業の買収・出資といったケースである。

     この場合、日系・外資に関係なくM&Aによる再編とも言える。自動車メーカー主導による系列内企業の合従連衡も継続されるかもしれない。従来のハードを中心としたビジネスモデルから今後はよりソフトウエアを中心としたモデルに移行する可能性が高い自動車業界では、IT関連企業や通信・サービス関連の企業が、手元資金の枯渇した自動車部品企業を買収する局面もあるかもしれない。

    (遠藤功治・SBI証券企業調査部長)

    (本誌初出 自動車部品に合理化の波 現状打破へ業界再編=遠藤功治 20200908)

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