経済・企業2020年の経営者

「消費が低迷する今こそもっとマーケティングをやるべき」 カード会社が考えるアフターコロナの消費社会で勝つための戦略

    Interviewer 藤枝 克治(本誌編集長) Photo 武市 公孝 東京都千代田区で
    Interviewer 藤枝 克治(本誌編集長) Photo 武市 公孝 東京都千代田区で

    「非接触」「キャッシュレス」がカギ

     Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

    ── 新型コロナウイルスの影響で2021年3月期第1四半期(20年4~6月)の決算は、経常利益が前年同期比19%減の50億円、純利益が同12%減の39億円でした。

    飯盛 5月に消費の落ち込みが深刻化しましたが、緊急事態宣言の解除後は上向きました。6月だけ見ればカード決済事業は前年同期比で4%増。オートローン(自動車購入の際の分割払い)も5月の同25%減から6月は同3%減まで縮小しました。

    ── 世の中の変化をどう感じていますか。

    飯盛 生活に必要な消費は強いことです。大手スーパーと提携したカードのショッピングの取扱高は、コロナ禍で前年比2割増、家賃保証事業も10%台の増加率です。食・住は人間の生活に欠かせず、こうした消費に対して、どう利便性を高めていくかを考えなくてはいけません。

    ── 主力事業のクレジットカードや融資事業の戦略をどう描いていますか。

    飯盛 カードの機能は決済だけではなく、リボルビング・ローン(毎月一定額を返済する借り入れ)やキャッシングがあります。カードの利用者を増やすには、宣伝費も含めて1枚当たり高いコストがかかります。ですから、カード保有者を単に増やせばいいというものではありません。

     実際に収益が上がるのはキャッシングやリボなどです。大事なポイントは、個人信用に対する審査と融資の回収です。そこが当社は圧倒的に強い。カードの利用者はポイント還元率を高くすれば集まりますが、それではもうかりません。当社の強みである与信判断能力と回収能力を生かして、みなさんにどう使ってもらうかがカギを握ると思います。

    ── そのための戦略は。

    飯盛 正直、マーケティングをもっとやるべきです。「巣ごもり」で消費が減るとキャッシングもせず、ローンも借りてくれません。顧客の属性やどんな場面で使うかをデータで分析する必要があり、利用頻度の高い顧客には、金利を柔軟に変更することが必要です。

    ── 大株主のみずほ銀行傘下にはカード会社の「ユーシーカード」があります。どう違いを出しますか。また合併は考えませんか。

    飯盛 我々が明確に(ユーシーと)違うのは、信販会社で審査などに強みがあることです。我々の企業価値が下がればみずほにとってもマイナス。みずほも企業価値を向上させるために、必要に応じてどちらと何をするかを考えると思います。また、我々は上場企業であり、企業価値の極大化が私に課せられた使命。手を組むこと自体が目的の提携やM&A(企業の合併・買収)には意味がありません。

    時代の波乗る家賃保証

    ── 家賃決済保証の事業が伸びているそうですね。

    飯盛 家賃保証とは、賃貸物件の入居契約時に保証会社が「連帯保証人」となることで、借り手は部屋を借りやすく、貸手は家賃延納リスクを軽減することができる仕組みです。貸手の中には、住戸にどんな人が入居するか分からず、家賃がきちんと払われるか不安だという人がいます。また、日本では少子高齢化が進み、子どもが家を借りるとき、親が年金生活で支払い能力に不安があり、保証人が見つからないケースがあります。貸手、借り手双方にメリットがあり、時代にマッチしたサービスのため、今後伸びていくと思います。

    ── コロナで業績予想を未定とする企業が多い中、21年3月期連結の営業収益は前期比1・9%減、純利益は同17・7%減の計画を公表しました。

    飯盛 21年3月期の業績予想を出すか悩みましたが、経営の根幹は数値やスケジュールを示すことだと思っており、今年4月に就任した新社長としてきちんと計画を示したいと思いました。

    ── コロナ禍で見えてきたことはありますか。

    飯盛 キャッシュレスの普及です。これまでは日本ではキャッシュレスは簡単に進まないと考えていました。理由の一つは現金の信頼性が高いこと。もう一つは、この狭い国土にATM(現金自動受払機)がたくさんあり、簡単に現金を引き出せることです。

     ところが、今は誰が触ったか分からない紙幣を、新札に替えたいという高齢者が増えています。「非接触」がこれからのキーワードで、当社のクレジットカードの6割弱には非接触のICチップが入っています。

    ── みずほ銀行の常務執行役員から、みずほ信託銀行の社長を経ての社長就任です。

    飯盛 信託銀行の社長になったら、その後は、会長、顧問になって会社員人生を終えるのが普通かもしれません。しかし、成長分野で新しい挑戦ができることは面白いですし、やりがいがあります。世の中の目まぐるしい変化に、柔軟にスピーディーに対応することを求められていると感じています。

    (構成=柳沢亮・編集部)

    (本誌初出 「非接触」「キャッシュレス」がカギ 飯盛徹夫 オリエントコーポレーション社長 20200922)

    横顔

    Q これまでの仕事でピンチだったことは

    A みずほフィナンシャルグループの経営企画部長として対応した2011年の大規模システム障害です。当時は事態をいかに収拾するか、だけでした。

    Q 「好きな本」は

    A 小学5年生の時に読んだ吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』です。

    Q 休日の過ごし方

    A 散歩や書店巡り。時々、美術館巡り。コロナ禍では定額制の動画配信サービスを視聴していました。


     ■人物略歴

    飯盛徹夫 いいもり・てつお

     1960年生まれ。湘南高校、慶応義塾大学経済学部卒業後、84年富士銀行(現みずほ銀行)入行。2011年みずほフィナンシャルグループ執行役員経営企画部長、17年みずほ信託銀行社長を経て20年4月から現職。東京都出身。60歳。


    事業内容:カード・融資、決済・保証、個品割賦、銀行保証

    本社所在地:東京都千代田区

    創業:1954年

    資本金:1500億円

    従業員数:4652人(2020年3月現在、連結)

    業績(20年3月期、連結)

     営業収益:2431億3500万円

     営業利益:244億3900万円

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