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「世界対比で2カ月以上」日本経済の回復はなぜこんなにも遅れているのか……経営者がコロナの脅威を過剰に恐れてず判断ミスをしている?

    コロナ対策で「御用車」のトラックに載せられ浅草・雷門の前を巡行する三社祭のみこし=東京都台東区で2020年10月18日午後2時37分、滝川大貴撮影
    コロナ対策で「御用車」のトラックに載せられ浅草・雷門の前を巡行する三社祭のみこし=東京都台東区で2020年10月18日午後2時37分、滝川大貴撮影

    だが、高止まりは諸外国でも多かれ少なかれ見られており、今ではそれを前提に、生活や経済を折り合わせていくスキルが強く求められているということだ。

    8月4日号の当欄で、主要国の鉱工業生産指数の直近1年間の推移のグラフを基に、現在の日本経済の立ち位置を説明した。

    いわば世界経済における、日本経済の成績表である。今回新たに3カ月分のデータを加え、グラフを更新した。

    残念ながら現在では日本の立ち位置は更に後退している。

    インド、南アにも抜かれ

    前回のグラフでは、防疫に失敗して日本よりもはるかに下にいたインド、メキシコ、南アフリカといった国々まで、急速に生産活動を回復させて、日本を追い越している。

    ざっくり言うと、日本の生産水準は今年1月以降の新型コロナによる下落分に対し、8月までで5割戻し、生産予測指数で10月まで見越しても、8割戻しにとどまる。

    一方、世界生産は8月までで既に9割戻しを果たしている。単純に言って、日本は世界対比で2カ月以上遅れているということである。

    このところ日本の在庫指数は急落しており、増産できない状況ではないのだが、この「のんびり感」の正体は何なのだろうか。

    筆者はこれまで、政府の防疫対策(検査など)が不十分かつ不透明であることに原因を求めてきたが、それだけではないかもしれない。

    さまざまな現場の話を聞くと、ひょっとすると日本の経営者たちは「今はまだ異常事態であり、本格的に活動水準を戻すのは、コロナ収束のめどが立ってからでいいだろう」と考えているのではないか。

    そうであれば、日本の認識は極めて異端とも言える。

    その背景には、報道姿勢の違いもあるのではないか。

    日本では、ともすれば過去の疫病がいかに世界史を変えたかといった「不可逆的断絶史観」が強調されるのに対して、筆者が見る世界の報道は、コロナとの「闘い」「克服」が主題になっている。

    利口な日本人はコロナにあらがうよりも、頭の中のポストコロナの世界に過剰適応して、早々と意気喪失しているのかもしれない。

    2008年のリーマン・ショックの後も、日本の生産回復は遅れ、ライバルに代替されてシェアを落とすことになった。

    現在の状況は世界が勇み足である可能性もないとは言えないが、日本にはもう少し前向きな発想が求められているように思うのだ。

    (藻谷俊介、スフィンクス・インベストメント・リサーチ代表取締役)

    (本誌初出 「のんびり」すぎる日本の生産回復=藻谷俊介 20201020)

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