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投資・運用 急伸!中小型株

新規公開が目白押し テック系企業が集積=中村昌宏

東証再編でマザーズの立ち位置にも変化
東証再編でマザーズの立ち位置にも変化

 東証マザーズ指数(以下、「マザーズ指数」)は10月14日、一時1368・19と、2006年8月以来、約14年ぶりの高値をつけた。20年は新型コロナウイルス感染拡大による先行き不透明感の高まりなどから、マザーズ指数は3月にかけて昨年末より約4割下落したが、その後は上昇基調に転じ、5月には年初来高値を更新、足元は昨年末比約1・5倍の水準となっている。

 他方、マザーズ指数と同様に成長企業を対象とした市場のジャスダック指数は、年初からの下落は約3割とマザーズ市場ほどではなかったが、足元はようやく昨年末と同程度の水準に回復するにとどまっている。(急伸!中小型株)

20余年の「若い」市場

 マザーズとジャスダックの指数のパフォーマンスに差が生じている背景に、クラウドサービスなど需要の高まりが見込まれる「情報・通信業」やインターネットを通じたサービスを提供する「サービス業」に属する企業の比率の差が挙げられる。

 20年9月末時点でマザーズ市場に上場している企業は328社。このうち、情報・通信業が123社、サービス業が104社と全33業種の中でも突出し、全体の7割を占めている。他方、ジャスダック市場でも上場700社中、サービス業が102社、情報・通信業が98社と、全33業種の上位2業種となっているが、全体に占める比率は3割弱である。

 両指数の業種特性は、時価総額の上位企業を比較することでも分かる。20年9月末時点の時価総額上位企業を見ると、マザーズでは電子商取引(EC)のメルカリ、クラウドベースの会計ソフトウエアのフリーなど上位5社中4社が「情報・通信業」に属し、株価も昨年末からおおむね2〜2・5倍となっている(表1)。これに対し、ジャスダックでは作業服などの専門チェーンのワークマン、日本マクドナルドホールディングス、100円ショップのセリアなどの「小売業」が5社中3社を占め、株価も上位2社は昨年末の水準に戻っていない(表2)。

 マザーズがECやクラウドなどの比較的新しい業容の企業が多いのに対し、ジャスダックが製造業や店舗小売りなどの伝統的な事業を営む企業が多い理由に、両市場の設立時期や、最近の新規上場企業がマザーズを選択するケースが増えていることが考えられる。

 マザーズ市場が開設されたのは1999年11月。設立後の経過年数や利益に関する上場基準を東証1・2部より緩和し、成長性が見込まれるベンチャー企業などに、株式上場による資金調達の場を提供することを目的とした。

 他方、ジャスダック市場は、その源となる店頭登録制度が日本証券業協会において創設されたのが63年と、歴史は古い。その後、83年に登録制度の改善、公募増資の緩和、情報開示の充実が取り入れられた新しい株式店頭市場が発足し、98年12月には証券取引法改正に伴って「店頭売買有価証券市場」となった。現在でも、ジャスダック市場にはNITTOKU、ナガセ、天龍製鋸など、90年以前に店頭公開した企業も多い。

 マザーズ市場が開設される99年までは、ジャスダック市場に新興企業の株式公開が集中していたが、近年、新規公開する企業の多くはマザーズ市場を選んでいる。14年1月〜20年9月末に新規公開した企業数を市場別にみると、ジャスダック市場の82社に対し、マザーズ市場は371社と4倍以上の企業が上場している(テクニカル上場、他取引所からの上場などを除く)。

制度変更で人気鎮静も

 マザーズ市場への上場が多いことの理由に、上場後に東証1部へ市場変更を企図した場合、ジャスダック市場からよりもマザーズ市場からの方が、時価総額が小さくても可能だったためと考えられる。ただし、11月1日以降の申請では、両市場から東証1部への市場変更の基準の違いはなくなる。

 他市場から東証1部に移行するには時価総額や売買高など、東京証券取引所が定める形式要件をクリアしなければならない。例えば、10月31日までの規則では、時価総額と売買高に関し、東証2部から1部への移行は「売買高が月平均200単位以上で、時価総額は40億円以上」、ジャスダック市場から東証1部への場合は「売買高の条件はないものの、時価総額が250億円以上」を満たす必要があった。一方、マザーズ市場から東証1部への市場変更では、東証2部からと同じ「売買高が月平均200単位以上で、時価総額は40億円以上」を選択できる。結果として、ジャスダック市場に比べて時価総額が小さくても市場変更が可能になる。また、マザーズ市場から東証1部への変更には売買高の基準を用いないことも可能だ。ただ、この場合はジャスダック市場と同様に「時価総額が250億円以上」を満たす必要があった。

 しかし、11月1日に上場制度の改正が施行されることで、「東証1部への市場変更のしやすさ」を理由にマザーズ市場への上場を選ぶ企業の動きはなくなるだろう。

 また、東京証券取引所が進める新市場区分の見直しが計画通りに進めば、ジャスダックの中でも成長可能性を有する「ジャスダック・グロース市場(20年9月末時点で37社)」とマザーズ市場に上場する企業は「グロース市場(仮称)」に統合される予定である。東京証券取引所は、現在の五つの市場区分(東証1部、東証2部、マザーズ、ジャスダック・スタンダード、ジャスダック・グロース)を、三つの市場区分(プライム市場、スタンダード市場、グロース市場。名称はすべて仮称)に変更し、22年4月1日に新市場への移行を実施する計画を発表している。ジャスダック・スタンダード市場(20年9月末時点で663社)は、スタンダード市場への移行が予定されている。新しい市場区分の制度改正事項の公表は20年内とされているが、計画に大きな変更がなければ、成長期待の高い企業は同じ市場区分となる可能性は高い。

(中村昌宏・大和総研金融調査部主任研究員)

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