注目テーマ5 半導体 超微細化がビジネス機会に=氏原義裕
2時間の映画を2秒でダウンロードできる5G(第5世代無線通信)社会が近づいている。現在、5G対応スマートフォンで最上位機種に搭載されたCPU(中央演算処理装置)は1秒間に15兆回演算処理をする。これは、半導体製造の最先端技術であるEUV(極端紫外線)露光を使い7ナノメートルの線幅で作られる。
車の自動運転実現には、毎秒100兆回の演算処理が必要で、2ナノメートル程度の細い線幅で半導体を作る必要があると考えられている。今年8月、半導体受託大手の台湾TSMCが2ナノメートル量産工場建設の準備に入ったと発表した。2024年ごろには2ナノメートル時代が到来しそうだ。
4970 東洋合成工業 レジスト添加剤世界トップ
EUV露光で使われるレジスト(感光剤)材料に必要不可欠な添加剤である光酸発生剤「PAG(パグ)(Photo Acid Generator)」の世界最大手。PAGは、レジスト材料に数%混ぜることにより露光装置から発せられた光に反応し酸を発生させ、その酸の働きでレジスト材料が高感度になり超微細なパターニングが可能になる。
このPAGを含め半導体レジスト材料をレジストメーカーに販売する。PAGの品質と供給能力において世界ナンバーワンであると推定される。高い品質と安定した生産能力を持つことから限界利益率が非常に高い製品とみられ、業績が大きく変貌する可能性が高い。なお、競合企業はダイトーケミックスであるが、レジスト大手である東京応化工業の傘下にあり、販売先が限定され市場シェアは低いと推定される。
主な販売先は、JSR、東京応化工業と推定される。需要増加を見越して千葉に新工場を建設。投資額は約70億円で、本格稼働は顧客企業から品質などの認定を受けた後の2021年春ごろを予定している。
EUV露光の線幅が7ナノメートル、5ナノメートル、3ナノメートル、2ナノメートルと進化する中で同社製PAGの需要は増加するだろう。
6407 CKD 製造装置向け機器
半導体製造装置用機器を製造している。機器はレジスト(感光剤)の塗布装置(コータ)、現像装置(デベロッパ)、現像後のエッチング装置(エッチャー)、エッチング後の洗浄装置(クリーニング)に組み込まれる。これら製品に加え、EUV露光に関連した新領域の製品が今後業績のけん引役になると考えられる。それがALD(Atomic Layer Deposition)と呼ばれる、成膜工程で使われる機器である。ALDは、EUV工程のなかでシリコンウエハー上に数オングストローム(100億分の1メートル)の精度で膜を形成する。同社製品は、まったくちりを排出しない「コンタミネーションフリー」、超高精度温度制御機能付き、耐用使用回数保証付きだ。
2019年1月には東北工場を新設。工場は自動化されており、24時間フル稼働すれば250億円程度の売上高を生み出すことが可能と考えられる。また、20年2月に公表した新株予約権の発行に関する補足説明資料に、北米向け新生産拠点に設備投資する旨が記述されており、北米で本格生産に入る可能性が高い。米大手半導体製造装置メーカーのアプライドマテリアルズやラムリサーチとの本格的なビジネスがスタートする可能性がある。
(氏原義裕・SBI証券 シニアアナリスト)