「プラットフォーム企業だけ勝つのはおかしい」ECサイト開設サービス「BASE」社長が利益を追わない経営をしている深い理由
時価総額は2000億円を突破。サイト作成の容易さに加え、決済機能が個人事業主に支持されている。(急伸!中小型株)
(聞き手=種市房子/和田肇・編集部)
── どのような事業内容ですか。
■EC(電子商取引)「BASE」事業と決済事業「PAY.JP」の2本柱だ。
主力のBASE事業は、ネットショップ作成と決済の双方のサービスを提供している。
以前のツールは、ショップを作る機能と決済の機能が別のものが多く、ユーザーはそれぞれのサービスを契約する必要があった。
我々はそれを一つのアプリ「BASE」で提供している。
アプリでは、文書やデザインに複数のテンプレート(ひな型)を用意しており、誰もが簡単に自分のネットショップを作成できる。
ネットショップの作成や毎月の運用は無料で、ネットショップで商品が売れた段階で、決済手数料や「サービス利用料」をいただく。
これが当社の収益になっている。
決済事業は、主にITのスタートアップやスモールチーム(少人数)でウェブサービスに取り組む方々向けのサービスだ。
── ユーザー急増の要因は。
■「BASE」利用者の7割以上は、自分のスマートフォンを使ってネットショップを作成している。
以前はネットショップを作ろうとすれば、社内にデザイナーやエンジニアを抱え、パソコンを使って膨大な作業が必要だった。
「BASE」はプログラムを書く必要もない。
テンプレートもあるので、特別な知識がなくてもスマホで簡単にネットショップを立ち上げることができる。
ユーザー層の多くは、いわゆる「販売のプロ」ではなく、「ものを作るプロ」で、自らネットショップを立ち上げる方だ。
創業時から個人や少人数の事業者を支援するサービスを提供するという思いでやってきた。
── 新型コロナウイルスの感染拡大の影響はあるのか。
■実店舗の売り上げが減少する一方で、オンラインで購入する方が増え始めた。
そうした状況の中、時間もかからず簡単にネットショップが作れる「BASE」は、困っている方々の期待に沿うことができたのではないか。
ただ、コロナ以前から流通取引総額(GMV)は伸びている。
コロナ以前に開設したショップの流通取引総額が伸びているからだ。
コロナをきっかけとして、店舗側も消費者もECへのシフトが進んだことは事実だ。
ただ、我々が取り組むべきことに変わりはない。
── 同様のサービスを他社も展開するのでは。
■創業から8年間、個人や少人数の方たちに特化して、その方たちに一番好まれるプロダクトを淡々と作り続けてきた。
周りから見るとなかなか追いつけないのではないか。
起業の動機は母のため
── 今後の方針は。
■営業利益を追いかけるフェーズではない。
足元の需要は強いし、このマーケットで我々がしっかりリーダーとしてコミットしていくためにも、流通取引総額や売上総利益などが大事な時期であり、そこに投資する価値があると思っている。
苦しんでいてこれからネットショップを始めたいという人のためにも、サービスを充実させるような投資をしたい。
直近の決算がたまたま黒字なだけで、どんどん利益を出したいと思っているわけではない。
黒字は我々が作った数字ではなく、ユーザーさんが努力した結果。
足元の数字が劇的に増えたからといって、今までの方針が変わることはない。
── そもそも「BASE」は鶴岡CEOのお母様のために始めたと聞いている。
■その思いは変わっていない。我々はインターネットが苦手とか、何か環境的に恵まれていない方に対し、インターネットでサポートしていくことが基本路線だ。
そのこと自体に意味があるのであって、流通取引総額はあくまでそのミッションの下にある。
ユーザーのネットショップの売り上げは伸びないが、ECプラットフォーム事業者はもうかるというのは、考え方として違うと思う。
(本誌初出 インタビュー 鶴岡裕太・BASE代表取締役CEO 「スマホで簡単にECサイト開設」 20201110)