ネット通販、ライブコマース、オンライン医療……内需拡大をめざす中国で大注目の「新型消費」とは何か
「消費は企業回復のカギであり、経済回復のカギでもある」
中国の著名なエコノミスト、蔡昉・中国社会科学院副院長はこう強調する(『新華社』9月29日付)。
近年、中国の経済成長のけん引役となってきたのが消費だ。
2019年の寄与率は57・8%に達する。他方、投資は31・2%にとどまる。
しかし、20年は新型コロナウイルスの影響で、特に接触型の消費が著しく抑制されたことなどから、逆に景気の足を引っ張る要因となった。
実際、第1四半期の実質国内総生産(GDP)成長率が6・8%減と、四半期ベースでは初のマイナス成長に陥ったのは、社会消費品小売総額(小売り売上高に相当)が19%減と大幅に落ち込んだことが主因だ。
実質GDP成長率は感染拡大の抑制を背景に、第2四半期に3・2%増とプラス成長に転換。
国家統計局の10月19日の発表によれば、第3四半期は4・9%増と、回復傾向が鮮明になっている。
これはインフラをはじめとする投資主導によるものだ。
1~9月期の固定資産投資(農家を除く)は0・8%増と、ほぼ前年並みの水準まで回復しているが、消費の回復は遅れており、社会消費品小売総額は7・2%減となっている。
ネット小売額15%増
他方、新たな発展の機会がもたらされたのが「新型消費」だ。
これは、インターネット小売りや生中継で商品販売する「ライブコマース」、オンラインによる教育・医療といった新業態・新モデルによる消費を指す。
社会消費品小売総額が単月ベースでは8月に0・5%増と、コロナ流行後では初のプラス成長に転じ、9月は3・3%増と伸長したのは、新型消費の支えが大きい。
事実、1~9月期の商品ネット小売額は15・3%増と2桁も伸び、社会消費品小売総額の約4分の1を占めた。
そんな中、国務院(内閣)は9月21日、「新業態・新モデルのけん引による新型消費の発展加速に関する意見」を公表。
関連制度と政策の整備・促進で、25年までに新型消費のモデル都市とリーディングカンパニーを育成し、商品ネット小売額の比率を大幅に高め、さまざまな新業態・新モデルを普及させる目標を打ち出した。
新型消費の発展で、内需拡大による景気回復と新産業の育成という「一石二鳥」を狙う。
この目標に向けた政策措置により、流通インフラや関連法規制の整備、データの商用利用の推進、労働環境の改善といった効果を期待しているが、課題もある。
マクロ経済政策を担う国家発展改革委員会の高杲副秘書長は9月22日、同意見に関する記者会見で「中小都市や農村地域を中心に、新型消費に適応するオンラインとオフラインが融合したサプライチェーン(供給網)はなお未整備で、人材不足の問題も顕著」と強調。
そのうえで「急速な発展の過程で、無秩序な競争、虚偽の宣伝、価格詐欺、プライバシーの漏えいなどがあった。
これらは新型消費の持続的かつ健全な発展に影響を与える可能性がある」と率直に述べた。
中国が新型消費を発展させ、経済回復につなげていくためには、関連インフラの整備に加えて、消費者の権益保護や信用システムの構築など、ハード・ソフト両面での課題解決が求められている。
(真家陽一・名古屋外国語大学教授)
(本誌初出 「新型消費」で狙う景気回復 2025年までにモデル都市=真家陽一 20201110)