経済・企業急伸!中小型株

マザーズが14年ぶり高値 構造改革銘柄がけん引=編集部

    スマホ発のさまざまな事業が生まれている (Bloomberg)
    スマホ発のさまざまな事業が生まれている (Bloomberg)

     レオス・キャピタルワークスが主に日本株で運用する投資信託「ひふみ投信」の運用成績が好調だ。2019年12月末から20年9月末までの騰落率は11・6%。同期間の東証株価指数(TOPIX)のマイナス5・6%を大幅に上回った。(急伸!中小型株)

     好調の背景には、時価総額3000億円未満の中小型株の組み入れ比率が9月末で運用資産の54%と高いことがある。東証マザーズ銘柄の組み入れ比率は1月の3・3%から直近9月は5・2%に上昇した。レオスの藤野英人社長は、「東証マザーズ銘柄が米ナスダック総合指数を上回るくらい好調だったことが、運用結果に顕著に表れている」と説明する。

    米ナスダックしのぐ

     マザーズ指数は新型コロナウイルス感染拡大による今年3月の世界同時株安で一時下落したものの、4月からは上昇基調に戻り、10月14日には14年ぶりの高値となる1365・49を付けた。その後、調整局面に入ってはいるが、TOPIXはもちろん、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)などハイテク銘柄がけん引する米ナスダック総合指数の騰落率を上回る(図2)。

     なぜ、新型コロナの感染が拡大する中で、マザーズ銘柄は上昇できたのか。藤野氏は、「レガシー、つまり、過去の負の遺産が少ないことが大きい」と指摘する。コロナをきっかけに、脱炭素化、経済のデジタル化が進む中、化石燃料や対面に依存した旧来型の企業は業績を悪化させている。一方で、マザーズ銘柄の多くは、デジタルやオンラインに軸足を置き、人的接触が制約される中でも、営業活動が継続できた。さらに、9月に菅新政権が誕生。安倍政権で手付かずだった行政改革や、医療、教育分野などの規制緩和が一気に進み、オンライン教育や診療などを提供する新興企業が恩恵を受けると投資家が期待したことが追い風になった。

    EC、医療データ関連けん引

     スマートフォンで簡単にネットショップを開設できる電子商取引(EC)アプリを運営する「BASE」の株価は、3月13日の年初来安値774円から10月8日には1万7240円へ上昇。同社の時価総額はマザーズで5位だ。ECサイトを作成するための初期・運用費用は無料で、顧客が購入して決済した時点で、店舗から手数料を取る事業モデル。ECサイトの文書やデザインのひな型もあり、気軽に費用負担なく作成できるとあって、個人事業主の需要が伸びていたが、コロナ拡大による4月の緊急事態宣言を機に、EC参入が加速したことが好感された。

     JMDCはデジタルによる医療の効率化が材料視された。同社は、契約する健康保険組合が保有する健診やレセプト(診療報酬明細書)データを分析し、組合員の健康増進につながる事業の支援に取り組んできた。大和証券アナリストの葭原(よしはら)友子氏は「政府も医療データを活用し、疾病予防に役立てる方針を打ち出している。JMDCの事業は長期の医療トレンドに沿っている」と分析する。

     菅政権が政策の目玉として打ち出したオンライン診療の初診の規制緩和の恒久化では、クラウド型のオンライン診療サービス「クリニクス」を展開するメドレーが思惑から上場来高値を更新した。

     今日、多くの企業が会計や意思決定をデジタル化するべく複数のクラウドサービスを導入している。各人が持つ複数のクラウド上のIDを一括管理するシステムを提供するのはHENNGE(へんげ)だ。マイナンバー制度対応の本人確認システムや電子印鑑を手掛けるGMOグローバルサイン・ホールディングスも株価が上昇した。

    個人投資家が主役

     菅政権の構造改革姿勢に敏感に反応したのが個人投資家だ。個人投資家の割合は東証1部では2割程度だが、マザーズでは5割を超える。14年ぶりの高値を付けた週は403億1583万円の大幅な買い越しとなっている。(図3)。

     松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは「マザーズ市場では個人投資家の存在感が増している。在宅勤務の広がりでデイトレードをしている投資家が増えているのではないか」と分析する。

     個人投資家からの資金流入はマザーズ市場の時価総額を押し上げた。9月末の時価総額は9兆593億円で、1月(5兆9873億円)より51%増加した。個別銘柄の時価総額が上がるに連れて、海外投資家の資金も集まる。海外機関投資家は一定程度の流動性を求める。これまで時価総額が小さくて海外機関投資家の投資対象でなかった銘柄にも、株価上昇・時価総額増によって機関投資家のマネーが入りやすくなっている。実際、BASEの株主構成で海外機関投資家が占める割合は昨年末の17%から6月30日時点で41%に伸びている。

     もっとも、足元は、急騰の反動でマザーズは調整色を強めている。10月14日に14年ぶりの高値を付けたわずか6営業日後の同22日には下落幅が制限を超え、株式売買を一時停止する「サーキットブレーカー」が発動された。その後も下落基調だ。

     急速な上昇を続けてきた銘柄には、予想PER(株価収益率=時価総額÷予想利益)が400倍を超えるHENNGEなど、「超」が付く高PER銘柄も目立つ。BASEはそもそも、利益予想が赤字になる可能性もあるため測定不能だ。PERは株価の割高感を測るのに使われ、東証1部の全銘柄の平均(予想値)は24倍程度だ。マザーズで急伸した銘柄が、いかに期待先行で買われているかがうかがえる。

     レオスの藤野社長は「10月中旬以降の下落は、過熱感を鎮めるための必要な調整」と冷静だ。社会を変革する企業が業績を伸ばすトレンドは続く。調整局面はむしろ押し目買いのチャンスという。もっとも、追加証拠金の発生で、信用買いポジションの手じまい売りを迫られる個人も少なくないと見られ、目先は、荒い値動きが続く可能性がありそうだ。

    10月28日には保育所運営「さくらさく」がが公募価格を上回る初値で新規公開
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    (編集部)


    東証1部への昇格相次ぐ 基準変更前の駆け込みも

     成長株が集う東証マザーズ市場だが、東証1部への市場変更をする企業が相次ぐ。今年は10月19日までにミクシィやオイシックス・ラ・大地など23社が東証1部へ昇格した。昨年1年間で昇格した24社と比べてハイスピードぶりがうかがえる。

     昇格が相次いだ背景には、11月の昇格基準変更を前にした「駆け込み申請」もあったためとみられる。

     東証1部への市場変更には流通株式数や時価総額、売買高に一定の要件が必要となる。10月31日までの基準では、マザーズから東証1部への市場変更は、「売買高が月平均200単位以上で、時価総額は40億円以上」か「売買高は問わないが、時価総額250億円以上」のいずれかの条件が必要だった。つまり時価総額40億円でも上場可能だったのだ。しかし、11月1日からの申請では、「売買高は問わないが、時価総額250億円以上」に一本化される。このため、時価総額が250億円に満たないが、東証1部に昇格したい企業にとっては10月までの申請が必要だった。

     東証1部の魅力はどこにあるのだろうか。まず、ブランド力だろう。更に、東証1部銘柄は東証株価指数(TOPIX)に組み入れられるため、多くのTOPIX連動ETF(上場投信)や投資信託、ひいては日銀に買い支えられるというメリットがある。

    不適切開示の誘因にも

     昇格した企業の中では、問題も起きている。7月21日にマザーズから東証1部へ昇格した不動産・住宅関連コンサルタント「ハイアス・アンド・カンパニー」は9月30日、監理銘柄に指定された。不自然な費用計上を認識していたにもかかわらず、昇格審査を行う日本取引所自主規制法人に報告しなかったのだ。

     この不自然な費用計上について、同社は弁護士や会計士らを加えた特別調査委員会を設置。調査委がこの不自然な費用計上を含めて財務を詳しく調べた結果、そもそもマザーズ上場時に経営成績を意識するあまり、取引実態のない売り上げを計上したり、売り上げ計上を前倒しして月次予算を達成したことも判明した。

    (編集部)

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