国際・政治

アメリカ版“蓮舫”の誕生!? 米国初の女性大統領最有力、カマラ・ハリスの正体

    バイデンが米次期大統領候補の勝利宣言の後に微笑むカマラ・ハリス副大統領候補(2020年11月7日、米国デラウェア州ウィルミントンで行われた選挙イベント)Bloomberg
    バイデンが米次期大統領候補の勝利宣言の後に微笑むカマラ・ハリス副大統領候補(2020年11月7日、米国デラウェア州ウィルミントンで行われた選挙イベント)Bloomberg

     今回の米大統領選挙で注目を集めた人物の1人が、初の女性、黒人とアジア系の血を引く副大統領となるカマラ・ハリス氏ではないだろうか。上院議員としてのキャリアは浅いが、カリフォルニア州の検事総長を務めるなど、華やかな経歴の持ち主だ。

     筆者はアメリカ版の蓮舫登場のように感じている。

    実は超エリート家系

     ハリス氏は現在56歳。カリフォルニア州オークランドの出身で、父親はジャマイカ出身、母親はインド出身という移民の子として生まれた。ただし父親はスタンフォード大学の経済学者、母親は高名な乳がん研究者であり、有色人種だがエリート家系の出身だ。

    「黒人のハーバード大」を卒業

     黒人のハーバードとも言われるハワード大学を卒業後、カリフォルニア大の法科大学院を卒業し、法科博士号を取得、地方検事からキャリアをスタートさせ、州の頂点に上り詰めた後、カリフォルニア選出の上院議員に当選したのが2016年だった。

    「有色人種版ヒラリー」というよろしくない評判

     法曹出身だけあって鋭い舌鋒で知られるハリス氏だが、一方には「有色人種版ヒラリー・クリントン」というあまり嬉しくない評判もある。エリートで野心家、自己主張が強い、といった意味合いだ。

     ハリス氏の政治主義はどちらかといえば左派寄りで、国民皆保険制度、大麻の合法化、不法移民への永住権授与などを支持している。これは自身が子供の頃から両親に連れられて公民権運動のデモに参加してきた、という経験が元になっているとも言われる。

    人種差別に真っ向から反対する人物ではない

     しかしハリス氏は必ずしもBLM(黒人の人権を求める運動)から熱烈に支持されているわけではない。カリフォルニア州でBLMを推進する黒人女性はハリス氏についてツイッターなどで「彼女は州の検事総長時代、黒人を不公平に摘発し収監する警察組織のトップだった人物」と酷評している。

     つまり出世のために検挙率を上げる、という目的に熱心だった、決して人種差別に真っ向から反対する人物ではなかった、という受け止められ方だ。

     次期大統領に決定したジョー・バイデン氏が「副大統領候補は女性にする」という公約を掲げていた、選挙の最中に黒人男性が白人警察官によって圧死させられ、それに対する抗議デモが全米に広がった、などの理由でバイデン氏の選択肢は狭まり、「女性かつ有色人種、できれば黒人系」を選ぶことが国民の支持を得る絶対条件となった側面がある。

    大統領選は人気薄で撤退した過去

     副大統領候補となったことで一躍時の人となり、期待感が高まったハリス氏だが、実際は今回の大統領選挙に民主党候補として自ら立候補しており、人気が集まらずに昨年12月の時点で撤退していた。

     人気が出なかった理由は、前述の「第二のヒラリー」的なエリート臭を嫌がる人がいた、特に女性の間では評判がもう一つだったことが挙げられる。またカリフォルニアでは知名度は高いが全国区ではそれほどでもなかった、左派の候補者にバーニー・サンダース氏のように一部から熱狂的な支持を集める人物がいたのも大きな要因だろう。

    任期中のハリス大統領誕生もあり

     しかし今回副大統領に就任、さらにはバイデン氏の健康問題もあって「もしかしたら任期中にハリス大統領の就任もありえる」と言われる。もし新しい政権が無難に国を導くことが出来れば、ハリス氏は間違いなく4年後の大統領候補の最右翼だ。

     11月7日の夜、民主党の勝利演説をバイデン氏に先立って行ったハリス氏は「民主主義を守ることは闘争であり、犠牲を伴うことでもあります。しかしそこには喜びもあります。我々人類はより良い未来を築くパワーを持ち、それゆえに前進できるのです」と語った。

     そして今回の勝利を「米国の新しい日々の始まりだ」とし、同時に自分がここに立つことができたのは母、そして多くの黒人女性の先達のお陰である、と感謝の意を表した。

    弁護士の夫はセカンドハズバンド?

     こぼれ話としては、今米国では「ハリス氏の夫(弁護士のダグラス・エムホフ氏)をどう呼ぶべきなのか」、が話題となっている。大統領の妻はファーストレディ、副大統領の妻はセカンドレディと呼ばれるのが習わしだが、エムホフ氏はセカンドハズバンドなのか、あるいはファーストハズバンドなのか。そもそもこうした呼び方は古いものとして今後別の名称が与えられるのか、などだ。

    勝利演説で民衆にこたえるジョー・バイデン(右)次期大統領、副大統領のカマラ・ハリス(中央)とハリスの夫で弁護士のダグラス・エムホフ(2020年11月7日、米デラウエア州)Bloomberg
    勝利演説で民衆にこたえるジョー・バイデン(右)次期大統領、副大統領のカマラ・ハリス(中央)とハリスの夫で弁護士のダグラス・エムホフ(2020年11月7日、米デラウエア州)Bloomberg

    ハリスの上院議員後継者、ギャビン・ニューサムも注目

     また今回ハリス氏の上院議員の議席が空くことで、後継者選びが今後始まるが、その最有力候補がギャビン・ニューサム・カリフォルニア州知事なのだという。ニューサム氏もまた国政に野望を持ち、いずれ大統領候補に浮上する人物かもしれない。

     米国の副大統領というのは概してあまり目立たない存在だ。かつてはジョージ・W・ブッシュ時代のディック・チェイニー氏のように「政界のフィクサー」とされる人物もいたが、副大統領時代のバイデン氏、現在のペンス氏などはあまり表に出ず大統領の補佐に回っている印象が強い。

    国政に野望を持つといわれるギャビン・ニューサム・カリフォルニア州知事(Bloonberg)
    国政に野望を持つといわれるギャビン・ニューサム・カリフォルニア州知事(Bloonberg)

    前に出る性格に難あり

     ではハリス氏はどのような副大統領になるのだろうか。筆者の個人的な考えではあるが、割と前面に出てくるのではないだろうか。特にバイデン氏が推進する6つの政策(最低時給の引き上げなどによる経済格差の縮小、銃規制、オバマケアの復活、国際協調、寛容な移民政策、教育の充実)はハリス氏がかねてから主張してきたものと被るものが多い。このうちのいくつかをハリス氏が主導で進めることは十分に考えられる。

    性格は支配的、野心的、攻撃的…

     しかしそこに若干の懸念もある。政治家の性格などを分析しているUnit for the Study of Personality in Politicsという団体では、ハリス氏の性格を「支配的、野心的、攻撃的、自信家」と評している。

     一方でバイデン氏は「適応力、融通性、協調性」が高い。この2人の相性は悪くないが、どちらかと言えばハリス氏が大統領、バイデン氏が副大統領向きの性格である、と分析されている。

    閣僚入りが噂されるサンダースとは不仲

     つまりハリス氏があまりに前に出すぎると、2人の間に不協和音が出てくる可能性もある。

     さらに閣僚入りが噂されるバーニー・サンダース氏との相性は決して良くない。ハリス氏が一歩下がって政権の縁の下の力持ち的な役割を果たさないと、政権は一枚岩にはならない可能性もある。

    4年後に米国初の女性大統領も

     4年後に大統領の座を狙うならば、ハリス氏にとってこれからの4年間は国民を納得させる働きを見せる場となる。そして多くの国民の賛同が得られたならば、4年後に米国は史上初の女性大統領を戴くことになるだろう。

    (土方細秩子・ロサンゼルス在住ジャーナリスト)

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