経済・企業挑戦者2020

河野剛進 バカン代表 混雑の見える化で安心届ける

撮影 武市公孝
撮影 武市公孝

 飲食店や観光地の混雑状況を可視化し、利用者に安心を届けるサービス「バカン」。新型コロナが追い風となり需要は拡大傾向だ。(挑戦者2020)

(聞き手=斎藤信世・編集部)

 会社のミッションである「今空いているかが1秒でわかる」をもとに、リアルタイムの空き状況配信サービス「バカン」を運営しています。レストランやオフィスのトイレ、避難所などの空き状況がスマートフォンやデジタルサイネージ(電子看板)などで瞬時に確認できます。

 検知方法はさまざまですが、環境に合わせてカメラやセンサー、店側がボタンで管理する押しボタン式など、設置場所の広さや予算によって適切な方法を選びます。

 バカンを利用している企業の導入理由はさまざまですが、例えば、オフィスのトイレは時間によって混雑することがあるので、従業員のエンゲージメント(建設的な対話)や生産性向上を目的に使うケースもあります。

 利用料は、初期費用と月額(980円〜)です。ボタンなど簡易的なものもあれば、自動検知の場合はカメラや解析費用もかかります。

 これまでは利便性向上という観点で利用されていましたが、コロナをきっかけに安心・安全という面が評価されるようになりました。飲食店や小売店の混雑状況を地図上で示す「バカン・マップス」は、早く使いたいという声が多かったので、当初予定よりも早い6月に本格展開を開始しました。開始3カ月で500カ所以上に導入されました。

 観光地での利用も進んでいます。今年7〜10月末には、江の島周辺の混雑状況を可視化するための実証実験を藤沢市などと実施しました。密を避けながら観光を楽しみたいという需要に応えるため、新江ノ島水族館などの観光施設や飲食店など、島全体の混雑状況をマップ上で可視化し、観光客がスマホ上で確認できるサービスを展開しました。

 また、災害時における避難所での混雑防止を目的にバカンを導入する自治体もあります。今年8月には宮崎県日南市と防災協定を締結し、実際に9月の台風10号で使用されています。コロナ禍で分散避難の重要性が増す中で、自治体のこうしたニーズは今後も高まっていくとみています。

子供に学んだ時間の価値

東京駅の商業施設「グランスタ」には電子看板を設置した バカン提供
東京駅の商業施設「グランスタ」には電子看板を設置した バカン提供

 自分自身の生活環境の変化がバカンを生み出すきっかけになりました。結婚し子供が生まれたことで時間に対する価値観が変わりました。出社前に子供と話す時間や、週末に家族と過ごす時間が何よりも大切です。

 ある日、子供を連れて商業施設に行った際に、お昼時で飲食店が混雑していたため、子供がぐずってしまい帰ったことがありました。トイレも授乳室も同じで、空いているところを探し回って、結局空いていないというようなことが続いたので外出自体が嫌になりました。本来は楽しいはずの時間が悲しい体験になるのはもったいないと感じ、空き情報を配信するサービスを作ろうと考えました。

 もともと学生時代から起業したいと考えていて、自分の国に誇りをもてるような、米国でいうシリコンバレーみたいなものを日本に作りたいと考えていました。この領域だったら覚悟をもってやれると思ったので、自己資金350万円で始めました。

 ありがたいことにコロナ禍で利用者は増加しています。このサービスを広げていくことが、私たちにできる社会貢献だと思うので、できるだけ早く全国誰もが使えるサービスに成長させたいです。いずれはハワイやアジアにも進出し、新しい価値や雇用をどんどん生み出していきたいと思います。


企業概要

事業内容:飲食店やトイレなどの混雑情報を可視化するサービス「バカン」を展開

本社所在地:東京都千代田区

設立:2016年6月

資本金:非公開

従業員数:70人


 ■人物略歴

かわの・たかのぶ

 1983年生まれ。宮崎県立高鍋高校、北海道大学卒業。2008年東京工業大学大学院イノベーションマネジメント研究科技術経営専攻卒業。三菱総合研究所、グリーなどを経て16年バカン設立。宮崎県出身。36歳。

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