小川嶺 タイミー代表 スキマ時間が生むお金と体験
求人を出したその日にアルバイトが集まる新しい人材サービス「タイミー」。急にできた空き時間を使ってアルバイトができるという手軽さからユーザー数が伸びている。
(聞き手=藤枝克治・本誌編集長、構成=吉脇丈志・編集部)
空いた時間でお金を稼ぎたい人と、急に人手が必要になった店や企業をマッチングするアプリが「タイミー」です。名前など基本情報を入れたあと、スキルや経験を問う簡単な質問に答え、身分証のアップロードをするだけで、そのあとすぐに働けてお金もその日にもらえます。
派遣会社で日雇いの仕事をする場合、事前に説明会や面接に行く必要があります。しかも扱っている案件は派遣会社によってバラバラなので、その都度行かなければならず、かなりの手間です。
タイミーは物流倉庫や飲食店、コンビニなど幅広い職種を集めており、面接も不要。今年9月末時点で導入店舗数は約2万5000店舗、ユーザーは約150万人です。
タイミーでは企業が求職者の働く様子を見て評価することで質を担保しています。マッチングの際、タイミーに登録している約2万社は、面接の代わりにこの評価を参考にします。悪い評価が付いた求職者は、仕事を見つけにくくなります。派遣会社だと当日来ない人が10%くらいいると言われていますが、タイミーでは1%未満。まじめに働いている人が認められていく仕組みです。
働いた人への報酬はタイミーが立て替えて支払い、その後企業から利用料を付加して回収します。今日お金を稼ぎたいと思っている人は、当日キャンセルはまずしないです。即金というのはとても大切な要素です。
大手のアルバイト求人媒体で仕事を見つけた人は、およそ半分が6カ月以内に辞めています。不整合を防ぐには、いろいろな仕事をまず体験してみてから、ここで働きたいという職場を選ぶのが本質だと思うんです。例えばカフェを開業したいけれど経験もノウハウもない。そういう人がタイミーのいろいろな飲食店で働いてみて学んでいって、仲良くなった店長からフランチャイズ権をもらって独立した事例もあります。出会いの場も提供しています。
一度は学生に戻るも……
タイミーの前はファッション関連の会社を起業しました。大学生になって、おしゃれって難しいって思ったのがきっかけですが、営業や展示会を回る中で自分が疲れてしまって。起業の理由と世の中に求められるサービスに違いが出てきたんです。社会の何の課題を解決できるのか明確にならなくて、事業は解散。学生に戻りました。
日雇いのアルバイトをやる日々の中でタイミーのサービスを思いつきました。でも、自分に起業は向いてないと思い、事業化は考えませんでした。就職活動もしていましたが、たまたま投資家の方に会って「すぐに出資するから頑張ってみなよ」と言われて。背中を押してもらった感じです。創業メンバーはSNSで集めました。また失敗する可能性があるので、いままで出会った人を巻き込みたくなかったんです。
今後は仕事の紹介に限らず、タイミーを入り口にすることで、時間の選択肢が広がる世界を作っていきたいです。いままで暇だった時間が、誰かの役に立つ時間に変わる。そんなプラットフォームを作ります。(挑戦者2020)
企業概要
事業内容:ワークシェアリングアプリの開発・運営
本社所在地:東京都豊島区
設立:2017年8月
資本金:1億円
従業員数:100人(パート・アルバイトを除く。20年10月時点)
■人物略歴
おがわ・りょう
1997年生まれ。東京都出身。立教大学経営学部在学中。17年8月に前身となるアパレル関連事業「Recolle(レコレ)」を設立。2018年に社名を「タイミー」に変更。23歳。