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大手商社の序列で4位に沈んだ王者・三菱商事が直面する事業区分けのゆがみ

    三菱商事は垣内社長の下、事業分類を転換した
    三菱商事は垣内社長の下、事業分類を転換した

     三菱商事が事業リスクを管理する手法として3年前に導入した「事業系・市況系」の分類に、ひずみが生じている。事業を「市況リスク感応度」により分類するもので、「事業系」は市況の影響を受けにくい事業、「市況系」は市況の影響を大きく受ける事業という分類のはずだった。しかし、2020年4~9月期決算では事業系に属する自動車やLNG(液化天然ガス)事業で大幅減益となり、5大商社中4位に沈む要因となった。

    市況影響少ないはずの「事業系」は64%減

     同社の20年4~9月期の最終(当期)利益は前年同期比1557億円減の867億円。21年3月期予想(2000億円)に対する進捗率は43%にとどまるが、今後、資産の売却による一過性利益も見込めることなどから、予想は据え置く。20年3月期最終利益は商社トップの5353億円だったが、20年4~9月期時点では、伊藤忠商事、三井物産、丸紅に次ぐ4位にとどまる。

     4~9月期の前年同期比減益分1557億円を分解すると、事業系が952億円、市況系が637億円の減益要因となっている。なお、事業系・市況系いずれにも属さない利益もあるため、事業系・市況系合計と連結の数値は一致しない。

     前年同期比の減益幅で見れば、事業系はマイナス64%(1482億円→530億円)、市況系がマイナス70%(902→265億円)と市況系の方がわずかに大きい。しかし、事業系が上半期だけで900億円超の減益となった事態に対しては、その概念や事業分類に疑問が沸いてくる。

    減益主要因は原料炭、自動車、LNG

     減益の要因は、主に製鉄に用いる原料炭、自動車、LNGの3事業だ。同社は11月5日の決算会見で「新型コロナウイルスによる需要消失、それに伴う市況悪化が原因」と説明した。3事業のうち、原料炭は典型的な価格変動事業で、同社も市況系に入れている。問題は、自動車とLNGが事業系に属することだ。

     特にLNG事業については、かねてから筆者も含めて「なぜ市況系ではないのか」という疑問を抱く記者やアナリストがいた。というのは、LNG事業の商品である天然ガスの価格は原油価格に連動しやすく、市況連動型のビジネスだからだ。同社はこの点について以下のように説明する。

     天然ガス事業のうち、地中や海底でガス田を探鉱・開発・生産するE&P事業については、市況系に含む。E&Pは、鉱区からガスが出るか分からない時点で莫大な投資が先行し、仮にガスが出なければ赤字になるからだ。出たガスを液化して輸送・販売するLNG事業については、販売先をある程度確保してから施設を建設するので、設備投資額はある程度は回収できる。仮に、市況に左右されてガス価格が大幅に下落しても、赤字にはならないので事業系に含む。

    増CFOがついに見直しを言及

     市況系というネーミングに対して「事業系のビジネスは、市況には左右されにくい」というイメージを与えがちだ。増一行CFO(最高財務責任者)は決算会見で「ほとんどのビジネスは市況の影響を受け、当然、事業系に含まれるビジネスも市況の影響を受ける。事業系と市況系の区分けについては、言葉の使い方が上手でなかったという反省がある。時期を見て区分けの仕方を見直すことも必要だ」と述べた。

    「資源・非資源」の分け方が一般的だが

     商社のビジネス分類で、一般的に用いられるのは「資源・非資源」での区分けだ。事業が広い商社のビジネスをリスクや特性であえて領域を簡素化して「資源・非資源」に分けるもので、いつしかマスコミやアナリストで一般的になった。商社の中でも、伊藤忠が商社業界3位のころから「非資源ナンバーワン」を標榜するなど、積極的に使ってきた社もある。

     一般的には、石炭や鉄鉱石のように市況の変動によって利益幅が上下するのが資源事業、小売りや食料のように生活必需品で安定した需要があり、市況の影響を受けにくいのが非資源事業と解釈されていた。しかし、非資源事業である食料事業が天候や市況の影響を受けて減益要因となるなど、「資源・非資源」の分類はリスク感応度を100%は反映していないことも明らかになってきた。三菱商事はこのような問題意識を持って、垣内威彦社長就任から1年が経過した17年に、分類を「資源・非資源」から「事業系・市況系」に替えた。

    そもそも分類する必要があるか

     導入されて3年が経過した事業系・市況系の分類。平時ならばある程度はリスク管理に適用できたが、コロナ・ショックにより、自動車など、これまで考えられなかった領域での需要消失でひずみが顕在化した。では、資源・非資源という分類で、各商社のリスクや特性を把握しきれるのか。現に、従来は安定した売電収入が見込めるはずで、非資源に含まれる電力事業を巡って、住友商事が20年4~9月期に、豪州石炭火力発電所事業で250億円の減損損失を計上した。

     新たな分類法はないのか。そもそも分類する必要があるのか。それは、商社の特性が多様化する中、全ての社に「資源・非資源」の物差しを当てて、割り切るマスコミにも突きつけられた問いだ。(種市房子・編集部)

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