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経済・企業 日本車があぶない!

日本勢はもう追いつけない??中国EVが米国市場を席巻しつつあるワケ

米テスラ本社=米西部カリフォルニア州で2016年9月、清水憲司撮影
米テスラ本社=米西部カリフォルニア州で2016年9月、清水憲司撮影

2020年はテスラが大躍進

前回は、テスラが株式時価総額でトヨタを上回った話をしたが、テスラ株の上昇ぶりは驚異そのものだ。

2020年1月2日の終値86.05ドルに対し、11月19日の終値は499.27ドル。

実に5.8倍の上昇だ。

この事実だけを見てもまさに2020年は「EVの年」なのである。

現在、テスラはEVの販売台数で世界一だが、筆者はその地位が安泰だとは思っていない。

EVは従来の自動車産業とは異なる新しい産業であり、常に新しいプレーヤーが出現しているからだ。

「中国のテスラ」が相次いでアメリカ市場に上場

筆者が特に注目しているのが「中国のテスラ」とも言える中国のEVメーカーたちである。

そのうちの3社がすでにアメリカ市場に上場し、台風の目になっている。

その3社とは、上場順に、上海蔚来汽車(ティッカーNIO)、理想汽車(ティッカーLI)、小鵬(ティッカーXPEV)である。

このうちNIOとXPEVは、筆者が「図解EV革命」(毎日新聞出版、2017年)で注目すべき新興メーカーとして取り上げたものだ。

NIOは、2014年11月創業で2017年にテスラ「モデルX」対抗のSUVである「ES8」を発売し、「中国のテスラ」と呼ばれてきた。

2018年9月12日にはニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場を果たし、2019年には一回り小型の「ES6」の発売を開始。

こちらは「モデルY」のライバルと見られている。

NIOの上場初日の終値は9.9ドルだったが、2020年11月19日の終値は48.45ドルで、上場以来2年で5倍近く値上がりしている。

今年夏以降、さらなる値上がり期待から、CalPERS(カリフォルニア州職員退職年金基金)などアメリカの大手投資ファンドがNIO株を大量購入し、その動きが次の上昇につながるというサイクルが起こっている。

バッテリー交換サービス「Baas」とは何か?

NIOに対する注目度は、2020年8月に同社がBattery as a Service(BaaS)を立ち上げてからさらにアップしている。

BaaSとは、平たく言えばバッテリー交換サービスだ。

NIOは2019年の上海モーターショーで全自動バッテリー交換のデモを行い注目されたが、今回正式なビジネスとして立ち上げたわけだ。

BaaSプログラムでは、EVのユーザーはバッテリー抜きの車体だけ購入し、別途バッテリー使用プログラムに参加することになる。

この方式のメリットは非常に大きい。

第1のメリットは、EV購入価格の大幅な低下である。

「ES8」の定価は468,000元(約740万円)だが、BaaSプログラムで購入すれば約20%オフの380,000元(約600万円)で買える。

ユーザーは毎月980元(約15,000円)を参加料として支払う必要があるが、ガソリン代と比較しても負担は小さなものだから「お得感」は大きい。

第2のメリットは、給電時間の大幅な短縮である。

EVの泣き所は充電時間の長さで、急速充電でも30分もかかるが、交換方式だと5分以内に終わってしまうのだから利便性は格段に飛躍する。

筆者は、バッテリー交換方式こそが究極の給電方式と考えており、この方式が本格普及するとEV自体の普及も急加速するものと期待している。

NIOはすでに中国64都市で143ヶ所のバッテリー交換所を設置している。

アメリカ上場でNIOに続いたのがLIで2020年7月末にNASDAQに、さらに、1カ月後の8月末には3番手のXPEGがNYSEに上場を果たした。

中国には他にもBYDをはじめ、威馬汽車(WM Motor)、哪吒汽車(HOZON Auto)など多くの有力メーカーがしのぎを削っている。

国単位で見ると、なかなか「第2のテスラ」が育ってこないアメリカを抑えて、当面のリーダーが中国であることは間違いない。

村沢義久(むらさわ・よしひさ)

1948年徳島県生まれ。東京大学工学部卒業、同大学院工学系研究科修了。スタンフォード大学経営大学院でMBAを取得後、米コンサルタント大手、べイン・アンド・カンパニーに入社。その後、ゴールドマン・サックス証券バイス・プレジデント(M&A担当)、東京大学特任教授、立命館大学大学院客員教授などを歴任。著書に『図解EV革命』(毎日新聞出版)など。

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