「困ったことがあったらその都度対応すればいい」地方移住に成功した人に共通する「ある特徴」
地方移住の最大のメリットは安い不動産だ。
賃貸なら庭付き一戸建てでも10万円以下で借りられる。
実家や祖父母の空き家に住むならば、家賃はゼロ円になる。
ただ、地縁のない土地で住居を確保するのは一筋縄ではいかない。
地方には空き家が多く社会問題化しているが、「知らない人には貸したくない」などの理由で移住希望者が空き家をなかなか借りられないのが実情だ。
福井県鯖江市で地域おこし協力隊として空き家対策を担当している根本楓さんは、「移住者は賃貸希望が8割、購入希望が2割。ところが空き家の所有者は賃貸希望が2割で、8割が売却希望。このギャップを埋めるのは難しい」と語る。
地方移住の希望者は安い賃貸でお試し移住したいところだが、空き家の所有者はできれば売却したいのだ。
また空き家に住むにはトイレなどの改修が必要なことが多く、賃貸ではその改修費用をどちらが負担するかも問題になる。
町が600万円で改修
こちらの記事で紹介した塚原さん夫婦が移住した高知県梼原町は、国や県の補助金を活用して改修費用の問題を解決している。
まず、梼原町が空き家の所有者から10年間無償で借りる契約をし、トイレ・風呂・キッチンなど水回りを中心に予算600万円ほどでリフォームする。
その資金は国(50%)・県(25%)・町(25%)の割合で補助金を活用している。
町は月家賃1万5000円で移住者に貸し出し、10年間で家賃総額180万円を受け取るので町の負担金はほとんどない。
また町が仲介することで移住者・所有者双方に安心感がある。
2013年に始まったこの制度で改修された空き家は50戸にもなり、総計203人(うち子供18歳未満、52人)の移住者が梼原町で暮らしている。
100万円で買い、DIY
思い切って空き家を購入する移住者もいる。
今年8月、長野県信濃町にコロナ移住したアーティストの観音クリエイションさん(35歳)は、100万円で手に入れた空き家を自らリフォームしている。
コロナ以前は埼玉県に住み、自分の好きな音楽を創り、写真を撮ってウェブ媒体等に寄稿していたが、コロナで家にこもる生活となり「都会にいる必要がなくなった」。
知り合いが信濃町で経営するゲストハウスを何度も訪れていた縁で、信濃町で空き家を探した。
見つけたのは、建物が古くトイレはくみ取り式だが、所有者の親族が定期的に管理していて比較的状態がいい一軒家で、周囲に畑もついている。
現金一括100万円で購入し、床を張り替えるなどのDIY(日曜大工)を楽しみながら住んでいる。
信濃町は長野県北部にあり、積雪2メートルになるほどの豪雪地帯だ。
これから初めての冬を経験することになるが、「困ったことが起こったら、その都度つぶしていく」とポジティブに考えている。
若い現役世代の移住事例に共通するのは、この「ローカル・ルールを受け入れる柔軟性」だ。
今までの「定年後の移住で味わった『地獄』」といった移住の苦労話には、「都会での慣習を持ち続けて、ローカル・ルールをなかなか受け入れられない」姿勢がある。
これからコロナ移住をする人たちが、ローカル・ルールをしなやかに受け入れながら、地方で働き暮らすメリットを享受していくことを期待する。
(藻谷ゆかり)
(本誌初出 地方移住の決め手は「家」 空き家を活用して安く住む=藻谷ゆかり 20201208)