週刊エコノミスト Online2020年の経営者

自転車の魅力をさらに引き上げる 下田佳史 あさひ社長

    Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)Photo 武市 公孝、大阪府大阪市の本社で
    Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)Photo 武市 公孝、大阪府大阪市の本社で

    自転車の魅力をさらに引き上げる

     Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

    ── 新型コロナウイルス禍で自転車が売れているとか。

    下田 3~5月の2021年2月期第1四半期は、緊急事態宣言で店舗の休業や営業時間の短縮を余儀なくされ、売上高は前年を下回る結果となりました。しかし、6~8月の売上高は前年同期比で40%前後増加と大きく上回り、21年2月期通期業績も今年10月時点で前期比10%増を見込んでいます。(2020年の経営者)

    ── 消費者の需要の変化があったのですか。

    下田 緊急事態宣言の解除後、公共交通機関の密を避ける有効な移動手段として自転車が注目されました、特に通勤と通学の用途で新たに購入する人が多かったことが大きな要因だと考えています。

    ── どのような自転車が売れていますか。

    下田 長い距離を楽に走れるスポーツ用の自転車、そして電動アシスト自転車に人気が出ています。コロナ禍の中で移動距離にも変化が生じています。これまでは短距離・短時間の移動だったものが、現在は家から職場まで、距離にして数キロ圏内の移動に自転車が求められる傾向にあります。

    ── スポーツ用と聞くと、少し特殊なイメージもありますが。

    下田 確かにこれまでは、一般用の自転車と、スポーツ用は用途が分かれていました。しかし、最近は若年層を中心に一般用からスポーツ用に乗り換える流れが生まれつつあります。私たちも21年2月期を最終年度とする5カ年の中期経営計画「ビジョン2020」の中で、「シフト・トゥー・スポーティー」をテーマに掲げてスポーツ車の普及に取り組んでいます。

    都市型店舗も実験中

    ── 店舗は郊外の大型店が多いようですね。

    下田 たくさんの自転車を眺めながら、選ぶ楽しさを提供していきたいという考えがあります。子どもから大人まで、ありとあらゆる自転車を展示するにはやはり規模が必要で、現在の店舗面積は約200坪(約660平方メートル)を基本としています。大都市圏などでは郊外だけではなく、都市型の店舗を作っていこうと考えています。

    ── 都市型はどんな店舗にする考えですか。

    下田 今年から上落合や高田馬場(いずれも東京都新宿区)などに都市型店舗を作り、実証実験を始めています。郊外店の4分の1程度の広さしかありませんが、修理・点検などアフターサービスを充実させるほか、インターネット販売の商品を受け取る拠点としたいと思っています。

    ── PB(プライベートブランド)商品にも力を入れています。

    下田 取り扱い製品の半分がPBで、通常のOEM(委託製造)とは違い、商品企画から開発、製造まですべて自分たちで手掛けています。通常の自転車だけでなく、災害時やアウトドアでも使えるリヤカー付きの自転車、車いすなども取りそろえています。

     最近は「E-バイク」という、スポーツ用に電動アシストを取り入れた製品も展開しました。スポーツ車に合う電動ユニットを独自開発し、従来のようなこぎ出しの軽さではなく、スピードの持続性を重視し、通勤などの用途に使いやすくしているのが特徴です。

    ── 17年から、出張修理サービスを再開しました。

    下田 先代社長の下田進が、まだ街の自転車屋だったころから行っていたサービスです。しばらく休止していたのですが、20年ぶりに復活させることにしました。個人店の廃業も進む中、これからは顧客との関係性をより太くしていくことが重要になると考えているからです。また、その一環としてスマートフォンアプリを開発し、自転車の定期点検やセール情報の提供も始めています。

    ── 自転車の利用者が増えると、事故にも気を付けなければいけませんね。

    下田 全国の店舗で定期的に、安全な乗り方などの教室を開催しています。ただ、参加が難しい方もいるので、今後は動画で、メンテナンスの手順やマナー講習など、困ったときにいつでも必要な情報にアクセスできるような仕組みを作っていく予定です。

    ── 今後の展開は?

    下田 コロナ禍で多くの人に自転車の魅力、利便性に気付いてもらえました。これを一過性のものにしないために、どうやってその魅力をより向上させていくかを考えなければなりません。コロナ禍の前から取り組んでいるのは、旅行会社とタイアップして始めた、ガイドと一緒に自転車で観光地を回るサイクルツーリズム。必要なものはこちらで用意し、手ぶらで来ても大丈夫なツアーです。

     例えば、京都市中心部を見て回るのも楽しいですが、宇治や伏見など周辺にもすばらしい場所がたくさんあります。そうした観光地を回るのに、自転車はとてもいい手段。こうした取り組みを、自転車の魅力向上策としてもっとPRしていきたいですね。

    (構成=白鳥達哉・編集部)

    横顔

    Q 30代の頃はどんな仕事をしていましたか

    A PB商品の企画開発、生産管理、物流関係の基礎を担当しており、海外を飛び回っていました。あっという間の30代でした。

    Q 「好きな本」は

    A パナソニックの本社がある大阪府門真市の出身で、創業者の松下幸之助さんの書籍は参考にしました。

    Q 休日の過ごし方

    A 最近はゆっくりすることが多いです。たまに、会社の人たちと長距離サイクリングに行きます。


     ■人物略歴

    下田佳史(しもだ・よしふみ)

     1971年大阪府生まれ。94年近畿大学法学部卒業。同年あさひ入社。商品部長、取締役商品本部長兼商品部長、専務取締役商品本部長などを経て、12年5月から現職。49歳。


    事業内容:自転車及び関連商品の販売、各種整備及び修理などの付帯サービスの提供、卸事業

    本社所在地:大阪市

    設立:1975年5月

    資本金:20億6135万円

    従業員数:1595人(2020年8月現在)

    業績(20年2月期、単体)

     売上高:598億5268万円

     営業利益:40億614万円

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