「リモートワークで会社の機材が使えない」新タイトルの開発が停滞?2021年ゲーム業界の展望を占う
緊急事態宣言やリモート出勤などで巣ごもり需要が高まり、2020年のゲーム市場は比較的好調だった。
任天堂の「あつまれ どうぶつの森」(あつ森)がコロナ禍まっただ中のタイミングで発売され、大ヒットを記録したのも巣ごもり需要によるものだ。
同時にゲームプレー動画配信の需要も高まり、ゲーム関連の動画配信に力を入れているTwitchでは、コロナ禍以前の40%増の視聴者、視聴時間を獲得した。
11月には、次世代ゲーム機として、ソニーの「プレイステーション5」(PS5)とマイクロソフトの「Xbox(エックスボックス)シリーズX/S」が相次いで発売された。
久々の次世代機の登場にゲーム業界は沸いており、21年以降もゲーム市場の活況は続くと期待されている。
ハード・ソフトの「品薄」
ただ、もろ手を上げて喜んでいられない状況もある。
あつ森のヒットでは、「ニンテンドースイッチ」の需要も高まったが、新型コロナウイルスの影響で予定通りの生産数が見込めず、品薄状態が続いた。
プレイステーション5においても争奪戦が繰り広げられており、品薄から抽選販売とする販売店がほとんどだ。
たとえば、ヨドバシカメラの抽選販売を見ても、抽選倍率は50倍以上とかなりの狭き門となっている。
また、ゲームタイトルの開発現場もリモートワーク対応によって会社にある開発用機材が使えず、開発が滞っていることも多いという。
実際に例年よりも新作タイトルのリリース頻度は落ちており、次世代機についても、今後の半年間に発売が予定されているゲームタイトルが非常に少なく、今後も鈍いままの可能性が高い。
しかし、ニンテンドースイッチは、気軽に購入できる状態にはほど遠いものの、ある程度、品薄状態も緩和されており、今後の発売タイトル、売れ筋となる注目タイトルの数が比較的多い。
次世代機の供給がしばらく安定しそうもないことを考えれば、最低でも21年の上半期までは、据え置きゲーム機の市場をけん引するのは、ニンテンドースイッチになるだろう。
一方で、より活況が予想されるのが、スマホゲームを主体とするモバイル市場だ。
ここ数年、右肩上がりの市場で、今後も堅調に推移すると見られる。
ヒットタイトルの多くも、定期的なアップデートで継続して課金する状況を作っており、ゲーム寿命も長期化している。
寿命の長期化はパブリッシャーにとっては定期収益をもたらし、ユーザーとしても一定のクオリティーを保ったゲームをプレーできる安定感を得られる。
新陳代謝が起きにくい状況とも言えるが、この安定性がモバイルゲーム市場を支える礎となり、しばらくゲーム市場の中心となる見込みだ。
(岡安学・デジタルライター)
(本誌初出 注目業界展望 2年目の自粛生活 ゲーム 「スマホ」と「スイッチ」が主役に=岡安学 20201222)