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藤野英人・レオス・キャピタルワークス社長が「株価は一度暴落する」と語る理由

レオス・キャピタルワークス提供
レオス・キャピタルワークス提供

今年の相場をどう見るのか。運用に定評のあるアクティブ投信に聞いた。

(聞き手=稲留正英/岡田英/加藤結花・編集部)

2020年は08年のリーマン・ショックに次いで記憶に残る年だった。新型コロナという予想もしなかった事象が起き、投資家としても影響を受けた。

だが、結果的に、当社のファンドは、日経平均やTOPIXに対して、大きな上昇を示すことができた。

二つ要因がある。一つ目は、コロナの感染拡大で暴落する前の昨年2月に、資産を現金化し、大底で買い戻すことができたことだ。

二つ目は、コロナで誘発された社会事象が、当社の投資先企業にプラスに働いたことだ。

我々は、コミュニケーションが非常に良くて、顧客、社員、環境との関係をバランスよく考え、根性論ではない科学的な会社が好きだ。

コロナが社会変革の針を一気に進めたことで、そうした会社の業績や株価が伸びた。

上位保有先で一例をあげると、「ヤフー」のZホールディングスだ。

同社の川辺健太郎社長とは個人的にも親しいが、彼は5年前に千葉県の南房総に引っ越した。普段は在宅ワークで、土日になると銃を持って、近くでカモやイノシシを仕留めている。

コロナが来る前から、分散型の働き方を社長自らが実践していた。だから、コロナで社員全員が在宅ワークになっても、業務は全く停滞せず、株価も大きく上昇した。

「通貨暴落」で株高に

一昔前のIT企業の経営者は、都会に住み、高級車を乗り回している人が多かった。

強い経営者像が、時代の変化とともに変わっており、自然との共生とか、社員との距離感を適切にとる企業群が非常に伸びている。

菅政権については、当初の期待ほど指導力を発揮していないので、失望している。

それでも、昨年、株価が大きく上昇したのは、通貨が暴落したからだ。円もドルもユーロも、経済を支えるため、貨幣を大増刷した。

通貨の暴落をインフレというが、我々が欲しいデジタル情報は無限に再生産できるので、なかなかインフレになりにくい。あふれたお金は、相対的に希少性のある株式に向かった。

その証拠の一つに、発掘量が有限なビットコインの高騰がある。これも、ビットコインが上がっているのではなく、通貨に対する信頼が落ちていることが大きい。

これは、第二次世界大戦のときに、戦時国債を大量発行した日本で、株価が急騰したことによく似ている。当時はモノ不足でものすごいインフレが起きたが、株価も上昇した。

今年の株式市場は一回、大きく調整するとみている。1月から3月の間に日米欧で感染が爆発するが、気温の上昇とワクチンの接種拡大によりどこかでピークアウトし金融緩和期待が減る。

それをきっかけに、マーケット関係者が株式市場からお金を引き揚げるだろう。暴落に備えて、現金比率を3割くらいに引き上げたほうがよい。

ただ、現金が一番価値を落としているから、株式は7割保有したい。

調整幅が3割なのか、もっとかは分からないが、GAFAMのような今後も成長していく企業には引き続き、お金は流れていく。

(本誌初出 藤野英人 レオス・キャピタルワークス社長 「株式相場の大きな調整に備えよ」 20210209)

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