橋本聖子・男女共同参画相が今だからこそ語る「女性活躍が進まない理由」
コロナ禍で女性への影響が深刻化している。
雇用環境の悪化や自殺者が増える現状を、橋本聖子男女共同参画相に聞いた。
(聞き手=斎藤信世・編集部)
── コロナ禍で女性を中心に雇用環境が悪化している。
■2020年4月の女性就業者数は前月比で約70万人減少し、これは男性と比べて大きい減少幅だ。
また就業者についても、パートとして働く人の中にはシフトが大幅に減少した人もいる。非正規雇用労働者には女性が多く、コロナ禍で多大な影響を受けている飲食業や宿泊・サービス業で働く女性が多いことなどが、男性より影響を受けている要因だと考える。
── 政府は具体的にどのように支援していくのか。
■20年9月からは「コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会」を開催し、各分野の専門家が、就業面や生活面、さまざまな観点から議論している。
昨年11月には、柔軟な働き方の推進など八つの項目から成る緊急提言をとりまとめた。提言は同12月に閣議決定した経済対策に反映され、今回の第3次補正予算に盛り込まれた。
コロナ前から問題はたくさんあったが、それが今回顕在化した。
最近は非正規雇用労働者への影響と生活困窮者、ドメスティックバイオレンス(DV)や虐待など、一つの屋根の下にさまざまな問題が混在している。その問題には縦割りではなく、包括的な支援が必要だと強く感じている。
── なぜ女性活躍が進まないのか。
■世界経済フォーラムの「ジェンダーギャップ(社会的性差)指数」で、日本は不本意な121位。これは政治分野の遅れが順位を下げている。
まずは政治家が自助努力をしていかないといけない。
昨年末に閣議決定した第5次男女共同参画基本計画では、国会議員の候補者に占める女性の割合を、まずはこの5年間は、35%まで引き上げることを、政府が政党に働きかける際に念頭に置く努力目標として明記した。
女性が政治分野に参画する上で、一番難しいのは家庭との両立。
加えて、男性だらけで女性の視点からは、あまりクリーンに見られていない部分もある。そこを、そうではないんだということを現役の女性議員が地方議会と連携してPRしていかないといけない。
個人的な見解だが、いずれは、政治家の一定割合を女性に割り当てる「クオータ制」の導入なども視野に、議論することも必要。
── 第5次男女共同参画基本計画にはどのような思いを込めたか。
■世界121位という残念な状況から脱しなければいけない。第4次計画の時から全力でやってきたが、世界は日本よりはるかにスピードアップしている。
また、特に、若い女性の声をできる限り反映する努力をした。
今回はパブリックコメントを第4次計画の時の約1.6倍の5638件いただいた。若い女性の団体の方々からも提言をいただいたが、非常に前向きな考え方を持っていた。
自分たちの手で自分たちの将来を作ることができるんだという実感を持ってもらいたいと思った。
日本だからこその東京五輪
── 選択的夫婦別姓制度についてはどう考えるか
■第5次計画策定にあたり、特に思い入れがあった部分だ。
今は少子化で一人っ子同士の結婚も増えてきているので、それぞれの姓を守りたいという声がある。
そこには素晴らしい家族愛がある。次世代への配慮と、「誰一人取り残さない」という思いを込めた。
── 東京大会は開催できるか。
■本当に開催できるのとよく言われる。東京オリンピック・パラリンピックを開催すべきかというアンケート調査でも、「すべき」という意見が十数%となっている。
しかし、新型コロナウイルス感染症の感染拡大前までは多くの方が東京大会を楽しみにしていたわけなので、決して開催してほしくないとは思っていない。
ただ、コロナ禍において、世界の選手が来日できるのか、逼迫(ひっぱく)した医療現場体制をどう考えるのか、ということもあり、開催に賛同する意見が少なくなっている。
しかし、こういう問題(新型コロナ)は想定内として考えなければいけない。医学的・科学的な知見を結集して、日本だからこそ大会が開催できるということを世界に発信したい。
オリンピック・パラリンピックはスポーツの祭典といわれているが、その舞台を作るのは文化力や経済力。その国の力がなければ大きな大会を開催することはできないので、スポーツの枠を超えた経済力や文化力の闘いに位置づけていくことが重要なところだ。
(本誌初出 橋本聖子・男女共同参画相が今だからこそ語る「女性活躍が進まない理由」 20210223)
■人物略歴
橋本聖子 はしもと・せいこ
1964年生まれ、北海道出身。2019年9月に東京オリンピック・パラリンピック競技大会担当相、内閣府特命担当相(男女共同参画)、女性活躍担当相に就任。