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経済・企業 日本車があぶない!

世界で存在感を増している「韓国製EV」に日本車が遅れをとっているワケ

2021 Hyundai Kona Electric
2021 Hyundai Kona Electric

EVメーカーで注目を集めているのはテスラ、ワークホース、NIO、小鵬などの米・中新興ベンチャー群だ。

だが、既存のガソリン車大手メーカーも反撃を開始している。

アメリカではGMがテスラに対抗すべく、複数の新車EVの発売を予定している。

ヨーロッパでは、ルノー、VW、アウディ、BMW等がEVの売り上げを伸ばしている。

そんな中、これまでノーマークだった韓国勢が、いつの間にか世界市場で存在感を増している。

韓国勢が日産「リーフ」を抜いた!

台頭する韓国勢の筆頭は現代自動車(Hyundai Motor)だ。

2021年1月上旬にはアップルとEVの製造委託に関する話し合いを行っているとの報道が流れ、株価が一時20%近く上昇するという出来事もあった。

その1カ月後、2月3日には、アップルが起亜(Kia、現代自動車傘下)に36億ドル(1ドル=104円として約3750億円)を投資すると報じられ、起亜の株価も一時14.5%も急騰している。

どちらも真偽のほどは確認されていない報道だが、アップルとの提携が噂されたこの2社には共通点がある。

どちらも世界のEV市場で大躍進し、注目されているのだ。

「事件」が起こったのは2020年4月のことだ。世界の電動車(EV+PHV)の月間販売台数で、ダントツ1位は引き続きテスラ「モデル3」だったが、現代の「コナEV(Kona EV)」が6位に躍進したのに対し、日産「リーフ」は10位に落ちたのだ。

「コナEV」は2018年発売の5ドアSUVで、バッテリー容量は39.2kWhと64 kWhの2種類が用意されている。

64kWhバッテリー装備車の航続距離はEPA基準で415km。アメリカでの価格は$38,575(約401万円)から。

日産「リーフ」は初めて韓国勢に抜かれたわけだったが、この時、すぐ後の12位には起亜の「ニロEV(Niro EV)」も迫っていた。

こちらも同じSUVで、発売は2018年。サイズ的には「コナEV」よりホイールベースで100ミリ長いが、バッテリーは同じく39.2kWh、64kWhの2種類。

64kWhタイプの航続距離はEPA基準で382km。アメリカでの価格は40,210ドル(約418万円)から。

この2種類の韓国製EVは欧米市場でも高い評価を得ている。

2020年通期の電動車ランキングは執筆時点でまだ出ていないが、現代「コナEV」が5位、日産「リーフ」が6位というところではないかと推測される。

起亜「ニロEV」もおそらく三菱「アウトランダーPHV」を上回りそうだ。

危機感の感じられない日本勢

韓国勢が躍進する一方、世界で初めての本格的量産EV「リーフ」を世に出した日産の「後退」は、日本人にとって実に残念な出来事だ。

日産については、コロナ禍で経営悪化も報じられている。

一方、日産の良いニュースとしては、新EV「アリア」が2021年夏にデビュー予定ということがあげられる。

「アリア」の搭載バッテリーは65kWhと90kWhの2タイプで、航続距離600km超のモデルも登場するという。

テスラや中国車などのトップランナーとの比較では数年遅れているものの、日本メーカーから600kmクラスのEVが発売されるのは大変心強く感じる。

トヨタについては、HVへの過度の依存とFCVへの過度の期待を、筆者はこれまで繰り返し指摘している。

トヨタはPHVも出しているが、「プリウスPHV」は最近売れゆきがかんばしくない。2020年2月時点ではなんとかトップ15位に入っていたが、その後も順位を下げ、2020年通期ではトップ20位にも入らないのではと予想している。

電動化でトヨタ以上に後れていると危惧したホンダは、初の量産EV「ホンダ e」を2020年10月30日に発売している。

筆者は、この車にはコンセプトカーの段階から注目していたので、別途コメントしたい。

「ガソリン車廃止時点でEV5%」日本車は本当に生き残れるのか?

世界で急激に進むEV化の波に、トヨタ、日産、ホンダはそろって乗り損ねていると筆者は危惧しているが、それ以上に心配なのは他の日本車メーカーだ。

その1社であるマツダから、2021年1月28日にようやく初のEV「MX-30 EV」が発売された。

「MX-30」はマツダのコンパクトSUVで、2020年9月にヨーロッパ向けにEVモデルを発売し、これまで1万台超を販売したそうだ。

日本向けには10月にHVモデルを先行発売し、今年になって、EVモデルを追加している。

試乗した人の感想を聞くと、「ガソリン車から乗り換えても違和感がない」「街中をキビキビと走る」などと評判は良く、その点では「さすがマツダ」と言えそうだ。

だが、スペック的には「残念」と言わざるを得ないレベルだ。

一番残念なのは、35.5kWhという電池サイズで、航続距離もEPA基準では推定230km程度しかない(マツダ発表ではWLTCモードで256km)。

同じSUV同士で比較しても、現代「コナEV」の64 kWh、415kmと比較すると見劣り感は否めず、事実、ヨーロッパでの月間販売台数でも2倍以上の差をつけられている。

この電池サイズ、航続距離で451万円という価格も割高感がある。

メーカー側は「試行錯誤の段階」と考えているようだが、先行メーカーと比較すると少なくとも10年は遅れている。遅れを取り戻すには相当な努力が必要になってきていると筆者は懸念している。

マツダはこれまで、2030年の全生産車に占めるEV比率について、5%という目標を設定していた。筆者の感覚では、あり得ないと感じるほど低い数字だ。

今年2月になってマツダは「目標を引き上げる」と発表したのだが、新しい数値目標はまだ公表されていない。

2030年には、複数の国でガソリン車の新車販売が禁止される見込みだ。

日本でも、東京都が同様の計画を発表している。その時点で「EV比率5%」というマツダが、自動車メーカーとして生き残れるだろうか。

2008年にテスラが「ロードスター」を発売した時、優秀なスタッフを抱える日本車メーカーなら、こうなることはある程度予想できたはずだ。

この「12年の遅れ」が、日本車メーカーの致命傷にならないことを望んでやまない。

村沢義久(むらさわ・よしひさ)

1948年徳島県生まれ。東京大学工学部卒業、同大学院工学系研究科修了。スタンフォード大学経営大学院でMBAを取得後、米コンサルタント大手、べイン・アンド・カンパニーに入社。その後、ゴールドマン・サックス証券バイス・プレジデント(M&A担当)、東京大学特任教授、立命館大学大学院客員教授などを歴任。著書に『図解EV革命』(毎日新聞出版)など。

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