ダウ3万8000ドルの声も 「買い参戦」する日本の個人=市川明代/白鳥達哉
<最強の米国株&経済>
バイデン新政権誕生後も、米国の株価上昇はとどまるところを知らない。2020年11月に史上初めて3万ドルの大台に乗ったNYダウ工業株30種平均株価は、1月に3万1000ドルを突破し、最高値を更新し続けている(図1)。(最強の米国)
「世界の時価総額ランキングのトップ10を占めるのは、ほとんど米国株だ。成長しそうな銘柄を教えてくれないか」──。ある中堅証券会社では、長期にわたり日本株を保有してきた投資家から、米国株投資に関する相談を受けるケースが増えている。「米国株は、アップルやマイクロソフトのような超大型株でも上昇率が高く、短期間で20%程度の利益が出る。老後の資産形成に役立つ」。昨年、米国株を購入し始めたという東京都内在住の50代の女性会社幹部は言う。
世界の株式時価総額ランキング上位10社のうち米国企業は6社。上位100社で見ても、米国企業は57社を占める(21年1月末現在)。IT大手グーグルなどのGAFAMをはじめ、右肩上がりで成長し続ける有力企業の多さが、世界の投資家を引きつける。米国株は昨年、外国人投資家による資金流入が368兆ドルに上り、世界市場で圧倒的な強さを見せつけた。
強さの秘密は何か。海外の株式投資に詳しいびとうフィナンシャルサービスの尾藤峰男氏は、「国際的な競争力やシェアはもちろん、業績が低迷しても、復活する強い『再生力』にある」と分析する。例えば、時価総額トップのアップル。創業者のスティーブ・ジョブズが一時経営から退くと、96年には1株4ドルまで下落、倒産の危機もささやかれたが、iPod、iPhoneを生み出した。その後の快進撃は説明するまでもない。
米国株は今後どこまで上がるのか。投資会社のレオス・キャピタルワークスの三宅一弘・経済調査室長は企業業績の一段の上振れを背景に、年内の高値を3万8000ドルと予想。野村アセットマネジメントのシニア・インベストメント・オフィサー、中山貴裕氏は3万6000ドルとする。
ただ、バイデン大統領は、格差是正を目的に、法人税の引き上げやキャピタルゲイン増税に踏み切る方針だ。影響はないのか。尾藤氏は、民主党のクリントン、オバマ両政権下でも株価は上がったとして「政権交代による短期的な影響に目を向けると、米企業の長期的なダイナミズムを見落とすことになる」と指摘する。
取引口座数は5倍に
過熱相場の背景には、金融緩和による通貨供給量の増大と、外出制限下の家計貯蓄率の上昇がある。20年の米国の株取引高のうち個人投資家の占める割合は19・5%で、10年前の2倍だった(図2)。
若者を中心に、手数料無料で1株から買えるインターネット証券の利用者が増えていることも後押しする。日本でも、ネット証券各社が米国株の最低取引手数料を撤廃したことや、少額投資非課税制度(NISA)の口座開設者の増加などからブームに火が付いた。
米国株の取り扱いを得意とするマネックス証券の21年3月期第3四半期決算資料によると、1年以内の口座開設者は30代が最も多く3割を占め、米国株の約定件数・取引口座数は前年同期比で5倍以上に増加した。楽天証券も米国株の約定件数が11倍に伸びている。
証券各社は「株価の調整局面がやってきても、長い目で見れば最高の買い場になる」と口をそろえる。過熱は当面続きそうだ。
(市川明代・編集部)
(白鳥達哉・編集部)