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国際・政治最強の米国株&経済

バイデン政権も「汚職のデパート」か ブッシュ、オバマら歴代の金権政治に怒る庶民の反撃が始まった

ロビンフッド事件は、新政権と金融・IT業界との根深い癒着体質を浮き彫りにした(バイデン大統領と話すイエレン財務長官〈右〉)(Bloomberg)
ロビンフッド事件は、新政権と金融・IT業界との根深い癒着体質を浮き彫りにした(バイデン大統領と話すイエレン財務長官〈右〉)(Bloomberg)

イエレン氏、大手証券から8000万円 大手金融・ITとの癒着、次々と露見

日本の「5ちゃんねる」(旧「2ちゃんねる」)に似た掲示板サイト「レディット」に結集した800万人といわれる小口投資家らが、オンライン証券ロビンフッドを通じ、大手ヘッジファンドの特定銘柄に対する「空売り」攻勢に対抗、わがもの顔で振る舞ってきたヘッジファンドを降参させた。

未曽有の「事件」は米証券市場に激震をもたらした。

かつてウォール街を占拠したオキュパイ運動の再来と見る人もいれば、ティーパーティー運動にたとえる人もいる。

SNSを通じて結集し、株式市場に乱入して大混乱を引き起こした有り様は、1月6日に起きたトランプ支持者らの連邦議会襲撃事件も思わせた。

ネット情報に踊らされるところは荒唐無稽(むけい)な陰謀説を唱えるQアノン的でもある。

レディットのフォーラム「ウォールストリート・ベッツ」に集まった小口投資家が狙ったひとつはビデオゲームソフト店チェーン「ゲームストップ」株だ。

ゲームソフトのオンライン化で経営難のところにヘッジファンドの「空売り」で株価が下がりっぱなしだったが、小口投資家の大量買いが入り株価は暴騰。一時1700%の上昇を記録した。

フォーラムでは、「子ども時代にお世話になったゲームストップを金持ち悪徳ヘッジファンドから救え」というロビンフッド的物語が展開された。

新型コロナ禍で失業した若者が、経済刺激策の現金直接給付をゲームストップ株投機に懸けて息をついた、住宅ローンや学費ローンをなんとか返せた、といった庶民の声がフォーラムにあふれた。

「空売り」を仕掛けた大手ヘッジファンドが数十億ドルの損失を出し撤退すると、「親の敵を討った」という凱歌(がいか)も上がった。

2008年のリーマン・ショックに端を発した金融危機では当時のブッシュ、オバマ両政権の政策は巨大金融機関や大企業救済ばかりに向けられ、失業した庶民はローン破産で次々と家を失った。

「すべてを失った人たちが、いま反撃している」という声も出た。

米国の格差の変遷(World Inequality Database)
米国の格差の変遷(World Inequality Database)

こうした事態は金持ちエリートに対する庶民の蜂起という図式で読み解かれた。

コロナ禍の昨年7~9月期、米国のミレニアル世代(1981~96年生まれ)のクレジットカード借金は平均4300ドルに達し、連邦政府の学生ローンの返済不能者は2200万人に及んだ。

彼らの親の代はリーマン不況で、自身はいまコロナ禍で経済苦境に置かれている。

「金持ちからむしり取れ」

その一方で、グーグル、アマゾンなど巨大IT企業4社(GAFA)の20年の純利益は、逆にコロナ禍が幸いし史上最高となり前年比16%増、日本円で合計16兆円にも及ぶ。

こうした中で「金持ちからむしり取れ」という思いが募るのも当然かもしれない。

それを合法的に可能にしたのが、レディットとロビンフッドであった。この事件が株式市場におけるポピュリズムの反乱として受け止められたゆえんだ。

それに輪をかけたのは、就任したばかりのイエレン財務長官(前FRB議長)の金融業界との癒着をうかがわせる講演料の露見だ。

この2年間に金融機関などでの講演50回で日本円で7億円以上稼ぎ、1回3000万円を超える講演もあった。

FRB議長時代の年俸は約2000万円である。米政界では講演料や講演旅行というのは賄賂のグレーゾーンだ。

7億円のうちの8000万円は、大手シタデル証券から講演料として受け取っていた。

シタデルは今回の事件で、ロビンフッド側の株ブローカー役になっただけでなく、大衆投資家らが戦いを挑んだ「空売り」ヘッジファンド側にも資金を提供した。二股をかけて大もうけしたようにもみえる。

巨額の講演料を受け取ったのはイエレン氏の政権入り前だから直接の賄賂性はないが、利益相反問題は起きる。

というのも、今回の未曽有の大衆投機事件については、株価操作問題などを含めて財務省も調査に入っているからだ。

シタデルも調査対象だ。過去2年間にシタデルから巨額報酬を受けていたイエレン氏には調査で公平な判断ができない恐れがある。

少なくとも事件調査に関わることを自ら「忌避」すべきだ。

ブラックロックが権勢

この問題について問われたホワイトハウスのサキ報道官の答えは「8000万円の講演料で何が悪いの」。

庶民の怒りをかった。

問題は、そのサキ氏も含めバイデン政権が持つ「金権体質」である。民主党内左派からはその体質に厳しい批判が出ている。

民主党主流派の金権体質は90年代のクリントン政権に始まり、オバマ、バイデン政権へと継承された。

米国の貧富の格差を悪化させたのは、00年代はブッシュ政権でもトランプ政権でもなく、むしろオバマ政権だ。

表向きのイメージとは違う大企業・富裕層べったりの金権体質の影響である。

クリントン、オバマ政権の経済閣僚・高官は大手投資銀行ゴールドマン・サックスの出張所といわれた。

同銀行元会長でクリントン政権の財務長官を務めたロバート・ルービン氏の人脈が両政権の経済政策を左右した。

バイデン政権はその人脈を引き継ぐ一方、現在は同銀行以上の権勢を振るう世界最大の資産運用会社ブラックロックが取り仕切っているといわれる。

運用資産総額は日本のGDPをはるかに上回る7兆ドルだ。実際、政権の要所にブラックロック人脈が入り監視している(表)。

さらに問題にされたのは、ブリンケン国務長官、オースティン国防長官、サキ報道官らが政権発足前に所属していた戦略コンサル企業ウェストエグゼク・アドバイザーズ社とその関連企業だ。

IT、軍事産業と政官界を結び、巨額の顧問料を稼いできた。

戦略コンサル企業は法で規制されるべきロビー活動を無届けで行うのに等しいと、論議の的だ。

初の女性副大統領と持ち上げられるカマラ・ハリス氏も、カリフォルニア州司法長官時代から巨大IT、新興IT各企業からの潤沢な資金で対立候補を圧倒して選挙を勝ち続ける一方、IT企業の諸問題を放置する姿勢が批判されてきた。

バイデン政権発足直後に起きた小口投資家の反乱蜂起事件は、金融・IT巨大企業と癒着するバイデン政権の金権体質に対する庶民の最初の大規模な抗議にもみえる。

(会田弘継・関西大学客員教授)

(本誌初出 バイデン政権、腐敗の構図 イエレン氏、大手証券から8000万円=会田弘継 20210309)

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