中国のBYDが日本の路線バスのEV化に注力するワケ
電気自動車の世界的大手である中国BYDが日本での電気バス事業を強化する。2030年までに日本で4000台を展開する計画だ。BYDジャパンの花田晋作副社長に同社の戦略などを聞いた。(聞き手=稲留正英・編集部)
-- BYDの日本での実績は。
■2015年から日本で事業展開し、現在、国内のバス会社と自治体17社に対し53台の電動バスを納入している。2月には京阪バスと提携し、4台の電気バスを京都市内の商業路線に投入する予定だ。年内には、納入台数は延べ100台ほどになりそうだ。
-- BYD製のバスの強みは。
■まず、量産型であり、大量に作っているため、材料や製造コストが安く、価格競争力があること。また、10年前の2010年に中国で電気バスの製造を開始して以来、延べ7万台を販売しており、そこで蓄積した改善や運用のノウハウが他社より優れている。車台も電池も内製しているので、バスに何か問題が起きても、当社単独で解決でき、素早く路線に復帰できる。
-- 価格はどれくらいなのか。
■今回、京阪バスに提供する「J6]という全長7㍍の小型モデルは1950万円。もう一つ大型の「K8」は3850万円だ。それに対し、日本製だとそれぞれ1億円ほどかかるはずだ。
深圳市で1万6500台の電動バス、9割がBYD製
-- BYDは日本では電池メーカーのイメージが強い。
■日本以外の世界では、BYDイコール電気自動車として知られている。昨年は世界市場で米テスラ車とデットヒートを演じた。多分、日本が一番知られていない。
-- 電池メーカーとしての戦略は。
■当社は、各国でまずはBtoCの公共交通分野で参入し、その後、BtoC市場に移行する事業戦略を取っている。当社は、車両の実装に適しているのはリン酸鉄電池という見方をしている。ほかの電池よりも耐久性で優れているためだ。公共交通では電池も含め非常に過酷な使われ方をする。例えば、中国・深圳市の電気バスは一日300㌔以上を何年間も走る。日本のバスなら150㌔程度だ。その過酷な使用条件に耐えられるまで当社はリン酸鉄電池の改善と仕様の向上を進めている。今後、薄型の新型電池をどんどん投入する。これを使うと、電気バスの床の段差がなくなり、快適な室内空間を提供できる。
-- 中国での事業展開は。
■深圳市では1万6500台のバスが全て電動化され、そのうち95%が当社製だ。2万2000台のタクシーも全て電動化された。その結果、深圳の空はびっくりするくらいの青空となった。この台数が一気に電動化されると、すごく空気がきれいになる。北京や上海も同様だ。いかに公共交通機関がCO2の排出に影響があるかが明らかになった。日本でも主要都市で、公共交通の電動化に寄与したいと考えている。
(終わり)